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第三話 奇妙な遺跡3

 砂地に書いた魔法陣は、風に悪戯されるように書いたそばから消えていった。


「やっぱり、ダメみたいだ」


 棒切れを持って腕組みしていたリロウは降参するようにそれを投げ出した。


「仕方がない、探索しよう」

「探索? こんなところで?」

「魔法陣が書けるところがどこかにあるか探してみよう」


 リロウがさっさと歩き出してしまうので、仕方なくレリアも従った。レリアはリロウの浅葱色のマントをつかみながら恐る恐る後をついていく。

 浅葱色のマントは上級科、レリアの臙脂色のマントは中級科のものだ。本当なら、もう浅葱色のマントを身につけていたはずなのに。


「何の遺跡だろう……」


 あたりに積まれた石は相当な年月が経っているようで、すっかり風化しているようだった。手に触れるとぽろぽろと崩れ、あっという間に風にさらわれていった。


「ねえ、やっぱり歩き回るなんて危険じゃない?」

「じっとしていても変わらないよ」


 反論することはできず、レリアはリロウのマントをさらに握りしめる。


「レリ、あれを見て」


 顔を上げるとレリアは息をのんだ。

 リロウが指をさした先には、赤く燃えるような影があった。大きな焚き火のようでもあり、山が燃えているようでもあった。蜃気楼のようにゆらめく赤い影は、記憶の中まで忍び寄ってくるかのような不気味な存在だった。

 レリアは焦燥のような不安を覚える。

 まるで、この世のものではないみたいだった。


「ドラゴンの遺跡」


 リロウのつぶやきにレリアははっとした。


「そうだよ。ここってもしかして、ドラゴンの遺跡なんじゃないかな?」

「何言ってるの? そんなわけ……」

「どうしてさ? こんな場所、僕たちの知ってる世界じゃないよ。それにあの燃える山……ドラゴンの都がなぜ滅びたのか謎だったけど、もしかするとあの炎のせいで……」

「外の国には、私たちの知らないものがたくさんあるかもしれないんでしょ?」


 レリアは遮るように言った。


「それは、そうだけど」

「それに、おとぎ話を信じたとしても、ドラゴンの都は私たちの国にあったんじゃないの? でも、あんな恐ろしい山はルオンにはないし、ここは別の国、もしかしたら、もっと他の大陸なのかも」

「他の大陸? こんな大きな大陸が他にもあるって?」


 炎の山を見つめていたリロウは、新しい興味を覚えたように目を丸くした。


「だって、海ってすごく広いんでしょ?」


 レリアはしどろもどろになって言った。


「海を渡った?」


 リロウはひとりごとのように言って、笑った。


「それならもっと面白いや! よし、もっとよく探索しよう」

「リロウ!」


 リロウは意気揚々と歩き出した。レリアの非難など耳にも入っていない様子だ。

 レリアは文句を言いながら足早にリロウを追った。こんなところに残されたらたまったものではない。

 ところが、それからどれだけ歩き回ってみても崩れた石の塔と灰色の木々以外には何もなかった。生き物もなく、まるで死者の町だ。

 本当にここはこの世の世界なのだろうか?

 レリアは身を震わせた。そして、不穏な考えを振り払うように頭をふった。


 さすがに歩き疲れて口数も減ってきたころ、石の塔が不思議な形に置かれた場所を発見した。

 不恰好な円形の石がレリアの胸元ぐらいの高さに積まれている。それが、円を描くように六つ並べられ、中央には大きな平たい石。その上にもう一本、石の塔が築かれている。その塔だけはレリアの頭の高さまであった。

 リロウは汗を拭いながらそれらを丹念に見て回った。レリアは疲れはてて中央の石畳の上に腰を下ろした。

 すると、いつの間にか寝入っていたシーが目を覚ました。

 ぴんっとしっぽを立て、レリアの両肩や頭を行ったり来たりしながらあたりをうかがう様子は、まるで何かに警戒しているようだ。

 レリアは不安に思い、同じように周囲を見回した。しかし、自分たちの他には動くものすらない。


 ふと空を見上げると、薄いベールのような雲が空を覆い、光が揺らめいている。

 そういえば、太陽がない。

 空は一面雲が広がっている。しかし、奇妙に明るい。太陽のかわりに、地平線からのぞく炎の山が夕日のように輝いていた。

 レリアは嫌な感じを覚え、目を伏せる。

 石の上に視線を落とすと、そこに文字のようなものが削られていることに気がついた。

 砂を払ってよく見ると、それはリロウが書いた魔法陣の文字によく似ているようだった。

 レリアは恐怖を感じて立ち上がった。

 その勢いに驚いたようにリロウが顔をあげる。


「どうかした?」

「この文字……」


 リロウはのぞきこみ、目を見開いた。


「これは、古文字だ」

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