表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

神の後悔


仲前佑太は、自分が弱いことを知らずに生きてきた。


幼稚園の頃、家は貧しかった。

食事は足りていなかったが、「空腹」が基準になっていたため、それを不幸だとは思わなかった。

成長しても、力が出ないのは「自分は運動が苦手なだけ」だと考えていた。


神社にだけは、なぜか足を運んだ。

理由はない。ただ、手を合わせると落ち着いた。

それを「信心深い」と呼ぶほど自覚的でもなかった。


普通に働き、普通に恋をし、普通に家庭を持った。

娘が小学校四年生になった年、彼は突然この世を去った。


---


### ■ 神の後悔


目を覚ました佑太は、白い空間にいた。


「すまなかった」


神は、そう言った。


佑太の人生は「運が悪かった」のではない。

幼少期の栄養不良により、筋力・代謝・回復力が常人の半分しか育たなかった。

努力で補っていたが、それは「自分の基準が低かった」だけだった。


「お前は、与えられなかった側だった」


神は、彼を元の肉体に戻した。

ただし――**力は2倍**にして。


・筋力

・持久力

・回復力

・思考の持続性


すべてが「ようやく普通の人の1.2倍」程度になっただけだ。


そして、もう一つ。


**異世界往還スキル**

地球人を最大10人まで連れて行ける、制限付き。


---


### ■ 佑太は冒険を選ばなかった


剣も魔法も学ばなかった。

勇者にもならなかった。


彼が考えたのは、ただ一つ。


「娘を、困らせない」


異世界の市場を見て、彼はすぐ理解した。

この世界では――**美しく、均一で、安定した宝石が存在しない**。


魔法石はあるが、不安定で希少。

加工技術も粗い。


佑太は地球から**人工宝石**を持ち込んだ。


・工業用合成サファイア

・レーザー用ルビー

・完璧な透明度のダイヤモンド代替結晶


異世界の職人たちは、息を呑んだ。


「神が削った石だ」と誤解された。


---


### ■ 儲け方は、静かだった


佑太は独占しなかった。


・都市ごとに流通量を制限

・「子供用の護符」「学業成功のお守り」用途に限定

・貴族向けの過剰装飾は禁止


価格は高いが、法外ではない。


結果として――

**宝石市場は安定し、佑太だけが利益を積み上げた。**


異世界に連れてきたのは、地球で行き場を失っていた人間たち。


・宝石加工職人

・物流管理者

・会計士

・教師


全員が「戦えない者」だった。


---


### ■ 神が見た結末


佑太は、異世界で王にも英雄にもならなかった。


だが――

・宝石価格の安定

・子供向け護符の普及

・教育資金の循環


それらは数十年後、「貧困による魔力暴走事故」を激減させた。


神は言った。


「お前は、救済を求めなかった。

 だから世界が救われた」


佑太は笑った。


「俺は、ただ――

 **娘に胸を張れる父でいたかっただけです**」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ