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公爵令嬢は愛人となり、いずれは母となる  作者: 白根 ぎぃ


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15/33

15、王妃とナイトシード公爵




 王宮の自室へ戻ったカルミアを待ち構えていたのは、ナイトシード公爵だった。


「この馬鹿者が! 大事な春花祭に参加せず遊び呆けるばかりか、あのような小娘に国王をたぶらかされおって! このっ」


 ナイトシード公爵が長旅でくたびれた顔をしているカルミアの背を杖で何度も殴打した。カルミアは痛みを軽減させるために、体を丸め謝罪するしかなかった。


「お義父様、申し訳ありません! 申し訳ありません……!」

「謝って済むものか! 何のためにお前を養女にして王妃の座を与えたと思っているのだ! お前は子を孕むだけ……産むだけで良かったものをそれも出来ぬとは! ヴィオレッタの代わりも出来ぬ出来損ないがっ」

「……もっ…………申し訳ございません……ぅ」


 公爵は怒りのあまり杖を強く握りしめ、カルミアを殴り殺してしまうのではないかと思えるほどだった。分厚い体から発せられる激しい威圧感に、カルミアは呼吸すらも苦しくなる。


 養女として公爵家に引き取られてから、公爵の怒りだけは絶対に逆らってはいけないと身をもって覚えさせられていた。


「そもそも、なぜすぐに戻らなかった! 最初の一年はお前が王家から子を産めないプレッシャーを受けていると周囲に見せるため、あえて療養を長引かせたが、その後は何度か使者を送ったはずだ!」

「お、お義父様……私、そのような使者も手紙も一度も受け取っておりません……! ベラ、サーラもです! 連絡があったのは、つい先日、陛下からの一方的な書簡だけです……」


 公爵はカルミアの涙ながらの訴えに、一瞬だけ杖を振り上げる手を止め、険しい表情でカルミアの顔を凝視した。カルミアが公爵に嘘をつくことは、恐怖心からあり得ない。



―――ならば、情報が途中で遮断されていたのか? いや、そんなわけはない。この城にも、療養地にも手の者を忍ばせている。それにベラとサーラは、カルミアを見張らせ、逐一連絡を取っていた……どういうことだ?



「馬鹿なことを……確かに『カルミアは体調不良が続き、王都に戻るにはまだ時間がかかる』と、お前の侍女の名で返事が来ていたのだぞ……お前の体調が回復しないと判断したから、こちらとしても下手に迎えに行っては、却って面倒なことになると思い、静観していたのだ。それが虚偽だったと申すか……」

「侍女……? お義父様からお手紙は全てベラかサーラが受け取っております……私たちは本当に何も知らなかったのです……ぅう……」



―――あの手紙は誰が……確かにベラとサーラの名ではなかった。ああ、くそ、まさかローレル公爵が牙を剥いてくるとは思いもしなかった。娘は隣国に嫁ぐと聞いていたため、その教育に来ているものとばかり思っていた。



 王宮で姿を見ても、一度も国王であるアイバンと一緒にいるとこなど見たこともなかった。王宮に潜り込ませている配下の者も、何も掴めていなかったのだ。


 ナイトシード公爵は不審に思い、カルミアの療養が一年を少し過ぎた頃に一度、ローレル公爵本人とそれとなく話をした。しかし、ローレル公爵は『娘は隣国の貴族に嫁ぐため、王宮に身を置き隣国の作法を学ばせていただいております』と穏やかに否定した。


 さらに公爵は王宮内の配下を使い、カトレア本人にも接触を試みた。カトレアは噂されている優雅さで『隣国の作法を学ぶには、隣国から嫁がれた前王妃様付きだった前侍女長にお話を聞いております』と答えた。



―――してやられた。あの小娘め……。



 ローレル公爵家は確かにナイトシード公爵家とは一線を引いていた。そして、どちらかと言えば中立寄りであったからこそ、気にもとめていなかった。



―――この私が、読み負けたか……!



 ちらりとカルミアの方へと視線を向ける。しくしくと男が好きそうな相貌を涙に濡らしてただ泣き続けていた。


 公爵は鼻を鳴らすと、杖を床に強く打ち付けた。


「チッ、鬱陶しい。今更泣いてどうする。良いか、今すぐ陛下に面会を申し込め。療養が長引いたことを丁寧に詫び、王妃の公務を再開する意志を見せろ」


「し、しかし……陛下は怒っておられます。愛人を作られたほどに……」


「愛人など、この公爵家の力でどうにかできる。問題はそこではない。お前が公務を放り出し、王妃としての責務を果たさなかったという理由を、陛下に与えてしまったのが最大の問題だ。まさかそれが分からないわけではないだろうな?」

「わ、分かっております……」


 公爵はカルミアの顎を掴み、無理やり顔を上げさせた。


「王妃としての務めを果たとだけ言え。お前の口からそれ以外の言葉を出すな。良いか? 王妃の座はお前がとったわけではない、この私が与えたものだ。そのことを忘れるな!」

「……はい、お義父様。い、急ぎ、面会を申し入れます」

「さっさと行け!」



 ナイトシード公爵の前から辞すると、カルミアは未だに震える体で身繕いを整えさせた。化粧は涙で崩れていたがベラが手早く直し、公爵に言われた通り憔悴した王妃の体裁を整えた。


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