1、思い出
―――ねえ、私はあなたに助けられたの。今度は私があなたを助ける番。
そう言うと彼女は唇の両端を綺麗に上げた。
声は少し高めで少女のようにも思えるが、同時に大人の落ち着いた声色でもあった。どちらにせよ、よく耳に馴染む声だった。
「私を知っているのですか?」
―――どういうこと?
「だって私はこんなに醜いの。もう長く誰かに会った覚えはないのよ……」
―――会ったことがない? そう、それなら覚えていないのはあなたよ。
どういうことなのか分からなかった。しかし、こんな山奥の古びた家に訪れた少女の輝く瞳を見ると、首を縦に振る以外に考えられなかった。
手入れの行き届いた髪が月の光に輝いている。意志の強そうな瞳が射貫くように『私』を見つめ、薄く形の良い唇が動いた。
―――私を信じて。あなたの運命を元に戻してあげるわ。
同じ女として見惚れるようなその微笑みが、女神のように思え、差し出された手を取った。この山奥の古い家で一生を終えるのだろうと思っていたけれど、運命が変わる音が聞こえた。
お休みしていた期間に少しずつメモしていたやつです。ぼちぼち載せます。




