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空は、まだ咲いていた  作者: 宇波
第一章 自衛軍士官学校 〘1〙第一期戦闘試験
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第九話 試験、即ちサバイバル 2

「おかえり夏ちゃん。お花ちゃんあんがとねん」


 大量じゃーん。なんて間延びした声と共に、私たちは地面へ枯れ枝を投げ出した。

同時に、地面にきれいに並べられた、模造武器の数々が目に入る。


「それ、どうしたんですか?」

「んー? 近くの補給ポイントから掻っ払ってきたぜぃ」


 この近くに補給ポイントなんてあったんだ。気が付かなかった。

呑気に考えていたけれど、荒太先輩が疲れたような顔をしてぼそっと呟いた言葉に戦慄した。


「あったけど。こっから大体片道五キロのとこにな……」


 この調子じゃ、荒太先輩も一緒に行ったということだろう。

しかし片道五キロ。五キロかぁ……。


「私たち、拾ってくるの二十分無かったですよね?」

「瑪瑙に人間の常識を押し付けるな」

「アッ、ハイ」


 コソコソ内緒話をした結果。

この中で一番人間離れしているのは瑪瑙先輩ということが分かった。


(つまりそれについていける荒太先輩も……)


 相当人間離れしているということでは?

私は訝しんだ。


「俺はまだ人間だってば」

「ア、ハイ」


 心を読まれた。


「よーし戦利品分配の時間だぜーぃ」


 そんな中、呑気に武器を観察していた瑪瑙先輩が声を上げる。


「まーず織姫ちゃーん」

「はーい」

「ロングレンジエッグいライフルどーぞー」

「ありがとー」


 あまね先輩が渡された武器は長い銃筒を持つライフル。

あまね先輩野身丈の殆どを使うほど長いライフルを、先輩は軽々背負った。


「おっ花ちゃーん」

「どれだ、オレのは」

「お花ちゃん三つ持ってー。メインはアサルト、サブで拳銃、予備オブ予備でシビシビナイフー」

「ナイフの鞘寄越せ。腰下げてたらオレも被弾する」

「あいよぉ」


 瑪瑙先輩から日向先輩へ手渡されたナイフの鞘は、なんともゴツくて重そうな鞘。

それに収めたナイフは、日向先輩のベルトに通された。


「サァフィンくーん」

「ハイハイハイ」

「サーフィンくんどっちがいい? ウチはどれでもいいんよ。サーフィンくんもどっちも使えると思うし。好きな方選びー」

「……んじゃ、散弾銃。ナイフもらっていい?」

「どーぞー、どーぞー」


 日向先輩と同じ鞘をナイフに装着し、散弾銃を背負った日向先輩の奥側から、瑪瑙先輩が顔を出す。


「夏ちゃんのもあーるよんっ」

「えっ。あるんですか」

「あったりまえじゃないのーん。ヒヨコちゃんを丸腰で外に出す鬼畜じゃないですのん」


 おいでおいでと手招かれ、歩む足取りはおずおずゆっくり。


 そんな私を、瑪瑙先輩は微笑ましそうに見ていた。


「夏ちゃんはこっちねん。まだ重い銃はキツイと思うんよ。こっからガンガン動くしなぁ」


 そう言いながら手渡されたハンドガン。それから予備の弾。

ずっしり重く手にのしかかるそれを、瑪瑙先輩は護身用と言った。


「基本は夏ちゃんは逃げる一択。だけど、だけどもな。どーっしても使わなきゃ逃げられない場面に遭遇したら」


 瑪瑙先輩の手が、拳銃の形を作る。

それをこめかみに当て、彼女は「ばーん」と言った。


「撃て。友達だろうが肉親だろうが。情けはかけるなよん」


 緩いいつもの口調。

だのにその目は怖かった。

 知っている瑪瑙先輩が、知らない人に見えるその目が。


 恐怖を紛らわせるように、喉は生唾を飲み込んだ。


「おい、一年ビビってんだろ」

「ありゃ? なんか怖かった?」

「お前目ぇガンギマってんだよ」

「およよ?」


 自覚ないのかよ。呆れたように言う日向先輩に、瑪瑙先輩はテヘッと笑った。


「武器行き渡ったけど、この後の行動はどうする? 瑪瑙ちゃん」


 あまね先輩が問うと、うむ。と何か考えているように腕を組む瑪瑙先輩は。


「とりあえずいい感じに!」

「オイ! ノープランかよ!」


 思わずと言った風に荒太先輩が叫んだ。

私も同じ気持ち。


「基本方針はお宝ゲット! 戦闘は極力行わない、ただし自衛はおっけー! で、夜は拠点戻って来ること!」

「食料はどうするんだ?」


 基本方針を語った瑪瑙先輩へ、荒太先輩が疑問をひとつ。


「補給ポイントもう一回行ってくるか?」

「んー、やめとこーぜ、サーフィンくん。多分今なー……」


 いる気がするー。と困った顔で笑う瑪瑙先輩に、ああ。と訳知り顔で頷く荒太先輩。

他の人達も分かったようにしていて、だけど私は分からないから、聞くしかない。


「来てるって……」

「んー……。カッコウくん」


 カッコウくん?

また不思議なあだ名を付けているなんて思うが、誰のことを指しているのか分からず、首を傾げる。


「あの、カッコウって……」


 側にいた日向先輩に聞くと、苦々しい顔を返された。


「え、そんなに言いたくない人なんですか? 名前を言ったら命取られるんですか?」

「名前言ったって死にゃしねぇよ。……単純にアイツが嫌いだってだけだ」

「それは……、日向先輩が?」

「オレも。……アイツも」


 そう言って視線を向けた先に瑪瑙先輩。


「瑪瑙先輩にも、好き嫌いってあったんですね」

「まあ、読めない奴ではあるけどよ」


 同意なのか微妙なラインの返答。


「それで」


 私は日向先輩を見上げた。


「その、お二人が嫌いなカッコウさんって、誰なんですか?」


 苦い顔がさらに苦くなって、眉間のシワがびっくりするほど深く刻まれる。

 じっ……と見上げたままでいると、観念したのか、彼は小さく両手を挙げて降参のポーズ。


「……総合一位の優男。アイツが瑪瑙曰く、【カッコウ】だ」

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