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空は、まだ咲いていた  作者: 宇波
第一章 自衛軍士官学校 〘1〙第一期戦闘試験
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第六話 試験、開始まで 2

「な、つ、ちゃん!」

「わあっ! いきなりなんですか、瑪瑙先輩」

「んっふふふー。あんね、スタート地点に着いたら話す間もなく開始しちゃうから、今作戦会議しようと思ってねん」


 スタート地点まで向かう途中、背後からいきなり飛びかかられて心臓が飛び出ると思った。

なんせ足音が全く聞こえなかった上に、飛びかかる気配すら感じられなかったから。


 彼女はイタズラ成功した子供のように無邪気に笑う。

笑いながら、作戦会議などと言うものだから、私は先を急ぐ先輩たちの背中に視線を向けた。


「それなら先輩たちも交えた方が」

「彼らは大体承知してるよん。なんせ、ウチとはながーい付き合いだからね」

「以心伝心ってやつですね」

「ウソウソ。授業被ってるのが多いから自然に打ち合わせしてただけぇ」


 ヘラヘラ笑いを浮かべる姿は、やっぱり掴み所がない。

鼻白む心地でいると、緩い雰囲気のまま、彼女は問いかけてきた。


「まず、今回の流れはだいたい知ってる?」

「戦闘試験って名前のサバイバルゲーム……ですよね?」

「そうそう、大まかにはそんな感じ! 偉いぞ夏ちゃん!」


 大袈裟に褒める瑪瑙先輩。

少しの気恥ずかしさに、少ししかめっ面を返す。


「いいですから。作戦、教えてください」


 私の照れ隠しが伝わってしまったのか。

緩い笑みを浮かべる瑪瑙先輩の顔が、ニマニマ面白そうなものを見た顔に変わった気がしたけれど、気の所為、気の所為と無視をした。


「あいあい。じゃあまず作戦の前に、今回の試験ルールのおさらいしようねん」


 事前に説明されていた形式は、五人一組サバイバルゲーム。

と、言う名前の宝探しゲームと聞かされている。

 試験で使われる敷地の中に隠されている宝箱を探し、その中にある宝を入手すれば、チームにポイントが入る。


 ……ただし、宝は直ぐ様ポイントに変換されるようなものではなく、宝を入手したチームはそれを終了まで守り抜かなければポイントにならない。

つまり、他のチームから奪い取ることが可能ということ。


「宝の形はその年その年で違うみたいよん。去年はコインだったねん」


 ということは、持ち運びやすい形かどうかはその年の運次第。

持ち運びにくい物であるなら、持つ量を変えるとか、持ち方を変えるとか、色々な工夫が必要。


 そういうことか、問いかけると、瑪瑙先輩はグッと親指を立てた。


「そゆこと」


 そういうことらしい。


「宝を奪取されないように、抵抗をしなきゃならんわけじゃんね? そんな時に役に立つのが……」

「……補給ポイントにある、模造武器ですね?」


 瑪瑙先輩の言葉を引き継ぎ答える。

彼女は満足そうにニンマリ笑う。


「せいかーい。補給ポイントには携帯食料やお水のほかに、模造銃や剣とか、いろんな武器があるんだけど、数に限りあり。早い者勝ちってことねん」


 早い者勝ちは知らなかった。

全員に平等に分け与えられるものだと思っていた私は、想定を崩されて焦りを感じた。


「と、なると、一番先に補給ポイントに」

「行かないよ?」

「え?」


 驚き顔を見上げると、キョトンと不思議そうな先輩の顔。


「一番近い補給ポイントなんて、みんな考えることなんて一緒なんだからよぅ。ぶん殴られて、もらった武器を取られて終わりだよん」

「近くの場所だとそうなんですか?」

「そ。だからウチらは、できるだけそこから距離を取る。奥へ奥へ目指して、人目に付きにくいところに拠点を作る。まずはそうするんよ」

「なるほど」


 私が納得したように首を振る。

瑪瑙先輩は満足そう。


「で、チームとしての作戦なんだけどねん。基本的に積極的な応戦はしないこと。宝を探して、チームポイントを貯めるのを、期間中ひたすらやっていくよん」


「夏ちゃんもわかってると思うけど、宝探しはチームポイント。これは終わったあとに、チームメイトに均等に分配されるものねん。例え個人がゲームオーバーになったとしても、このポイントだけは貰える」

「敵チームの撃破は個人のポイント……でしたよね?」

「そのとーり! 敵チーム人員の各個撃破は、個人ポイントとして加算されていくのんね。ここで注意してほしいのは、敵から攻撃を食らってゲームオーバーになったときには、この個人ポイントはパァ。ゼロポイントになって、チームポイントしか手元に残らないこと」


 しかも死んだあとだと、チームポイントも何割か削られての付与になるから、一気に不利になるのよねん。


 おどけた口調のくせに、瑪瑙先輩の表情は困ったような顔だった。


「つまり、一度死ぬと……」

「足切りラインにうんと近付く。実質ゲームオーバーってことよねぇ」


 軽い。やっぱり軽すぎる。

瑪瑙先輩の綿あめよりも軽い口調は、危機感がまったく含まれていないように聞こえて仕方がない。

だけど、話される内容はとてもシビアで、そしてこれがこの試験の現実。


 瑪瑙先輩の話し方がいくら緩くとも、聞こえ方が軽く聞こえようとも、しっかり覚えなくてはいけないこと。

私は頭の中に、きちんと注意として刻みこんだ。

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