中学生のサポートと迷走
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大災害 (ボクのせいだが)を乗り越えた一年堂書店は、今日も健気に営業していた。
崩れた本棚も直り、増えすぎた⚫︎ラム⚫︎ンク27巻も封印。
ようやく平和……と思いきや、次なる問題が店長の心を蝕んでいた。
「最近……客が……来ない……」
いよいよ店長から、“アイデアの泉”の湧きが鈍ってきたのである。
かつてはAVコーナーを男湯に仕立て上げ、チンピラにもへこたれなかったあの店長が――
元気がない。
「星野くん……このままじゃ……閉店かも……」
そんな店長に声をかけたのは、意外な存在だった。
「店長、どうしたの〜?なんか元気ないみたいじゃん」
現れたのは、最近よく立ち読みしていた女子中学生の集団。
制服+ジャージ、カバンにキーホルダー盛り盛り。元気いっぱいの3人組。
「なんだよ、店長〜!漫画たくさんあるんだからさ〜元気出しなよ!」
「元気だけじゃ客は来ないんだよぉぉぉぉ……!」
まさかの泣き言。50代男性が中学生に素直に弱音を吐いている姿になんだか圧倒されてしまった。
でも、そんな店長の姿を見て、女子中学生たちは燃えた。
「店長、任せて!私たちにいいアイデアあるから!」
どこから来るんだ、その自信。
数日後。
ボクが出勤すると、店内が――いや、店の外観が明らかにおかしかった。
「……なんだこれ」
全面ガラス張りの店が、すべて覆われていた。
そう、おびただしい量の手描きイラストによって。
『⚫︎ろうに⚫︎心』や『⚫︎ーラー⚫︎ーン』など何を書いているかはかろうじてわかるものの、似ても似つかないようなイラストの数々。
まるで母の日が近づいた時期によくあるスーパーの壁面のようだ。
女子中学生たちは誇らしげに言った。
「どう?ちょー目立つよね!この通り、みんな見てくれるよ!」
たしかに通りすがる人々に見られてはいた。
だが人々の目は以前の一年堂書店と比べてあきらかによそよそしくなっている気がする。
案の定、その日を境に店の客が激減した。
イラストが大量に貼り付けられ全く中が見えなくなった古本屋はなんだか異様で、禍々しいオーラを強く放っていた。
1週間後、ついに店長が動いた。
「くそっ……くそっ……!」
もう「なんでだ!なんでなんだ!」すら出てこない。
ひたすら、絵を剥がして捨てる作業を繰り返していた。
その脇には、またどこからか仕入れてきた大量の駄菓子たちが、店長の次の失敗を待ち望むかのように佇んでいた。
当たり前だが、その後中学生たちは二度と来なかった。