大地震発生!
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その日、空はどこまでも青く、空気はカラッとしていて――
いわゆる「何も起こらなさそうな日」だった。
一年堂書店もいつも通り、静寂を保っていた。
お客はいない。店長もいない。
いるのはボクと、無数の本。本。本。
店長の「キレイならどんな本でも100円以上で買い取りなさい」という謎ルールのせいで、店の蔵書量はどんどん膨れ上がっていた。
特に『⚫︎ラム⚫︎ンク』なんて、棚一列が丸々27巻だけで埋まってるくらいだ。
ボクはその⚫︎ラム⚫︎ンク27巻を、ぎゅうぎゅうの本棚にムリヤリ押し込もうとしていた。
なかなか入らずに、グイッと押した、その瞬間だった。
ゴゴゴゴ……バーン!!!
自分が押した場所を起点に、店内にある複数の本棚が、バンバンと銃声のような派手な音を立てながらドミノ倒しのように次々と倒れていく。
「うわああああああ!!」
本が舞う。本棚が崩れる。粉塵が上がる。
まさに店内が一瞬でカオスに飲み込まれた。
だが…
幸い、時間帯は奇跡的に“お客様ゼロ”。
誰も巻き込まれていない……と思い
「よかった…」と呟いた。
すると本の山の中から
「よかったじゃないんだよぉぉぉぉ!!!!!」
ドザザザザッ!!!!!!!
「死ぬかと思ったよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
店長が本の山の中からダイダラボッチのようにせり上がってきた。
どうやら、棚の奥で「在庫チェック」と称して昼寝していたらしい。
本と棚に埋もれながら、頭に何かの攻略本を乗せて、悲鳴とともに復活。
「関東大震災かと思ったよ!!」
その場で店長へ土下座で謝罪を行ったが、幸いなことにケガはなかった。奇跡である。
だが、目の前には崩壊した本棚、本の山、そして再構築という地獄が待っていた。
そこから始まった、深夜2時までの“復旧作業”。
本を拾い、本棚を起こし、順番に並べ直す。
汗だくのボクと店長が、最後にうなだれながら呟いた言葉は共通していた。
「二度と、⚫︎ラム⚫︎ンク27巻は見たくない……」
その日以降、本棚の下部にはネジ止めが追加された。
やっと現実的な対策を講じた店長に、少しだけ人間味を感じた夜だった。