アダルトコーナー爆誕!
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貸本業という一年堂エンタープライズの第一プロジェクトが、ヤンキーのせいで文字通り“紙クズ”と化した翌週のこと。
ボクはまたしても店内で、静かに漫画を読みながらシフトを消化していた。
万年堂書店は本は売れないけど、時間は腐るほどある。
しかし、そんな沈黙をまたも打ち破る男がいた。
「わかったよ、星野くん!!」
出た。やっぱり出た。
「この店に足りていないのは……“色気”だーーッ!!」
ドッカーーン!!!
……いや何の話ですか?
ボクが何も言ってないのに、一人で完結してテンションMAXの店長。
そのまま手にしていたタバコを灰皿にねじ込み、謎の使命感に燃えて外へ走り出していった。
「すぐ戻るから!留守番頼んだよ!店の未来は君にかかってる!」
未来は不安しかない。
そして店長が戻ってきたのは閉店間際。
小脇に大量のビニール袋。中から覗いていたのは――
アダルトビデオ。しかも昭和感全開の。
「これだよ星野くん、これ!!時代は“貸す”から“魅せる”だ!」
そして店長が用意してきた秘密兵器がもう一つ。
のれん(『男湯』と書かれている)。
ボクは言葉を失った。
のれんの先にAV。何ここ、秘湯なの?
「ここをこうして……こうやって……じゃーん!」
AVゾーン完成。
男湯ののれんの奥には、ジャンル別に整然と並べられたアダルトビデオ。
背表紙には『お姉さんと僕』『女教師密室授業』とか、攻めたタイトルがずらり。
そして翌日から、AVゾーンが稼働。
……というか、盗まれ始めた。
「なんでだ!なんでなんだ!!」
あのセリフ、今日も健在。
そもそもね、のれんの奥って防犯カメラもない密室だから監視できないんですよ、店長。
「なんでだ!なんでなんだ!!」
店長、アンタがバカだからだよ…。
ちなみに、ボクが働いていた5ヶ月間で売れたアダルトビデオの総数はたったの3本。
店長の性春大作戦は、あっけなく終了した。
あの日、男湯ののれんを裏返して「閉店」と貼った時の店長の顔――
男として大事な何かを失ったように見えた。