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08. 幼馴染

「アウル!こっちこっち!」


 家の庭で、4歳くらいの子供が棒を持ちながらこっちを呼んでいる。俺ではない。彼はは乳母メアリーの子供、ライアンだ。母親に似て緑色の瞳に明るい金髪の髪の少年は遊び盛りで毎日村中を走り回っている。

 俺が走り回るようになって家族を困らせる中、遊び相手にとメアリーが家に連れてきた。つまり俺の幼馴染になるやつだ。


 ライアンは森の事件以降どのやり直しでも疎遠になりがちだったが、数少ない同世代の人間だ。最近俺は言葉を話せるようになったのだが、かといっておしゃべりなわけでもない。今更異世界言語の習得に夢中になるわけでもない。よって最近は体をめちゃめちゃに動かすことに専念している。これは体の成長のためなのだが、結果異様に動き回る赤子になっていた。そんな子供のために仕事に家事に忙しい両親の時間を取らせるのは気が引けるため、俺は有難くライアンとの遊びに興じている。

 はじめは普通の子供よろしく、鬼ごっこもどき、かくれんぼ、ボール遊び等等で遊んでいたが、体力は消費しても訓練中の魔力がもてあまし気味だった。なので、このあいだから実はこっそり魔力を消費するようにしている。

 

 やり方はこうだ。遊びの中で、魔力操作の操作を体の動きに合わせて力をそこに集中させる。例えばボールを投げるなら手や肩に魔力を流す。という風にだ。結果、空に投げたボールは豆のように小さくなった後、急激に落下しライアンのすぐそばに落ちた。


 魔力操作は生まれた直後から始めていていただけあって、体全体である程度操作できるようになった。それを今はライアンとの遊びの中で少しずつ使っている。

 魔力は体の外に出る量になっていないため未だ体内操作だけだが、体内だけでも魔力を使うと運動の際に力が強くなる。実はこれが身体強化だ。

 この世界のほとんどの人間が魔力を持っているため、無意識で魔力を使っている人はたまにいる。子供で使うやつはほとんどいないが、原理的には誰でもできる便利な力だ。


 1歳児が野球選手のような飛距離で遊びのボールを投げているが、安心してほしい。さすがに親に見せるわけにもいかないのでライアンの前だけでやっている。

 はじめライアンは空を見上げながら首をかしげていたのだが、すぐに慣れて天高く飛んだのボールをキャッチするようになった。

 一度あまりに力の差があったせいがぐずってしまい、親に知られるのは面倒だと思った俺は、修行と称して魔力操作について軽く教えた。するとライアンはなんと、いつの間にか身体強化を使いはじめたのだ。子供にできる微かな強化だったが、辺鄙な村の子供ができることではない。

 乳母メアリーの教育方針に悪影響を与えたのではないかと俺は罪悪感を覚えたが、ライアンは無意識なのか、遊びの時にしか身体強化を使っていないようだった。

 これ幸いと俺も同じレベルで遊ぶようになった結果、俺たち二人の遊びは目撃者がいれば幼児たちが体に似合わない送球を行うという、正にファンタジーのような風景になっていた。まあさすがに人の気配が近づくと身体強化ありの遊びはひかえる様にしているが。

 今日も日が暮れるころにメアリーが迎えに来たので、俺たちの身体強化遊びはそれでお開きになった。


「おまたせライアン。今日はアウルと何をして遊んだの?」

「きょうはねー、ぼーるをとるあそび!あの木のてっぺんまでとんだぼーるをとれたんだよ!」

「あらうふふ、すごく高くまで投げたのね」


 メアリーとライアンの親子が帰り道に冷や冷やする会話をしている。ライアンから変なことをやっているのがばれそうだ。

 しかしなんとか子供の言うことと処理されているようで一安心した。平和な村でよかった。

 そうして俺は体と魔力の訓練を重ねていった。


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