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41. 村の共同作業

 その日は天気がよかったため、そのまま村中から持ち寄った道具を持って大人たちと森へ向かった。


 森の立ち入り禁止と言っても、薪や採集のため浅いところまではみんな来たことがある。今回行くのはそこよりもさらに奥地で、まさしく立ち入り禁止と村全体に周知されていたエリアだ。まあ俺達が拠点にしていた湖付近の奥地なんだけど。

 もし奥地でなかったなら、あの有用な薬草のある花畑も住民に早くからに見つかっていただろう。


 雪の後に複数の真新しい足音があっという間にできる。俺たちが何度歩いても雪が降ればなくなってしまった雪の地面は、一同が歩くとあっという間に固まって道になっていった。

 体力のない人が慣れない道の途中で休憩することもあったが、みんな何とかついて来てくれる。昼をしばらく過ぎたころに洞窟につくと、さっそく中に乾燥させていた保存食を、持ってきた紐や籠で次々と運び込んでいった。籠がいっぱいになると順次村へ運び、それを何回か往復していった。洞窟の保存食を運びきったら、花畑の有用な植物を根から土ごと採取しこれも村に持って帰る。村の開いている畑で栽培したいからだ。

 

 みんなで村に帰ってからは日がで父さんたちと協力して倉庫に入れた食料の帳簿を作り、村人への分配配分とスケジュールを組んだ。日が暮れるまで作業をつづけ、調整が終ったあと各家庭への配給を始めた。父さんたちは渋ったがこの配分期間は長めにとり、春が過ぎてもある程度配れるくらいにしてもらった。その分一回の配給量は少なめになってしまうが、飢饉はこの冬でけでなく数年つづく予定だ。保存食の量は冬が終るからといって油断できない。

 

 奥地への拠点は運び出しは数日かかった。全部終わった後はささやかだが村の皆で食事会をした。忙しく動いていた大人達だけでなく各家の子供達も全員あつまってパーティーだ。

 村の小さな広場に、祭りのときに使われる大鍋を持ってきて野外で一気に調理してもらったシチューのような料理がふるまわれた。シンプルな田舎料理だが、今日は作業が一段落したということで大盤振る舞いで肉もふんだんにいれている。

 冬の閑散とした村が久しぶりに活気だった。みんな久しぶりのごちそうに夢中で食べ、和気あいあいとした雰囲気がしていた。秋の収穫祭はあまり贅沢できなかったしな。

 肉体労働に疲労していた働き手も嬉しそうにあちこちで疲れをいやしている。酒でもあればよかったがこれは今は我慢してほしい。こんど村の外にいくときはに土産で買ってこよう。

 

 食事をしながらあちこちで父を含む作業に従事した大人たちはこの後のことを話し合っていった。父さんには一緒に作業しながらやりたいことを説明していたので大人たちの説明役になってもらう。母さんは主婦の間の情報伝達に忙しい。小さい俺にも集会に来ていた大人に話しかけられた。食品についての追加説明をしながら俺も料理を食べ続けた。文明的料理は久しぶりに食べるので俺の舌も忙しいのだ。


 温かい食事で和やかな表情がひろがる広場を見渡した。このあとも働いてもらうので皆にはどうか頑張ってほしい。明日は新しい植物の栽培方法の伝達だ。俺は栽培の専門家ではないからうまく説明できると嬉しいな。



「そのあと兄ちゃんがね、どばーってあたまになぐって、このあとどしーんでくまがたおれたの!!あの肉うまかったなー!!」

「あのなべよりも?すげー」

「兄ちゃんにたのめばもうい一匹くらいすぐとれるよ!!」


「ほんとか!!」


 村の人々が集まるようになってからは自然と子供たちも集まるのも日常的になった。

 そんななか今日中心になっているのは弟のオーシャンだ。

 オーシャンは村に帰ってから水を得た魚のように森での出来事をめちゃめちゃに集まった子供達に対してしゃべっている。そして心なしかその結果、俺よりもしゃべるのがうまくなっている、気がする。

 俺大丈夫かな。あっという間に話術で追い抜かれそう。その話を一番熱心に聞いているのは俺の幼馴染、ライアンだ。

 ライアンは俺を探すのをサンダー爺に頼んだ後、サンダー爺がなんとなく話を合わせてくれていたので、俺たちが森で冒険をしたと思っている。帰ってきた後のオーシャンの冒険譚もあって、一緒に修行に行かなかったことをしきりに悔しがっていた。

 森での話を聞こうと俺を探せば追ってくるのだが、俺の周りはしばらく大人で囲まれていたのでなかなか話す機会がなかった。俺を捕まえられないので結局またオーシャンの話をネタに聞いている。それがオーシャンのしゃべりを加速させる要因にもなってた。


 今日も俺をみつけたとたん寄ってきたので、大人たちが集まる前に少し話をした。


「それで、でんせつの熊をひっさつわざはどうすればできるんだ?このあとおしえてくれ。すぐ!」

「だからあれはお前が使っている身体強化の発展形なんだよ。使いたいならそれをまず極めろ。魔法はそれからだ」

「アウルまほう使えるのか?!てかおまえ前よりしゃべるな!オーシャンといっしょだ。オーシャンもてにばーってあつめたらなんかつよくなるっていってて…」


 弟と似ているといわれるのはうれしいな。しかし今は時間がないのでライアンの話は程々になあなあにして集会の集まりに急いだ。

 今日の議題は新規栽培についてだ。


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