23. クマの解体
森生活で生まれた予想外の悩みは一旦置き、今日は熊の解体に向かう。
水場である川に行くので今度は弟をしっかり待機させ、森で見つけた長めの蔦で熊の四肢をしばって引き上げた。熊の死体は水の冷たさもあり固くこわばっていたが、流水のおかげで血はすっかり抜けている。
そのまま身体強化で拠点の広場に持っていき、俺は肉を解体していった。冬の熊は寒さを防ぐため毛皮の下の脂身が厚く、小刀の油をぬぐいながら進めていく。弟は初めて見る熊の解体を遠くから見ている。怖がっているのかと思ったので、いい部位の脂身を削って俺もおやつ代わりに口に入れながら投げてやると、おそるおそる少し口にし、その味に感動したのか何度もかみしめていた。それからは熊の切り身がほしいのか、近くで見るようになった。現金なやつだ。まあ村ではこんな大きさの肉なんか食べられなかったしな。
弟とついでに妹に炙った肉をたまに与えながら、赤身を薄く切り分けたものを、窯のそばに作った小屋に吊るし、煙でいぶした。
冬なので熊の毛皮も余さず使い、小屋の床に敷くつもりだ。油を除去してこれも虫よけにいぶす。火の様子を見ながら燻している間に弟に魔力操作の伝授をした。見た感じ弟の魔力操作は完璧に近いが、今やっているのはこれを身体良化に転化させるための訓練だ。そこで発覚したのだがこいつの魔力、多い。
鍋の水を使いながら体の中の魔力の偏らせ方を説明している際、弟が足に集めた魔力は俺の二歳の時と遜色ないほどの量だった。魔力操作がうまいのはもちろん、移動させた後も他の四肢にまだ魔力が残っている。魔力量に余裕があるということだ。俺の魔力は産まれたときから意識して少しずつ増やしたものに無意識に追いついている。これは素質なのか、何なのか。なんとも世界は不平等だ。
魔力操作はすでに覚えてるし、魔力量も多い。このままでは弟に抜かされそうだ。
しかし弟の手前、俺は対面を保つため魔力の移動と力のかけ方、体の構造、これを使うと何ができるかを伝える。目安にツリーハウスの梯子を使わず、ひと蹴りでログハウスの玄関に到達するのを見せたあと、弟は近くの程よい大きさの石で練習しはじめた。よし、がんばって追い越されないよう、俺も修行頑張ろう。
将来有望な能力を持つ弟の足音におびえながら、最近常時使っている魔力の消費を気持ち増やし、身体強化も強めに使う。魔力は使うほど増えていくのはこの異世界でもテンプレだ。使用する魔力を増やしながら、狩猟や採集も行い、俺は森の中でやるべきことを処理していった。




