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13. 長男

「にーに!にーにはここ、こっち!」

「オーシャン」


 籠の中で人形のように眠っている妹にデレデレになっていると、妹の部屋の外から弟オーシャンが俺が怒った声で俺を呼び、じれったくなったのか俺の手を引っ張って外に連れ出した。

 最近オーシャンは、こうやって産まれた妹を俺がかまっていると怒り出すことが多くなった。はじめは俺が何かしてしまったかと一瞬ガラスのハートがきしみかけたが、乳母のメアリーがこのあいだこっそり種明かしをしてくれた。産まれたばかりの妹に弟は嫉妬しているらしい、という本当なら少々むず痒い理由を教えてくれた。

 こうなったら弟は気が済むまでかまってやらないと離してくれない。


 なので最近は一緒に遊ぶ内容にも工夫を入れるようになった。オーシャンのお気に入りの遊び「たかいかたい」を垂直に投げるだけでなく、放物線を描くように投げ、着地点に俺が全速力で走るアレンジを加えてやったところ、気に入られた。もちろん危険度は上がったのでアニーには内緒だ。

 オーシャンは少し走れるようにもなったので、鬼ごっこでも隠れた障害物から少し姿をチラ見せさせる挙動で変化をつけている。

 弟は満足してくれているようだが、最近兄としてはここでひとつ懸案事項が生まれてきた。

 最近オーシャンの魔力操作が微かに感じられるのだ。これは「たかいたかい」Ver.2をやっていた際、空中でキャッチ受け入れ体制をとのえるオーシャンをふと見た時だった。速度の速い空中で、俺にキャッチされやすい最適な姿勢をとるためか、そのときオーシャンの目に微かに魔力が集まっていた。

 さすがに俺のように身体強化までは使っていなかったが、今までの人生ではなかった変化だ。あるいは俺が気づいていなかっただけか。どちらにせよ弟にこんな才能が眠っていたとは。オーシャン、恐ろしい子。

 

そんなこんなでもうすぐ夏が終わり、秋の収穫の季節だ。今年の田畑も普通の収穫らしい。村人はいつものように農作業にいそしんだ。

 この季節が終わり、来年になれば不作の年が来る。最後にできる贅沢と思って秋にある感謝祭も楽しもう。

 妹の誕生も新たに、次の年の目標は森に置き去りにされる。きょうだい三人で生き延びるための準備だ。

 決意を新たに、俺は新しい家族の誕生を喜んだ。


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