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11. 夜の森

 一人で森へ行こうとした結果、親にこってり絞られてからはさすがに数日はおとなしくしていた。

 そして周囲の監視も緩くなったころ、俺はもう一度脱出を企てた。

 そうだ、森に行くのが見つかって叱られるなら、見つからずに行けばいいじゃない。


 という訳で森へ行こうとして数日後、皆が寝静まった夜。両親の寝息を確認した俺は、ベビーベットのかけ布団をかき集めて簡易身代わりを作り、そっとあけていた窓から部屋を抜け出した。

 窓から壁際に積み重ねられていた木箱をつたい、無事地面に降り立つ。外は雲一つない月夜だった。月の光は明るいが、夜なので人目を気にする必要もない。俺は家の庭から身体強化をかけて森まで一直線に駆け抜けた。

 暗がりの多い雑木林の中を視力も強化しながら進むと、あっという間に森の入り口につく。

 森についたら地面ではなく密集した木々を間に飛びながら移動する。足跡でばれて、また叱られるのも面倒だ。昼間に行ったキイチゴの茂みを超え、さらに森の奥へと進む。そのまま大きな洞を持つ木の近くについた。木の上からしばらく見通しを立ててあたりをつけた地面に勢いをつけて着地する。すると地面の下で眠っていた小動物がパニックを起こし、何匹かが穴から飛び出していった。逃げた一匹に狙いを定めて追いかける。

 昼間の手遊びで作った小枝の棒手裏剣を懐から取り出して、逃げる小動物に追いついて距離を縮めたタイミングでその針を投影した。


シュタッ

トンッ


「ギィッ!!」


 月明かりに照らされた動物が鳴き声をあげて倒れる。針が命中したようだ。近づいて確認すると、耳の短いウサギのような小動物が取れた。

 今世初めての狩りはまずまずの結果だ。俺は獲物に手を合わせた後、さっそく解体を始めた。


 数時間後、焚火の周りに串しざしにした熱々の肉が焼きあがる。

 息を吹いて粗熱をとり、ウサギもどきに感謝しながらかぶりつく。久しぶりに食べた肉は、うまかった。今世で初めての肉の味に、脳みそから幸せの脳汁があふれてくる。

 塩も何も味付けていないその枝肉に、夢中でかぶりつく。小さな肉だったが、食べ終えたころには子供の腹をいっぱいにする量だった。満足だ。

 これでたんぱく質もばっちりだ。体作りに必要な栄養源の確保の目途がたった。これからも定期的に狩りに来よう。俺は決意した。

 新鮮な肉を摂取できた満足感に食後の眠気を感じながら火の後始末をし、日の登る前に家に帰った。両親が眠ったままなのを確認して安堵し、ばれないうちにベッドの中にずっといたかのように床に潜り込む。

 この日から俺は週に一回のペースで森への狩りを続けるのが習慣になっていった。同時に、両親から隠れるための隠密の技術は急速に高まっていった。



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