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仇敵討伐

暗闇に、魔獣の鳴き声と、地面を蹴る音、剣が肉を断つ音が響き渡る。





二ヶ月間、他の依頼もこなしつつ、目撃情報を基に"暗黒騎士"を追い続けていた。



思いの外早く、衝突の時が来た。



「勇者」の名前が持つ影響力は絶大で、"暗黒騎士"討伐依頼を受けるや否や、有力な情報がひっきりなしに舞い込んできたのだ。



…そのぶん、相手からしてみたら、こちらの行動は筒抜けだろう。もしかしたら、逃げられてしまうのではないかとも考えた。



だが、悪い予想の通りにはならなかった。新月が最も高い位置に届いた頃、目処をつけ滞在していた町に魔獣の大群が押し寄せてきた。



…地獄が思い起こされる。部屋の隅で隠れ、蹲ることしかできなかった記憶。これがただの、取るに足らない悪夢だったならと、絶望の涙を溢した夜。



だが、今は違う。最強の仲間たちが、共に戦ってくれている。今度はこちら側が、悪夢をプレゼントしてやる番だ。







「勇者」クラウンもさることながら、その仲間たちの実力も尋常ではなかった。



災害に匹敵する威力の風魔法で魔獣の群れをまとめて巻き上げ、さながら隕石のような火魔法の爆炎で一気に殲滅する。



比較的強力な魔獣相手には、光魔法の探知と氷魔法を組み合わせた罠を仕掛け、戦闘を有利に立ち回る。



…そもそも、視界確保と魔獣の弱体化のために、街全体を覆うほどの光魔法の結界を張られていた。



ここまで大規模な魔法の行使を見てしまっては、魔法が得意な者たちが居た堪れないような気分になる。





「危ない!」



誰かの叫び声と共に、剣が攻撃を弾く音が聞こえる。



「ありがとう、クラウン。」



「危なかった……と思ったか?それは違う、俺がいるからな。」



遂に、仇敵……"暗黒騎士"登場である。



結界のおかげで、闇に紛れた奴の姿も隠れることはできていなかった。



"暗黒騎士"は隠密が通用しないと見るとすぐに、持ち前の機動力を活かし、ヒットアンドアウェイの戦法での攻めに転じた。



ただでさえ重い両手剣の威力にスピードが加わって、尋常ではない威力の斬撃が襲ってくる。



…ただ、"暗黒騎士"の攻撃は思ったように上手くはいかない。



漆黒の大剣は振り下ろされることは少なく、寧ろ専ら防御にばかり使われていた。



本来なら、このような機動力の高い近接戦の敵相手には、カウンターを狙って立ち回るものだろう。



だが、相手は「勇者」クラウンだ。



スピード……そう形容することさえ憚られるほどに、瞬く間に移動して見せ、"暗黒騎士"のヒットアンドアウェイの アウェイ のタイミングでさえ追撃を加える。



初めは剣と剣が交わる金属音が鳴り響いていたのだが、中盤からは鎧に剣が突き立てられる音ばかりになる。



戦場にこだましていた、馬の蹄が地面を蹴る音も、いつの間にか止んでいた。



期待外れ……そんな感情がそぐわないことは重々承知しているが。「勇者」クラウンはそれほどまでに呆気なく、一方的に、"暗黒騎士"を相手取っていた。



……あとはとどめを刺すだけといったタイミングで、クラウンが僕に向けて合図を送る。



最後の一撃を、僕に譲ってくれるらしい。



…断る理由などない。ありとあらゆる鬱憤を込めて、剣を握る。



「行け、アレフ!」



「このクソ野郎があああ!!」









対象、沈黙。

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