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奇跡

恥ずかしさが押し寄せてきたかと思えば、今度は苛立ちに変容する。



目まぐるしく変化する感情は、さながら山の上の天気のようであった。



…とにかく、どんなことでもいいから何かしていないと落ち着かない。足を踏み出すのも運で決めているかのように、ふらふらとギルド施設に入った。



【荷物持ち 今日限り募集】



ふと、一つの依頼が目に留まった。



まあ、どうせどこかのご老人の依頼だろう。今は、誰かの助けになっているという正当化がしたいだけだし、お金ももらえるなら好都合だ。



適当に受注の手続きを済ませて、地図に引っ張られるように指示された場所へと向かった。









「お、君のことは聞いたことがあるよ。自分の実力よりも高いレベルの依頼ばかり受けて、一年間生き延びているというアレフくんだろう。」



予想とは違って、一癖も二癖もあるようなチームとでくわした。



「よろしくね、アレフさん。」



初めはカツアゲかとも思ったが、どうやら彼らが依頼人で間違いないらしい。



それと、どうして僕なんかのことを知っているのだろう…。…まあいい。今日一日だけの関係だ。どうせこの先は、関わることもない。







彼らの戦いは圧巻だった。



はじめに話しかけてきた青年がこのパーティのリーダーを務めているらしく、彼の掛け声に合わせた戦い方がパーティ単位で確立していた。



連携もさることながら、リーダー単体の戦力も卓越したものだった。



彼の剣技は目にも止まらぬ……どころか、一度完全に消えているようにしか見えない。



彼が一度踏み込むと、次の足音は敵を挟んで向こう側から聞こえてくる。



確認もせず適当に依頼を受けてしまったが、彼らが相当名の知れた者たちであることは火を見るよりも明らかだった。



そもそも、討伐依頼の荷物持ちの求人で条件不問の時点で、彼らの相当な自信が窺える。



依頼を難なくこなし、まるで学校帰りかのような雰囲気で町に戻った。







「今日はやけに身体が軽かった気がするよ。もしかしてアレフ、君の魔法?」



「ええ、まあ…。」



「君がいてくれて、すごく助かったよ。…そこで、もしよかったらなのだが、これからもこのチームで一緒に活動しないかい?」



…客観的事実から評価すれば、僕にとってこの荷物持ちは天職だった。



「人には人の、それぞれに適した仕事がある」…あのときは感情が邪魔をしたが、セイナの言葉は的を射たものだった。



彼らならもしかしたら、魔王を倒すことができるかもしれない。その助けになれるならば、僕の目的とも一致する。



「是非、よろしくお願いします。」



…思い通りにいかないことに腹を立てる心の中の悪魔を押さえつけて、彼らの提案を呑んだ。



「一応、お名前を聞いてもいいですか?」



「敬語なんて使わないでくれよ。俺はクラウン。当然、呼び捨てで構わないさ。」



「クラウンって、今の「勇者」と同じ名前か。いい名前だ。」



「あら?アレフ、もしかして知らないでこの依頼を受けたの?珍しいね。」



「知らないって、何を?」



すると、クラウンが演技じみた高笑いを披露する。



「ワーッハッハ!何を隠そう……この俺こそが、「勇者」クラウン御本人様なのさ!」

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