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愚者



ルナと会った後、僕たちはそれぞれ元の家で一晩過ごした。



…天井を眺めていると、昔のルナの笑顔と、今のルナの笑顔が、交互に脳裏に浮かぶ。



彼女の顔には隠し切れない苦しみと、そこはかとない深い不安感が浮かんでいた。それが、より一層僕の心を締め付けて放さない。



…ルナ自身が一番つらい思いをしているというのに、彼女は何よりも僕たちの身を案じている。



ならば、僕はせめてこの命を引き換えにしないと、割に合わないだろう。









「アレフ……お前は、この町に残れ。」



明朝。また依頼を受けに向かおうと出立の準備をしていると、グレンが思い切ったように提案してきた。



「……無理だ。」



だが、レインも追随してくる。



「アレフ……。ルナが、アレフがいると、身体が楽になるんだって言っていたわ。あの子のためにも、残ってあげてくれないかしら…。アレフがいるなら、私たちも安心できるよ。」



…正直、みんながこのような提案をしてくるのは予想していた。



でも、駄目だ。僕は、ルナと約束したんだ。必ず魔王を倒して、改めてこの町に帰ってくると。



一年前の覚悟は、今となっても変わらない……



「アレフ、お願い。これ以上、無茶はしないで。ルナはもちろんだけど、私たちはあなたのことも心配なのよ。人には人の、それぞれに適した仕事ってものがあるのよ。そうでしょ?」



セイナが、らしくない強い言い方をした。



…僕は、みんなにこう言われても、きっと気持ちは変わらないだろうと思っていた。



でも、少し違う。いや、本当に少しだけなのかわからないが…。



悲しい?…違う。



…形容し難い苛立ちが、心臓に纏わりついていた。



最悪の感情だ。強いて原因を挙げるとしても、自分の弱さだというのに……この感情の矛先は、よりにもよって大好きな友達に向いていた。



『お前は勇者にはなれない』



呪いのように僕を縛る言葉が、頭の中で反響する。



「…みんななら、わかってくれると思っていたのに。」



最低な台詞を残して……中途半端な荷物を抱えたまま、僕は一人で歩いた。

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