R - 贈り物
…
旅を始めてから、一年が経過していた。
僕は今、故郷の町に向かっていた。
偶然、四人で同じ依頼を受ける機会があったのだ。そこで、久々に全員で故郷に戻って、ルナに会いに行こうという話になった。
それぞれ出先で用意したお土産を携えて、懐かしの故郷へと歩く。
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「アレフ、大変そうね…。」
「その魔法って、火魔法じゃないんだろ?普通の身体強化魔法じゃないなら、本当はいったい何なんだろうな?」
「実は、段々効果は上がっていっている気がするんだけど……それでも、いまいちなんだよね。グレンの魔法の足元にも及ばない…。」
「そこは気にしちゃいかんな。俺が強すぎるんだよ!」
ガ―ッハッハと、グレンらしく豪快に笑う。
…身体強化の魔法は、普通のものは火魔法に分類される。
だが、僕のものはグレンの言うように、僕の魔法はどうやら火魔法ではないらしいのだ。
幼い頃からこの魔法には慣れ親しんでいるにもかかわらず、自分でも未だに発動条件さえ把握できていない。
この力を正しく使うことが出来さえすれば、もしかしたらルナの治療にも役立つかもしれないというのに…。
…
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「おかえり、みんな…。」
多少無理矢理気味に体を起こし……壁にもたれかかるような姿勢になったルナが、僕たちと目を合わせる。
ルナの容態は改善することこそなかったが、幸い大きく悪化もしていない様子だった。
…それぞれ、持ち寄った土産物をルナに手渡す。
レインは、竜の棲む地域でのみ採れる鉱石が使われているという、腕輪を贈った。
"竜を見ると万病が治る"という伝承の願掛けとして、依頼で立ち寄った町で買ったものだそう。
次に、グレンは綺麗な紋様の施された、浄化魔法の効果を発揮する寝間着を贈った。
浄化魔法という名前の割に、魔王の残滓には効果がないのが残念だと、グレンは苦笑いしていた。
そうは言っても、この品は尋常ではなく貴重な代物だ。
冒険者として成功を収め、かなりの資金を得ているとはいえ……このような時に妥協しないのが、彼の美点である。
そして、セイナからは本が贈られた。
この一年間の間にあった出来事を、日記のようにまとめたものだった。
ここへ来るまでの道中、僕たちにもいろいろと質問をして、白紙を埋めていた。
…最後に、僕からはまた、花束を贈った。
行ったことのない地域に行くと、見たことのないような花々がたくさん咲いていた。
そこで、その地域の花屋に行くと、珍しい花々を買うことができた。
花の生命力を促進させることのできる魔法を用いた花瓶も入手して、各地でいろいろな花を集めていた。
やはり、色とりどりの花は綺麗だ。…それでも、本当はルナに花束を渡したあの時の笑顔が忘れられないというのも、花束を選んだ大きな理由の一つだ。
…
ルナは、一つずつ贈り物を受け取るたびに、嬉しそうに微笑みを浮かべていた。
そんな彼女を見ていると、僕たちも幸せな気分になれる。
いつか一緒に旅に出れる、そんな日を夢見て…。