P - 初陣
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チームのみんな……グレンとセイナとレインも、一緒に着いてきてくれた。
四人の仲間がいるのは心強い。…とはいえ、それでも戦力としては不安感が拭いきれない。
取り敢えず、仲間を集めたい。確か、この国の中央の都市には、ギルドとか呼ばれている依頼を管理している組織があると聞いたことがある。
僕たちはまずそこへ向かって、行動の指針を立てることにした。
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初めに受けた依頼は、複数のチームが合同で行うものだった。
内容は、森に巣食う魔獣の間引きだ。まだ生まれからそこまで時間の経っていない、まだ大した強さでない個体を中心に狩る、難易度の低い依頼である。
…ただ、連携が思いの外うまく行かない。サポート向きの能力を持っているのはいいものの、お互いに内容は把握していないから、思ったようにいかない。
取り敢えず、一人ずつ能力を使って、慣れていくことにした。
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「きみの能力、すごく便利だね!この辺りは私の苦手な火を使う魔獣が多いから、君の魔法で氷にしてもらえると助かるよ!」
「えへへー、ありがと。」
レインの魔法は、逆転魔法。効果を反転させることができる魔法だった。
仲間が苦手なタイプの魔法の効果を逆転させて、戦闘において有利に立ち回ることができる。
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「助かったよ、"グレン"。君のおかげで、魔法がスムーズに発動できる。」
「ああ、任せときな!」
グレンの魔法は、友愛魔法。仲間に魔力を譲渡することができる。
譲渡効率はなんと120%であり、さらに友愛魔法の発動中はグレン本人の身体能力が向上する。
この魔法は相当強い。実際、グレンの"イデアル"は「英雄」というかなり稀なものだった。
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「いくよ!1、2、3!」
「…すげー!こんなに強い魔法を使ったのは初めてだ!」
セイナの魔法は、拡散魔法。シンプルに、魔法を補助して効果範囲を拡大したり、効果を増大させることができる。
今回のような掃討戦にはぴったりの魔法で、かなり重宝している。
そして僕は…。
「おかげで体が軽いぜ!ありがとな、少年!」
さらにシンプルな、ごく普通の身体強化魔法だった。
……本来、レインやグレン、セイナのように、特殊な魔法が得意というほうが稀なはずなのだが。
僕はもともと得意だった風魔法を主に使い、自らが攻撃役となっている。
まあ、そもそも仲間たちのサポート能力が高いおかげで、僕もかなりうまく戦うことができていた。
ただ、僕では役不足感があることは否めない。僕が発端で飛び出してきたというのにサポートに頼りきりで、なんだか申し訳ないような気もする。
でも、泣き言を言っている暇などない。僕は僕なりに、仲間のサポートを充分以上に引き出せる実力をつけることができるよう、鍛錬を積み続けるのみだ。
「…よっしゃあ!討伐完了!」
仲間の勝鬨が聞こえてくる。
…無事に初仕事は終えた。
これからもっとたくさんの人達と経験を積んで、魔王討伐へと進んでいくのだ。