弐 新入生たる問い
小さく島が見えてきた頃、生徒会の生徒がアナウンスをし始めた。
「まもなく島が見えてきます。あれが我らが校舎、和多都美学園です。」
地図によると長い川があり、太い川は七つの屋敷に細い川は学園が運営する町へ繋がっている。
流石、幽閉されし孤島…。高過ぎる塀が邪魔で中の様子が見えない。
「ワシは、生徒会長の光武玄義だ。何か質問を受け付けよう。」
先程、琥珀と虎男に拳骨をした生徒会の生徒はなんと生徒会長だったようだ。
(終わった…こいつのせいで生徒会長に目をつけられてしまった…!!)
虎男のせいで生徒会長に目をつけられてしまった事で琥珀はお先真っ暗になった。
「はい!学園に女子は何人居ますか?!」
虎男は他の人達も気になるような質問をした。
「…今のところ学園に女子は独りだな。向こうの船に女子が乗っていれば別だがな。」
入学する男女比に合わない…?どういうことだろうかと船内はざわざわし始めた。
「その…七つの寮って…どうやって分けるんですか?」
七つの寮の分け方を質問した奴がいた。
「いい質問だ。あれは…わからん。」
「わからんのか!」
もう一人の生徒会の生徒が思わず突っ込みを入れたようだ。
「だが噂ではセンスで分けてるらしい。七つの寮で一番人が多いのは人徳の蛇《Envy》だな。逆に一番少ないのは女子寮の純潔の蠍《Lust》寮だ。」
七つの寮は七人の騎士に基づく動物と精神
謙虚の獅子、人徳の蛇、忍耐の狼、勤勉の不死鳥、慈善の蜘蛛、節制の鰐、純潔の蠍からなっている。
「ワタシ、蛇園海人センパイと同じ寮になりたい!ライもそう思うでしょ?」
「そうだね夏彦。もう少し静かにしようか。」
「何かの間違いで女子寮にならないかな…」
「それはないだろ…」
いろんな会話が飛び交っている。
そんな中、不可解な質問が出た。
「学園の七不思議や十三の怪談について質問しても?」
しーん…と船内は静寂に戻った。
「ああ、構わんぞ。」
生徒会長は冷静だった。
「女子生徒の中退が多いのは何故ですか?」
その質問に生徒会長は冷静に答えた。
「…呪いだろうな。とあるモノを見初めると他のモノに目がいかなくなるそんな噂があったな。なぁ真よ」
「…そうだな玄義。」
「そして中退した者は学園から逃げ出し、別の学校に移るんだとか…ワシらが知っているのはここまでだな。」
七不思議…そんなの子供騙しだと思っていたがここまで謎に満ちていると琥珀は思えなかった。
「今、向こうの船の生徒会から連絡があった。皆に良い知らせと悪い知らせだ。良い知らせは向こうの船に女子が一人乗っている…」
「女子だってよ!!」
「女子女子女子女子!!」
「絶対彼女にする!!」
「美人かな!」
「なんでも良い!!」
『女子』というワードに過剰反応するのは和多都美学園の生徒だけだろうなと琥珀は思った。
「悪い知らせは彼氏らしき生徒と乗船しているらしいぞ。」
「なんだ…」
「結局女子寮の寮長かよ…」
「とんでもないブスだったらどうしよう…」
「選択肢はそれしかないな…」
男子生徒はここまで欲が強いのか。
虎男は何故か凄く楽しみにしているようだった。
「なぁ琥珀?」
「なんだい?」
「オレ様、寮長に知り合いが居るんだ。」
「え?」
「しかもその人は女子寮の寮長と親友に近いらしいぞ。」
「女子寮の寮長と?」
「めっちゃ美人だって言ってた。」
「ふーん…」
「興味ないのか?」
「まあね…」
「俺、会わせて貰えるんだ~♪︎」
「良かったね…」
女子寮の寮長ねぇ…どんな人だろうな。
凄く優しいのか…傲慢なのか…
「もう一つ知らせだ。その女子だと思われる生徒の事だが男子だったらしい…朱智の奴め…」
「えー…男子かよ…」
「つまんねー…」
「海人センパイ…♡」
「夏彦…今それいいから。」
ライバルの急増に虎男は焦っていた。
「うぉぉ!負けられないぜ!!」
虎男の闘志は燃え上がった。
この時、琥珀は思ってもいなかった。
学園生活でとんでもない珍事件に巻き込まれることになってしまうなんて…。