表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/92

第17話 相部屋

「で、仕方なく僕はあんたらと相部屋になったわけ」

「……生意気な同居人だな。まあ、これも何かの縁だ。仲良くしようぜ」


 ライサーはセートに手を差し出すが、セートは呆れた様子だった。


「ただ部屋が同じってだけで弱い奴と慣れあう気はないよ。じゃあ、僕もう寝るから」


 そう言って、自分のベッドに横になると、早々と寝てしまった。


「まったく本当に腹立つガキだな……」

「ただ、あの強さは本物だ。彼から学べるところは全部学ぼう」 

「まあ、それもそうか……」


 アルベクは自分たちが彼が警備隊に来たのは、自分たちが強くなるには良い機会だと考えていた。彼と寝食を共にし、トレーニングをすれば、彼の強さに近づけるかもしれない。


 そう思って、アルベクは自分もいつもより早く寝ることにした。

 ライサーもアルベクが布団に入ったのを見て、自分のベッドに横になり、眠りに入った。




「あーうるさい!」


 この部屋に来たばかりのセートは、ライサーのいびきのうるささに辟易した。見れば、アルベクはこの騒音の中でも、気持ちよさそうに寝ている。セートにとっては信じられなかった。


「おい、起きろ!」


 たまらずセートはライサーの身体をゆするが、彼は微塵も起きる気配がない。


「クソっ! 明日は絶対部屋替えてもらうからな!」


 その夜、セートはいびきのせいで一睡もできなかったのである……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「カイン隊長! 同居人のいびきがうるさすぎて寝れないんだけど! 部屋をかえてくれないかな」


 朝の訓練が終わった後、セートはカインに直談判をする。


「ライサーのいびきなぁ。まあ、これも訓練の一環だと思って我慢してくれ」

「出来るか! こちとら一睡も出来なかったんだぞ。色々と支障が出るわ!」


 兵士にとって睡眠は大事だというのに、この隊長は……


「アルベクも最初はいびきに苦しめられていたが、すぐに慣れたぞ。まあ、もう数日だけ我慢してくれ。それでだめなら、部屋を変えてやる」

「数日だって? あーもうわかったよ。絶対変えてもらうからね!」


 それをやり取りを横目でみていたアルベクは、セートに多少同情したのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 午後にはセフィーネが警備隊本部に来た。


「あら、セートじゃない」

「げ、セフィーネ」


 セフィーネの姿を見つけたセートは逃げるように、そそくさと自室に戻っていった。


「知り合いなのか?」

「ええ、親衛隊員とは皆、面識はあるわ。彼らの核玉コアに不調がないかチェックするのも私の仕事ですもの。まあ、彼はこっちの所属になったんでしたっけ?」

 

 アルベクの問いにセフィーネはそう答える。


「セートからは避けられているようだけど?」

「彼、面白いんですもの。色々からかっていたら、苦手意識を持たれたみたい」

「……なるほど。ところで、昨日セートと試合したけど、ぼろ負けだったよ」

「でしょうね。でも私の作った核玉コアは竜玉で出来た核玉コアにも負けない力を秘めているわ。それを引き出せるかはあなた次第だけど?」


 そう言って、セフィーネは核玉コアのある、アルベクの胸部に視線をやる。

 

「特にアルベク、あなたには期待しているわ。あなたなら、親衛隊だって超えらる才能があると思うの」

「でも、竜の装甲には波動武器も刃が立たなかったよ」

「だから、まだ進化の途中なのよ。核玉コアの出力が上がれば、武器も強くなるから心配しないで」

「そのためには特訓あるのみか……」

「ええ、頑張ってちょうだい」


 セフィーネはアルベクの肩をポンと叩く。そういえば、初めてセフィーネと会った時も肩を叩かれたっけと、アルベクは思いかえしていた。


「カノア島の魔術師たちも親衛隊の強さは知っているわ。彼らの目的が復讐にあるとするなら、親衛隊を超える核玉コアの開発を急ぎ進めていると思うの。あなたたちは、強敵と戦うことになるでしょうね」

「なるほど……覚悟しておくよ。しかし、親衛隊はなぜ動かないんだ。彼らがカノア島を攻めれば、すぐに決着がつくんだろ?」


 その質問にセフィーネはなんて答えるか少し考えている様子だった。


「まあ、そうなのでしょうけど。 ……ほら、皇帝陛下は気まぐれな方だから……」

「どういう意味だ?」

「そのままの意味よ」


 セフィーネは笑ってごまかす。アルベクとしてはあまり合点のいく答えではなかったが、皇帝陛下にまつわることだ、答えにくい事も多かろうと無理やり自分を納得させた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ