表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/92

第15話 親衛隊

 ネオとの戦いから一カ月が過ぎた。


 この間、魔術師の破壊活動は無く、平穏な日々が続いていた。しかし、アルベクは日夜、核玉コアの力を引き出すために厳しいトレーニングに勤しんでいる。


 そしてそれは、訓練場でライサーと試合稽古をしていた時だった。カインがひとりの少年を訓練場に連れてきたのだ。非常に小柄で、歳は十六歳前後だろうか。。

 金髪碧眼の整った顔立ちをした少年だったが、隊服のポケットに手を入れて歩くなど、どこかその態度は不敵だった。


「皆聞け。この少年は親衛隊から派遣されてきたセート・ユーセルだ。これから、外殻警備隊の所属となる。よろしく頼む」


 それを聞いて、隊内に衝撃が走る。アルベクよりも若い少年が、皇帝を守る親衛隊だという事実に皆が驚いているようだった。しかも、その親衛隊員が我が鎧殻警備隊として戦ってくれるとは。


「よろしくも何もないっしょ。みんな僕より弱いんだから」


 セートのその一言で、その場の空気が凍り付くのをアルベクは感じた。


「あんたらが不甲斐ないから、陛下は僕を派遣したわけで、自分たちの弱さを恥じた方がいいっすよ」


 隊員たちは立腹した様子だったが、カインは苦笑する。


「まあ、そう言うなセート。今まで魔術師から帝都を守ってきたのはこいつらなんだ。そこはお互い尊重してだな」

「僕は弱い奴はに敬意は払えないんだよね」


 カインにたしなめられても、セートは生意気な態度を崩さなかった。

  

「おまえさんも親衛隊ってことは鎧核装兵だろ? いっちょ俺と試合しないか?」


 ライサーがセートに言う。顔は笑っているが、内心はかなり腹が立っているようだった。


「ふーん、あんたが新型の鎧殻装兵ってやつ? でも、『竜』の核玉コアをもつ僕に勝てると思ってるの?」


 竜? たしか竜も体内に魔術を発生させる竜玉という器官をもっていたはずだ。まさか、そこから核玉コアを作り出したとでも言うのだろうか? しかし、竜は百年以上前に絶滅し、竜玉は非常に希少と聞く。親衛隊が持つ核玉コアが希少と言われるのは、竜玉を使っているからか……


核玉コアはこっちの方が新しいんだ。やってみなけりゃわからないだろ」

「無駄だと思うけど、まあいいよ。ただ、当てっこのルールじゃすぐ終わって面白くない。お互い、参ったと言うか、気絶するまで戦うのはどう?」

「ルールは別になんでもいいさ」


 そう言って、ふたりは訓練場の中央に向かった。


「いいんですか、隊長? 勝手に試合させて」

「うん? 構わんさ。親衛隊の実力を見ておくいい機会だろう」


 カインはのんびりとした調子で言った。


 隊員たちが皆ライサーを応援する中、まずライサーの胸部が光り、緑の鎧核装兵が顕現する。


「へぇ、これが新型か。じゃあ、こっちの鎧核装も見せてあげよっかな」

 

 そういうと、セートの胸が眩い黄金に輝く。そして、黄金の粒子はセートの身体を覆うが、その光景は見たこともないくらい美しく、神々しかった。


 黄金の粒子は徐々に装甲へと姿を変える。それは全身に黄金の鱗のような小片のある鱗鎧スケイルアーマーのようである。 

 頭部は竜を思わせる造形のマスクで、そこも鱗状の小片で覆われている。さらに、竜に似た角状の部位まで存在していた。


「武器は持たないのか?」

「武器なんていらないよ。僕の核玉コアは竜玉から出来ているし、この装甲も竜の鱗と同じ強度だ。超高波動全開でも良いよ。どうせ傷ひとつつかないから」


 煽るようにセートは言う。その言葉に、さすがのセートも戸惑う。


「こう言ってますが、良いんですか隊長?」

「構わん。俺が責任を持つから全力でやれ!」

「怪我しても知らねえぞ」

「どうぞ」


 ライサーはセートの肩に向かってグレイブを振り下ろす。鎧殻装兵の膂力と波動武装の超高波動が加わった一撃は、鎧殻装にさえダメージが通るのが通常だ。普通なら、避けざるをえない。

 しかし、セートはその場から一歩も動かず、攻撃を受けた。


 ライサーは驚愕したが、装甲に当たったグレイブの刃は弾かれ、セートの装甲には傷ひとつついてなかった。


「まさか……」


 ライサーは茫然とした様子で呟く。出力を抑えたとはいえ、こうも簡単に弾かれるとは。


「あんた、手加減したね。だから、大丈夫なんだって。今度は本気でやっていいよ」

「ああ……わかったよ」


 ライサーはグレイブの出力を上げ、セートの胸めがけて突き技を繰り出した。勢いの乗った一撃がセートの胸部に激突する。が、ダメージを負ったのセートではなくグレイブの方だった。

 グレイブの刃は根元から損傷し、使用が不可能な状態となった。


「そんな……馬鹿な……」

「ね、無駄なんだって」


 そのままライサーとの距離を一気に縮めると、腹めがけて当身を繰り出す。装甲の上からでも衝撃が伝わり、ライサーは訓練場の地面に倒れ伏す。そして、一撃で鎧殻装が解除された。


「それまで!」


 カインの声が訓練場に響く。


 アルベクは倒れているライサーに駆けよる。


「大丈夫か、ライサー!?」

「あ、ああ…… 大丈夫だ」


 ただ、かなりの衝撃を食らったようで、思うように立ち上がれないようだった。


「わかったろ、これが親衛隊の竜の力だ」


 セートは得意げに言う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ