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第13話 灰色のネオ

 怪物化した魔術師出現の報を受け、アルベクとライサー、そして他十人の旧式の核玉コアを持った隊員たちは現場に向かった。

 すでに皆、鎧殻装を纏っており、驚異的な脚力で現場に到着した。


「うん? 意外と早かったね」


 核玉コアの力で鎧魔導士となったネオが言う。彼は変身した後、その場から動いてはいなかった。


「お前さん、目的はなんだ?」

 ライサーは問う。

 

「俺はネオといって、強い奴と戦うのが目的さ。バシュルやザルバスみたいに弱い者いじめは好きじゃないんだ。あんたらは強い?」

「ああ、強いぜ。俺もこいつも」


 そう言って、ライサーはアルベクの方を見る。

 

「ふーん、緑と赤のお二人が新型か。あとは旧式だね」


 ネオは隊員たちを見定める。


「さすがにこの人数を一人じゃ面倒だから、傀儡兵くぐつへいを使わせてもらうよ」


 ネオの前方の地面に魔法陣が出現し、そこから人型の怪物が複数体出現する。彼らの顔には目も鼻も口もなく、全身が無機質な灰色だった。手には槍を持っている。


「なんだこいつら?」

「魔術で作った傀儡兵だよ。旧式の鎧殻装兵ともそれなりに戦えるはずさ。新型は俺が、旧式はこいつらが相手する」


 そう言うと、ネオの左手から灰色の刀が出現し、アルベクとライサーに斬りかかってきた。


「くっ!」

「このっ!」


 二人はその斬撃を防ぎ、反撃の一撃を繰り出す。しかし、ネオは身軽な動きでその攻撃を避け、今度はアルベク一人に狙いを定めて突き技を放つ。アルベクはその突きをガードし、隙を狙ったライサーがグレイブを振り下ろすが、それも跳躍して避けられた。

 ネオはどうやら複数人相手の戦い方に慣れているようだった。


 後ろでは傀儡兵たちが他の隊員たちと交戦している。魔術で生まれた怪物たちは、ネロの言うように旧式の核玉コアを持つ鎧殻装兵とも渡り合えているようだった。


「これはどうかな?」


 ネロの右手が光り、黒い光弾がものすごい速度でライサーに直撃し、爆ぜる。


「ぐあっ!」

 

 ライサーはその場に倒れ伏す。鎧殻装の上からでも有効とは、恐ろしい攻撃だ。


「大丈夫か、ライサー!?」

「ああ、生きてる…… だが、身体が麻痺して動かない……」 

「しゃべってる暇はないよ!」


 ネオはアルベクめがけて斬りかかってきた。ライサーが動けない今、自分一人で何とかするしかない。アルベクは攻撃を避け、反撃の機会を伺った。


 しかし、ネオの太刀筋は変幻自在で、そのステップもまた独特であり、戦いにくい相手であった。これがカノア島の剣術なのだろうか? アルベクが今までに相手したことのない戦闘スタイルだ。ここまで巧みな剣捌きを出来る相手は帝国でもそういないだろう。


「ふーん、君もやるね。楽しいよ」


 攻撃を繰り出しながら、ネオは笑う。言葉通り、本当に楽しそうだった。アルベクもこれが試合だったら、どんなに楽しかったことだろう。しかし、今は命のやり取りをしていて、アルベクには楽しむ暇などなかった。


 ネオの刀は反りがあり、その反りを使ってアルベクの長剣の攻撃の軌道を上手く逸らしていた。刀独自の戦闘スタイルであるが、攻撃を繰り出してもこうやって逸らされてすぐ反撃される。非常に厄介な相手だ。


 また、魔術攻撃にも注意しなければならなかった。アルベクが以前戦った鎧魔導士とは魔力量の桁が違うように感じる。刀だけではなく、魔術攻撃にも警戒しながら戦闘をしなければならない。


 アルベクが剣の裏刃も使った連続攻撃を繰り出すが、ネオはそれを自身の後方に大きく跳躍することで避けた。


「これならどう?」


 ネオの刀が禍々しい黒い光をおびる。そして、距離を保ったまま、刀を横に薙ぎ、黒い斬撃波がアルベクに迫ってくる。しかし、避ければ後ろで戦っている隊員たちに攻撃が当たる。

 アルベクは急ぎ胸のコアの出力を上げ、そのエネルギーを波動武装である剣の刀身に集中させる。そのまま、剣を振りかぶり、瞬時に振り下ろす。

 透明な斬撃波が空気を震わしながら、黒い斬撃波とぶつかる。エネルギー同士が衝突し、対消滅する。

 これは、新型の鎧殻装兵が使える、『波動斬撃』という技である。


「おお、これも防ぐんだ。凄いね」


 ネオはほんとうに楽しそうだった。


そして、右手からライサーに浴びせた光弾を放つ。アルベクは超高波動を纏った剣の刀身でそれを防ぎつつ、ネオとの距離を詰め、斬撃を浴びせる。ネロはそれを刀で防ぎ、また斬りあいの攻防が続く。


 そうやって、しばらくアルベクとネオが刀身同士をぶつけていると、ライサーの叫ぶ声が聞こえた。


「アルベク、避けろ!」


 その声に即座に反応したアルベクは、その場から離れる。次の瞬間ネオの身体が後方に大きく吹き飛ぶ。


「くっ、この!」


 麻痺から回復したライサーが槍の穂先に核玉コアのエネルギーを集め、それを遠距離からネオにぶつけたのだ。


 吹き飛んだネオはすぐに体勢を立て直すも、かなりのダメージを負ったのか、肩で息をしていた。


「油断した……君との斬りあいが楽しくて、つい他のものが見えなくなっていたよ」


 ネオは自嘲する。しかし、すぐに右手を光らせ、そこから黒い煙幕を発生させる。


「また会おう、鎧殻装兵!」


 煙幕に紛れて逃避しながら、ネオは言った。煙が消えるころには、ネオの姿は跡形もなくなっていた。


「すまない、取り逃がしてしまった」


 アルベクはライサーの元に駆け寄る。後方では、他の隊員たちが、傀儡兵を丁度倒し終えたところだった。一人の死傷者も出さなかったが、魔術師を取り逃がしたのは失態だった。


「いや、一人でよく戦ったよ」.


 ライサーは励ます。


「身体のほうは大丈夫か?」

「ああ、もう何も問題ない。しかし、なんだか不思議な敵だったな」


 新型の核玉コアをもつ自分たちと互角以上に渡り合う敵の存在を知り、アルベクはさらに強くならねばと思うのであった。

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