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第4戦 化け柳

化け(やなぎ)。樹木の怪異。個体差は激しいけど総じてそれ程強力な妖怪でもない。ただし、枝の1本からでも復活しちゃうしぶとさあって、繰り返し倒されることで学習したり、怨みを募らせたりする。


結果、


「うわっ?! 何だ???」


「何何何っ??!」


下校中、何か嫌な感じする、って思った途端、あずみと貴子が歩道の植え込みからいきなり噴出するように生えた柳の枝に絡み取られた。


「このっっ」


私は人目についていても、構うもんかた素早く鞄から取り出した牙付きの数珠を変化させて威吹丸にして、斬り払おうとしたっ。だけど、


「待て待て待て」


目撃して騒然としている人達も纏めて妖力の囲いで覆って隔離して、囲った空間を無数の水路と行灯と柳の木だらけの世界に変えて、ヤツは現れた。


化け柳!


ヒビの入った太刀を持っている。前に砕いてやったのにっ。


貴子とあずみ以外の人達は姿もはっきり見えないくらい枝で多重に絡め取られて身動きを封じられた。


「物塚大豆! 半年前にお前に殺された怨み、忘れまいぞ?」


「はぁ? ・・オカブ!」


オカブも影から出す。


「は~い。あ、化け柳だぁ。コイツ、すぐ生き返るよねぇ」


「下手な真似をすれば、学友2人を絞め殺す!」


貴子とあずみを軽く絞めてみせる化け柳っ。


「痛たたっ?!」


「うっ、大豆っ! どーなってるのっ?!」


「ごめん! ソイツはお化けで、私はそういうのやっつける仕事してるっ。それで怨まれた感じ」


「えーっ? マジかっ」


「名前、変わってるって思ってたけど・・」


「名前関係無いよねっ?」


結構気にしてるからっっ。


「ああもうっ、化け柳! 普通に勝負しろよっ」


「普通に勝負しろ、だと? 半年前は協会の者どもに油を撒かせて火を点けっ、銛を持ったヤツと挟撃してきたのはどこの誰だ?!」


「・・私、だけど」


しょうがないじゃん。何か凄い増えてたし、鱒子あんま強くないし、工夫したいじゃん?


「死ね!」


しなる枝を束ねて次々突き出してくる化け柳っ。回避する。コイツ、人型をしていて得物も持ってるからなぁ。耐久性は低そうだけど、いやそれよりも2人だ。


人間に関心が無さ過ぎて私の友達以外も私は守らなきゃならない、って発想が浮かばないみたいだけど、気付かれたら詰む。時間掛けられないな・・


「オカブ、街中で派手現れたから協会のフォローがすぐ入るとは思うけど、取り敢えず2人『何か』をアレしないといけないからっ」


察して!


「うん」


「私は援護しなくていいから、そっちを優先してっ」


「わかったぁ。スパッツ穿いてないけど、気にしなくていいと思う~」


「言わなくていいからっ!」


くっそ~、戦う前に準備させろよっ、化け柳!


「よ~し、植物妖怪対決。負けないぞ~っっ」


オカブは私の肩から跳んで、巨大化すると水路と柳と行灯も押し潰して着地して、あっという間に周囲に『蕪』を生やしまくりだした。


「?! 何っ? オイっ、お前! ここはワタシの世界だぞ! 勝手に増えるなっ」


「べろべろばぁ~っ!!! 植物のお前が生え易い所はオイラも居心地サイコーっ!!」


「この蕪っっ、人間に食われるだけの野菜の分際でっっっ!!!」


巨大化オカブと化け柳が枝の槍と葉の鞭で小競り合いを始めた。同時に離れた位置にも次々眷属の蕪を生やしだしているオカブ!


よしっ、注意も引いてくれたし、次の段も仕込み始めてくれてる。最初に会った時は、私の好物が蕪だったこともあって、


「君、蕪食べ過ぎぃ~、ギルティね」


とか言って家の庭にいきなり埋められて死ぬかと思ったけど、すっかり頼もしくなった! 帰ったらスペシャルブレンドの土のプランターに入れて、高級天然水をジョオロで掛けてあげるっ。


「ふぅぅー・・・っっっ」


いける。攻勢の甘くなった私への柳の槍の連打を避けつつ、風を練る!

こっちが反撃したら躊躇無く貴子とあずみを殺っちゃうだろう。


一撃。一撃で状況を変える。その為に、最速を得るっ。


風が・・・・溜まった!


「威吹丸!!!」


霊力を込め、爆発的に風を蹴ってオカブと争う化け柳に突進っ! バキィンッとヒビの入った太刀を中程で砕いて、威吹丸を手離して私自身は白打(素手ね)で折れた太刀を持つ化け柳に打ち掛かり、


威吹丸は遠隔操作で、貴子とあずみを拘束していた枝を切断! 解放された2人は近く生えたオカブの眷属が葉を伸ばしてキャッチして、あとは眷属間で2人をパスしまくって遠ざけていった。


「うわわわっ?!」


「ちょっとおっ、おふぅっ??」


混乱してるけど2人は大丈夫そうっ。

対して私はヤバいっ。普通に枝でボコられるわ、折れた太刀で浅く斬られるわ!


「また小細工! 白打とは舐めるなっ、物塚大豆!!」


「ううっっっ、威吹丸!」


枝に絡め取られていた威吹丸を呼び寄せ、反撃に転ずるっ。だけど風が溜まってないし、既に私、半殺しだわっ。


でもオカブ、構わず仕事して! 目で合図すると、オカブは応えてくれた。


「よいしょ~~っっ!!!」


眷属の蕪の葉の鞭使って、貴子とあずみ意外の全ての捕らえらていた人達を解放して保護するオカブ!


同時に、待ち構えてたらしいサポーターの人達と、鱒子とトドロキが化け柳の世界の囲いを破って突入してきたっ。


「トドロキ! 始末ですっ!」


「うむっ」


弾丸のように水路に突っ込み、地表を伝わせて衝撃波を全ての柳と化け柳の拡がった部位に伝えて砕くトドロキ!!


「がぁああっっ??!!!」


苦しむ化け柳。チャーンスっ! 私はありったけの霊力を風に変え、


「でぃやぁーっ!!!」


折れた太刀ごと化け柳を叩き斬り、続けて竜巻を起こして、破片も残さず擂り潰して消滅させてやった。


サポーターの人達が、崩壊を始める化け柳の世界から、オカブの眷属に保護された貴子とあずみや他の人達を改めてレスキューしだしている。


オカブは増え過ぎた眷属を無造作にパクパク食べて処理してる・・どういう認識なの??


「何とか、なったね。はぁ、しんどっ」


「大豆さん。ざっと私の実力でしたね」


「あんた、来ただけじゃん」


「トドロキに命令しました! 的確に!」


・・まぁ、退治はできたよ。



元世界に戻ると『水道管が破裂したけど、概ね復旧したよ』みたいな体で処理されつつあった。

インチキの水道局のテントに集められた保護された人達は記憶操作を済むと順次解放されていゆく。細かな辻褄調整はサポーターの事後処理部の人達が上手いことやってくことになる。


オカブは別の怪異の世界の養分を吸い過ぎたのと自分の眷属を食べ過ぎて具合が悪くなって、治療部に人達にインチキテントの1つで診てもらっていた。鱒子とトドロキはそれを構ってる感じ。


私は、貴子とあずみと一緒に、黒塗りのサポーターの車の後部座席に座っていた。私の応急手当も済んでいる。交通事故から退院したての子、みたいになってるけど。


「私達も他の人達みたいに記憶消されちゃうんだ」


「つーか、大豆。こんなことしてたんだな。怪我、大丈夫なのか?」


ヤバいもう泣きそう。


「・・うん。何か直す術とか薬とかあるから。あと、今後は巻き込まないように気を付けるから。ごめん」


「大豆」


「大豆」


2人は私の手を取ってくれた。


「大豆が妖怪ハンターでも、宇宙人でも、芸能人でも、気にしないから」


「いつも守ってくれてんだろ? ありがとな」


「うん、うんっ」


泣いちゃったけど、実は、貴子を巻き込むのはこれで5回目。あずみは16回目! あずみ、気付いてないけど怪異を呼び易いタイプ何だよっ。


で、翌日。



「おはようー」


「おう。昨日、駅の近くで水道管破裂したんだってさー、見たかったなぁ」


「おはよ、アレ、大豆。頬っぺたどうしたの?」


「うん、ちょっと木の枝で引っ掻いちゃった」


私は太刀の妖気が強くて1日に治りきらなかった左頬の傷に絆創膏を貼っていた。


そう、こうやって、どうにかこうにか。卒業まで皆といたいな、って思ってるんだ。迷惑になるだろうけれど・・

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