第1戦 化け猪
大豆ちゃんを中編連載用に調整した物です!
右手に巻き付けた勾玉付きの数珠を変化させて、刀身は長く柄は短めの薙刀のような武器に変える。私の家に伝わる威吹丸だ!
「オカブ、誘い出して」
「わかったよ、大豆ちゃん!」
私は式神にしている蕪(野菜ね)の精霊、オカブに命じる。
オカブは『イライラする躍り』を軽やかに踊った。私は長い付き合いで耐性があるけど、
初見の、知性が低く気性の荒いヤツがコレを見ると・・
「ぶんもぉーーーっっ!! 蕪ぅーーっっっ!!!」
化け猪だと思うんだけど、他の動物霊をたくさん取り込んだ怪異が地中からはっきり実体化して飛び出してきたっ。来たぁ。
場所は何てことない里山! 里山だけに山肌のすぐ先に夜景が見えてる(映えてるっ)。
私は伊吹丸に風を纏わせ、危ないからまだ踊ってるオカブを拾って肩に乗せて、牙を伸ばすから注意しつつ、RV車くらいの勢いで激怒して突っ込んでくる化け猪の真上を飛び越えながら回転して伊吹丸を振るった。
ズバァアアッッ!!!
真っ二つ!!
化け猪は左右に泣き別れしながらそのまま木々を薙ぎ倒し、山肌を滑り堕ちていった。
「・・・」
勝った、けど、めっちゃ落ちてってんね。
「いいの?」
「っ! いくないっ」
すぐ消滅するかと思ったら、他の動物霊が混ざってるから消えるまで時間差があったっ。消えながらどんどん街の方に落ちてる! 私は慌てて追い掛けた。
すぐに神主と忍者の中間っぽいみたいな格好した人達が追い付いてきた。
退魔協会のサポーターの人達っ。
「物塚大豆! お前は仕事が雑過ぎるっ。姉を見習えっ!」
階級高いサポーターの人から直クレームっ。カチーン! ときた。
「お姉ちゃん関係無いしっっ。私は右をアレするからっ、左はよろしくです!」
大体サポーターの人達がちゃんと周りを囲うなりなんなりしてないからでしょ?!
間に合わないし、まだ文句言われそうだったから私は伊吹丸で起こした旋風に乗って、右側の化け猪の死骸が木々を薙ぎ倒した山肌を加速して降下しだしたっ。
山肌の先に見えてるのは廃車の解体施設! 最悪、落ちても大丈夫じゃね? 揉み消せるんじゃね? と思わないでもなかったけど、よく見ると施設の建屋に灯りがっ!
今、午後11時半過ぎてますけどっ?
「夜勤? 残業? 間が悪いよっ」
ヒヤッとしてる内に追い付いた。化け猪はすっかり2分の1くらいに削れて毛皮が残ってる肉と骨、って感じだったけど、取り込んだ動物霊達は喚きながら張り付いたまんま。
「無駄に苦しめちゃってごめんね。・・オカブ! 減速できるっ?」
「やってみるぅ~。う~~~んっ、すくすくビィーーーム!!!」
説明しよう、オカブが両目から放つすくすくビームに当たると、植物はすくすく育つんだ!
もももももっっっ!!!!
ビームを受けた、滑り落ちる化け猪の死骸の前方の木々や下草が猛烈に育ち、だいぶ小さくなってる死骸が落ちる速度を削いだ。しゃっ、狙い易い。
「細かくする・・でぇいやーっっ!!」
今度は旋風の多段斬りで小間切れにして、化け猪の右半身を消滅させた。
廃車施設、セーフ!
「ふぅ」
「やったねっ、大豆ちゃん」
山肌の林の向こうで爆発が起こって、左半身の方も止められたみたいだった。
一仕事終わった。
そう、私、物塚大豆、高校1年生は妖怪ハンターだ。呼び方や立場は時代によるけど、記録にある限り戦国時代くらいから悪のお化け絶対殺すマン的なことを生業としている家系なんだ!
・・・・数時間後。
私は旅館みたいな家のお風呂に入っていた。オカブもそこらをプカプカ浮いてる。
「痛テテ、擦り傷沁みるっ」
時間無くて退魔服に着替えられず、制服にスパッツ穿いて駆け付けたもんだから結構ヒドいんだよっ。
「薬湯最高だねぇ~」
蕪、茹だりそうに見える。
夜が明けたら普通に高校に登校しなきゃだし、霊力を使ってガッツリ動いたし、あちこち擦り傷や打身はあるから、お風呂はたっぷり秘薬の入った薬湯なんだ。
これ漢方臭が結構あるから、仮眠を取って朝になったら普通のお湯のシャワーでまた洗わなきゃならなくて、どんだけ風呂入るんですか? って感じだけど、ま、しょうがないよね。
と、脱衣場の方に気配! ヤツだっ。素早いっ、直前まで気配を消して脱衣してたなっ?!
「あっはっはっ! 妹よ! 化け猪ごときにテンパってたそうじゃなーいっ?」
姉、要が手拭い一丁で乱入してきた。
自分の式神、蛇の精霊シロナワを連れてる。
「うっさいな! 入ってくんなっ」
姉はあちこち傷痕はあるけどナイスバディだ。仕事もできる。大学もいいとこ通ってる。彼氏は退魔協会の幹部の御曹司! か、完璧過ぎるっっ。
「要ちゃん、シロナワ、戻ってたんだぁ~。お帰り~」
「オカブただいまぁ」
「我と要の力があれば容易きこと。ふふん」
「妹よっ、めちゃんこ疲れて帰ってきた姉の背中を流しなさーい!」
「は? 嫌っ、私も疲れてるし!」
「何だよぉっ、シロナワ、妹が反抗期になったぁ!」
「ふふん、ヤツはミセスドーナッツのココナッツココアを買ってやれば機嫌は治る。容易きことよ」
「だよねぇ、明日買ってこよぉっと。というか秩父、意外と寒かったねぇ」
姉、要はちょっかい掛けてきたクセに、桶の湯に入ったシロナワと雑談しながらさっさと洗い場で身体を洗い出した。
「・・アイツら、私が小5くらいの感覚のまんまだなっ? ぐぬぬっ」
「でも大豆ちゃん、ココナッツココアドーナッツ好きだよねぇ~?」
「それはいいじゃん! 美味しいしっ」
こんな具合に? 私の凄腕妖怪ハンターとしての苦闘の日々は続いているんだ・・




