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宇宙一小さな宇宙戦争  作者: みなぎ
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八話 星群のヘラ(4)

約2時間後、議長を中心とした会議は一旦終了し、幾人かの政府高官と技術スタッフを残して解散となった。


ただし第一会議室を有するこの宇宙ステーションセントラルエリアからの退出は禁止となり、このエリアは予定通りこの後も40時間は完全封鎖が続けられる事となった。そして14時間後から二回目の報告会となり、そこで調査報告とディテクタ投下の見学会が開催される事となった。


タナーは数時間ほど地球の映像や測定データを見ていたが、丹下はその前に退席していった。その後タナーも休憩を取るため退出し、エリア内にあるレストルームで食事と仮眠ポッドによるつかの間の休息を経た後、再び第一会議室の席に座った。時計を見ると報告会の1時間前だったが、八割くらいの人間がすでに着席しており、中には最初からずっと映像を見ていたスタッフや出席者もいたようだった。


隣席の丹下はまだ来ておらず、会の10分前にやっと入ってきた。丹下が出席者のほぼ最後だったようで、すぐに会議室の扉が閉められた。


「ずいぶんのんびりの出社ね。若い母親には興味ないのかしら?」珍しいブラックなユーモアを含んだ発言であり自分でも驚いたが、丹下は軽く笑って返してきた。


「母さんが元気な姿を見たんで、ドラ息子はもう満足なのさ。これ以上いたらオヤジにぶっ飛ばされちまう。」


はじめは苦笑していたタナーだったが、ふと丹下の言葉に引っかかりを覚えた。


「オヤジ?父親?父親ってだれ?」


丹下は複雑な顔をして黙ってしまう。毒舌家にしては妙だ。なおもタナーは話しかけようとした所で、フザカの声が発せられた。


「皆さん、集まりましたようですので、それでは定刻通り報告会を始めます」


心残りはあるものの、各専門家から出されたレポート画面が会議室中央に映し出されると、技術者であるタナーの意識はその内容に集中し始めた。


衛星軌道からの測定結果であるが、地球の地表温度や海面温度は620年前の戦争以前との変化は少なく、太陽の活動期を考慮しても人類が生活するに問題ない範囲と結論付けられた。また大気圏内の空気成分についても、核および放射能による影響度合いはほぼ確認できずとの事で、ますます帰郷の望が膨らむような報告がなされた。


「渡り鳥が飛んでた時点でわかりそうなもんだけどな」


独り言なのかこちらへの皮肉なのか、丹下の声が聞こえたが、タナーは先程の引っ掛かりをまだ拭いきれていなかった。


一通りの調査報告が出された後、地球の映像が拡大された。地球の自転において昨日とほぼ同じ時間帯になるため、やはり美しい景色や海や大地が映っていた。フザカがヘラの行動スケジュールを映像に併記して表示させるように指示すると、画面にヘラのオペレーション画面が追加された。


「それでは議長、ディテクタ発進の説明を行います。昨日確認しましたヘラのオペレーションスケジュールでは予定通りディテクタ発進の指示が発せられていました。現地では当然1日前にディテクタが発射されていますが、この映像ではあと24分後にそのディテクタ発射となります」


「ああ、楽しみだ。私ではなくディテクタが最初に地球に降り立つのは悔しいがね」

ルイ議長の軽口に所々から笑いが漏れる。


フザカはディテクタについて説明を続ける。ディテクタは惑星や衛星の近接確認に特化したもので、各種センサの他に3次元の詳細撮影が機能として備わっている。過酷な状況でも動作するように改良が加えられてきたもので地球上では十二分に能力を発揮すると考えます、とフザカが説明をまとめた。


そしてヘラのタスクモニタを見ながら発言する。


「みなさま、あと1分で映像場ですがヘラから地球上に向けて4基のディテクタが発射されます。ディテクタは全部で12基ありますので、最初の4基について位置や情報を確認後、必要に応じて追加の数と投入位置を決めて行く予定です。」


おお、と周りから感嘆の声と軽い拍手があがる。地球とヘラが同時に映るモニタに皆の視線が集まる。映像は約1日遅れで地球衛星軌道からこの会議室に届くので、現地ではすでにディテクタは発射されているはずだ。そしてオペレーション映像ではヘラの格納ベイが開いて、ディテクタが発射状態になっていた。



その時である。画像が突然真っ白になった。


「えっ?!」少しぼんやりと考えていたタナーは一瞬、何が起こったかわからなくなった。

「何だ何だ」「通信が切れたか?」「光った?爆発した?」「全部だ!8台のモニタ全部が光った!」


騒然とする会議室だが、白色で覆われたモニタは数秒後にすべてブラックアウトとなった。ヘラの状態を監視していた技術者から悲壮な声が上がる。


「ヘラからのエーテル通信が、すべて消え去りました。映像だけではなく、稼働データすべて、すべての信号情報が消えました」


「通信エラーや通信切断ではないのか?」


「その可能性もゼロではありませんが、多分違います。エーテル通信は本信号の他にサブ2本でディレイを掛けて補完していますが、3本ともすべて同時に消失しています」


「爆発や故障でもないと思われます。先程まで、いえ光る直前までの温度や圧力の値を見ていますが、1秒単位で履歴を見ても急激な変化は確認できていません」


映像の逆再生やスロー再生が始まったが、どの画面も一斉に白く画面が染まるだけしか確認できなかった。


爆発であれば急激な温度上昇による色彩変化や衝撃波による圧力上昇が検知されるし、過去に惑星探査で何度もそれらを検知してきたシステムが搭載されている。実際にヘラが開発されてから5年の間に大小様々なトラブルがあったがすべてクリアしてきた。


そして最終目標である地球に到達し、皆が最注目している最中に事故が起こってしまった。ヘラに関係した技術者達は真っ青になって原因解明に取り組んでいた。


タナーももちろん混乱状態にあったが、見知った技術スタッフが右往左往しているのを見て、かえって冷静になっていた。


「自分より焦っている人間を見ると冷静になれるのね……」


とはいえ何もできないのももどかしい。ふと気になって、少し前まで人生最高の舞台にいたフザカを見ると、流石に顔色は良くないが、それでも冷静に周囲スタッフに指示をしているようだった。


逆に腰巾着と言われているタオの方が焦りに焦って、部下に早く直せと無茶な発言を繰り返していた。いま全力でやってますよ、と若手の技術者が五月蝿そうにタオとやり取りしている。あれでは逆効果だろうに。


「実力がない奴って想定外の事態でメッキが剥がれるよな」丹下が呆れ顔で同じようにタオの方を見ていた。


「普段はしっかりしてるんだけどね。さすがにこの大舞台でこの事故じゃ、普通はああなるんじゃない?」


そこでまた丹下への違和感に気づく。なぜこの男は慌ててないのだ。ヘラに直接関わっていなくとも、技術者仲間であり、あまりに他人事すぎる。


「ねぇ、貴方。なぜそんな態度なの?協力しようとか助言しようとか、こんな状況なのに何も思わないの?」


「ああ、もう辞めるつもりだから」


「え?!辞める?何を?研究所を辞める?今?なぜ?」


丹下の唐突かつ答えになっていないような回答にタナーは再び混乱する。この男は昨日から今に至るまであまりにも言動がおかしい。その不条理な態度につい思ってもいないことを口走ってしまう。


「もしかして貴方、ヘラがこうなること知ってたんじゃない?貴方が犯人だから辞めるの?」


口にした後に冗談にしてはキツイ、とタナーは反省してすぐに謝ろうとした。しかしそれより早く丹下が口を開く。苦笑しながら。でも楽しそうに。


「さすがに犯人は俺じゃない。でも言ったろ、父親にぶっ飛ばされちまうって。気付かれないうちに帰った方がいいって」


「帰った方がじゃなく、引き返した方がいいって貴方は言ったわ。でもどういう事?さっきもそうだけど、父親って誰?何?何のこと?」


「記憶力いいな、さすが才媛。でもこれ以上は言えないな。同じベッドで朝を迎えたとしても言えないな。」


なおも丹下は楽しそうだ。なぜこんな状況なのに楽しんでいる?こちらの冗談を否定しない?その瞬間タナーがひらめく。それはこの男がこの状況を望んでいたから!


タナーはすぐに左手首に備えられた通信デバイスの緊急事態コマンドを開く。そして丹下を拘束するためエマージェンシー指令を出した。


「いや、ホントさすがだわ。この一瞬でそこまで理解して判断して行動できるって、大したもんだ。あのタオとは大違いだ。」


本当に感心した顔でこちらを見る丹下。エマージェンシーは動いていなかった。それどころか気付けば映像モニタだけでなく、会議室すべての通信が停止していた。まるで時間が止まったように。


この第一会議室は緊急時のシェルタや脱出ポッドにもなるように、機密性と独自性と安全性は最高レベルで構築されている。そして緊急時の司令室となるように、エーテル通信の冗長化と暗号化が徹底され、だからこそ地球からの映像を最高機密で受け取っていたのだ。


名前こそ平凡な第一会議室だが、星群の最高技術で築かれた司令室とも言えるこの部屋で、通信エラーどころか通信自体が切られているのはただごとではなかった。


地球探索船の突然のホワイトアウト、そして第一会議室のブラックアウト、両方ともありえない事態だった。そしてさらに会議室の照明まで暗くなっていく。照明機器に伝わるエーテル濃度が低くなってきているのだ。独立電源の非常用ライトが点灯したが、薄暗い状態のままだった。


ここまで来るとルイ議長も困惑した顔を隠せず、フザカも「冷静に、冷静に」などと声を出すが、誰も聞いていない。


どうなっているんだ。何が起きているんだ。皆がみな、焦っている。なのに丹下だけは今も変わらず普段どおりの顔だ。


「エーテル通信がないから緊急事態なのか判断できないし、都市で一番安全な場所がここだから、どこに逃げればいいか分からない。」丹下は相変わず冷静に現状を説明する。


タナーも丹下の説明は理解しても原因が理解できないので何も動けない。多分、丹下が一番この状況を理解しているのだ。だから仕方なしに問いかける。


「もしかしてヘラに異常があったのではなく、この会議室のエーテル通信が切断されたって事?ヘラは無事なの?」


答えてくれないかもしれない、と思ったが丹下は生徒に教える教師のような雰囲気で告げる。


「ああ、そういう考えもあるか。なるほど。でも違う。ヘラは消えた。いや、消されたというべきかな。そしてこの会議室のエーテル通信も消された。それだけ。」


何がそれだけなのか。ふざけるな。ウソでなければとんでもない事でしょうが。沸々と湧く怒りで声を荒げたいところだが、それでも心を沈めて軽く深呼吸して説明を求める。


「やっぱり貴方はヘラに起きた事を知ってるのね。そして貴方が犯人じゃなくても、犯人を知っている。そしてこの部屋に起きている事も知っている。」


隠しきれない怒りをなんとか抑えつつ、目に冷徹な光をたたえてタナーは丹下を見る。その視線を受けながらしばし、ふと丹下が冷静な顔になった。


「今ここで説明するのは避けたい。まだ始まったばかりなんだ。それにこれ以上地球に関わらないなら、話はここで終わる。それだけだ。」


まただ、また意味がわからない。それがすごく腹立たしい。そんなタナーの葛藤をわかってないかのように丹下は静かに言葉を続けた。


「罪を犯して絶縁された君たちが復縁を望むなら、地球はそれを許さない。それだけだ。地球は君たちの独立は許すが、戻ってくる事は許さない。」


「貴方が地球なの?地球代表なの?許す、許さないを貴方が決めるの?なぜそれを言い切れるの?」


徹頭徹尾ふざけているとしか思えない。何が君たちだ。自分は何様だ。また頭に血が上ったが、また冷静な自分も同時にいた。


「そういえばさっき辞めるって言ったわよね。何を辞めるの?同僚としてそこは正確に教えてほしいんだけど」


「ああ、そうだ。忘れてた。それを説明しようとした途端、俺を犯人とか言うから話が逸れてたんだ」


丹下は半ば本気で呆れているようだった。その態度にもムカつく。


「近いうちだけど星群を辞めるから後はよろしく。部屋に全部整理しておいてあるから処分してもいいし好きにして。俺の成果は残していくけど地球に行くには役に立たないと思う」


は?星群を辞める?逃げる……いえ、自害するつもり?そもそも星群に住む人間は生体証明用のエーテル回路を体内に埋め込んでいるため、逃げることはできないのだ。何を言っているのだ。


そう冷静に考えるタナーと、とにかくこいつを捕まえて洗いざらい知っていることを調べ上げたい怒りのタナーがせめぎ合う。膂力では敵わないが、何とか今ここで拘束できないだろうか。「こいつが犯人よ!」と叫びながら飛びかかれば周りも追従してるんじゃないか。そう逡巡する。


とその時、丹下が何かに気づいたようで、軽く手を打った。


「なぁ、タナー。考えてみれば敵対してる訳じゃないし、その判断力はもったいないんで、こっち側に来ないか?俺もあっちと違ってあんたに恨みもないし」


議長やフザカが集まる中央部をあっちと指さしながら丹下が言葉を続ける。


「もしこっち側に来れば、地球に会えるかもよ。ちゃんと正規ルートでさ」


本当に真面目に提案してきているようで、どうやってこいつを捕まえてやろうかとカッカしていた自分が普段どおりに戻ってしまう。仕方ないのでこの雰囲気で質問する。


「こっち側って結局なに?星群の敵ってこと?私に星群を裏切れってこと?」


「んー、潜在的に言えば敵になるんだろうけど、今は別に敵対しているわけでもない。星群が最初の目的通り第二の地球を探すなら逆に味方だ。地球に戻ろうとするなら敵になる。」


「ああ、やっぱり貴方は工作員なのね?他の星群のスパイ?それとも影の組織でもいるのかしら?」


「全部ハズレ。どっちかって言うと指導員。はるか昔の伝道師に近いかな。」


「指導員?何を指導してくれるの?規則正しい生活?」


肩をすくめる丹下。指導内容について答えるつもりはなさそうだった。ならば。


「なぜ指導員がヘラを消すの?」


口の中が乾いた事を実感しながら、一番聞きたかった事を尋ねる。丹下は答えてくれるだろうか。

本人も少し悩んだようだが、しかし今度は答えてくれた。


「これ以上の接近を辞めるように指導したのさ。何度も言うように死にそうなくらいに大きな怪我を負わされた母親は長い療養生活の結果、今は退院して元気にやってる。犯人のドラ息子を許すわけにはいかないが、金輪際関わらないなら罪は問わない。でももし戻ってこようものなら叩き出す。そう言ってる。」


今までで一番真剣な顔で述べる丹下。タナーも少しずつ体温が下がっていくのを実感した。冷や汗を感じながら、それでも問を続ける。


「じゃあヘラを消したのは、文字通り叩き出したってこと?」


「イエスだ。約束を破ったドラ息子が家に近づいたから、怒ったオヤジが首根っこ捕まえて叩き出したって事。これ以上近づくなって脅しだろ」


「この部屋がブラックアウトしたのは貴方からの指導って事?何を指導したいのかしら?」


「地球に近づくなって事。それだけ」


肝心な所は全ては話してくれないが、嘘はついていない。彼もヘラを消した連中も真剣だ。タナーは直感で感じ取っていた。


「私がその指導員側に付けば良いことがあるの?地球に行けるって事?」


「良いことは無いな。地球に行く事が良いこととは思えないし。でも何も知らずに叩き出されるより会ってくれるだけでもマシか。」


また意味がわからなくなる。今から地球に向かっても30年はかかる。だから良いことじゃない、という事だろうか。


「今までの話をまとめると、貴方は地球のエージェント、って事?」


「いや、そんな偉そうな身分じゃない。もしかしたら俺の知らない地球のエージェントとやらが本当にいるかもしれん。が、それは俺じゃないし会ったこともない」


本当だろうか、ただこれも嘘を言っているような感じではなかった。それに何か自身も諦めが入っているような自嘲気味な雰囲気もあった。


この男はさっき、伝道師と言った。あまり詳しくないが、記憶を手繰り寄せる。教会に命令されて布教のために危険な海を渡って未開拓の土地に行く、だったような。


となるとこの男は地球に命令されて宇宙の海を渡ってここにいるのだろうか、そして逗留先で地球には戻るなという教えを守らせるのだろうか。うん、今の段階では納得行く推察だ。


少し悩む、本当はもっと考える時間が欲しかったが、しかし今決断しなければ多分もうチャンスは無いだろう。直感だが人生のすべてを掛ける瞬間だと決心したタナーは小さな声で、しかししっかりと意志を持って答える。


「貴方の仲間になるわ。できる限り協力する」


へぇ、と一瞬バカにしたような顔つきをした丹下だが、すぐにこちらの本気を感じ取ったらしく、表情を変える。


「本気か?」


「ええ、本気。どうせ地球に関わるこのプロジェクトから抜け出せない立場だし、今の時勢を考えたら今回の事故だけでは星群が地球に向かうのを止められないと思う。そちら側にヘラを消すだけじゃなく、この部屋のエーテル通信まで止められる力があるなら私個人の力では対抗できない。……となると私の未来はロクな目に会わないし、それもきっと私自身に何が起きてるか分からないまま不幸になると思う。ならば何が起きてるか知りながら死にたい」


すらすらと言葉が出る。正直な気持ちを伝えるだけだから淀みもなく言い切れる。丹下も納得してくれたようだ。


「心から君を称賛する。さすがだよ、たったちょっとの時間で状況を把握し決断する。さすが生体テラマテリアルの申し子だ」


「お褒めの言葉、ありがとう。素直に受け取るわ。で、答えは?貴方が答えるの?それとも上司でもいるの?」


「上司……は一応はいるが許可はいらない。ただ俺の一任でどうこうできる話でもないし、君がまだ信用できると決まったわけでもない。だから試験というか、面接がある。それを受けてくれ。その面接を受けた後、最終的にどちらに立つか判断してくれればいい」


「わかったわ。面接がいつになるか決まったら教えてね」


「このイザコザが片付いたら、面接官が直接きみに会いに行くさ。のんびり待っていてくれ。ちなみにエーテル通信ももう少しで回復する」



その言葉の通り、数分後に会議室のエーテル通信が回復し、照明が明るく周囲を照らした。混乱から回復した議長やフザカがいろいろと指図していたようだが、もうタナーの頭には何も入ってこなかった。


立場上、この会議に出席していたが意見を求められる事もないはずで、実際に何一つ質問される事もなかった。騒然としている会議室の中でタナーは、昨日からの出来事、丹下の言葉、そしてどうやったらヘラを消しこの部屋のエーテル通信を止める事ができるのかを頭の中で考え続けた。しかし最後の2つはどうしても、手段も方法も考えつかなかった。それだけに丹下と彼が所属する組織の技術力に畏怖したが、それ以上に解明したいという欲求が強いことを自覚した。結局自分は研究者なんだなと自嘲しながら。



紛糾に紛糾を重ねた会議室だが、結局はヘラの確認チームと部屋に起こった通信障害の探索チーム、そしてセキュリティ調査など複数のチームが技術スタッフを中心に結成され、原因解明を図る事になった。


またそれとは別に、記録に残ったヘラの地球映像についての取扱いと、今回生じたヘラ紛失、および会議室の通信切断を事件としてどう取り扱うかを政治側のチームで対策する事となった。


丹下もタナーもチームメンバーにはならなかったが、調査対象として所在の明確化および守秘義務の処置を受けた。

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