エピローグ
友人から10年ぶりの映像レターを受け取った丹下は、バーナード星系の自宅でそれを再生していた。
「おう、丹下、久しぶり。ベロボーグ事変、お互いに生き残ったようで何よりだ」
画像には制服姿の波木が敬礼姿で映っていた。何となしに丹下も敬礼を返す。
「あれだな。こっちから一方通行で話しかけるのは、うん、気恥ずかしいな。まあ、あれだ。とりあえず、ベロボーグでの諜報活動、お疲れ様。お前さんのお陰で成功する事が出来た。15年前の約束、やっと果たせてホッとした」
こっちこそ、波木のお陰で完璧に計画をぶっ壊せたよ。ホント、航路破壊は最高のタイミングだった。ありがとうよ。丹下も映像の波木に語りかける。
丹下も波木も特殊な環境と体質により、エーテリオンドライブの次世代を担う宿命を持っていた。無人エーテリオンドライブ航路を何も問題なく使える丹下は、その特殊体質を使って星群内での工作員として生きる事を選んだ。
波木も姉も大反対したが、丹下は当時も今も後悔はしていなかった。そういえば姉さん元気かね、ふと思った丹下に映像が答えをくれた。
「あ、あー、あのな、丹下、俺、結婚する事にした。」
はぁ? いきなり話が飛んだが、まあいいや、おめでとう。そりゃ良かった。顔が真っ赤だな波木、お前そんなキャラだっけ?
「えー、あー、相手なんだが、あー、お前の姉だ。」
はああああ!?? え!ええ!まてまて。なんでレイコ姉さんと丹下が……接点あったっけ? あー、小さい頃、姉さんと丹下と一緒に遊んだっけか……。こちらの声が聞こえていないとわかっていながら、丹下は映像の波木に問いかける。
「まあ、その、うん、そういう事で、この後レイコさんからも映像がある。あります。から、よろしく」
焦りまくる映像の波木を見ながら、丹下は逆に落ち着き始めた。あー、はい。よくわからんが、お幸せに。そしておめでとう。しかしレイコ姉さんと丹下がねぇ……。
その後、波木以上にしどろもどろで顔が真っ赤なレイコの報告映像を観た丹下は、少々うんざり気味になった。姉さんってこんなに純情だったんだなと思いながら……。




