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宇宙一小さな宇宙戦争  作者: みなぎ
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二十四話 星群の裏切者(2)

「星群はヘラやヘカーテに絶大な自信を持っています。ヘラが地球側の攻撃で消失させられた、なんて思っていないですよ。」


「え、でも政府発表では太陽系のテロリストERがヘラを攻撃したって……あれは地球側の戦力を推察していたんじゃ……」


「いえ、だって元々地球はまだ戦争の爪痕が残っているだろうから、地球を占領後に修復する必要があるってカムラ教授のジャーナルに書いてあるじゃないですか。そもそも地球が環境回復していることすら知らなかったんですよ。地球が星群に対して軍備してるなんて考えていません。」


「そうかしら……。でも可能性の一つとして作戦本部は提案していたとは思うけど。」


「ああ、確かにそうですね。ただヘラもヘカーテも元々は別の星群領域に侵入して戦闘しながら情報を収集する目的で開発されたものです。星群より地球の軍事力を甘く見ているのは確かです。」


「そうね。私も地球側がヘラを消失させる程の技術や戦力を持っているなんて思っても見なかった。地球にとって星群は敵であるはずなのに、星群は地球を敵とみなしてなかったものね。ヘラは安全を担保しないまま敵地に入って本拠地まで一気に侵入って、考えてみたらまともな作戦じゃないわよね。」


「地球を2つの意味で敵とみなしてなかったんでしょうね。地球は星群を敵と考えていなかった、ヘラの戦闘力は地球の軍事力より上だと思った。でも全部机上の空論なんです。」



アオリからの説明を受けながら、タナーはカムラの事を考える。カムラが責任者を務めるプロジェクトは破綻寸前に近い。もともと無理がある計画だったのに、ヘラ消失をきっかけに更に納期が短縮された。また作業者の状況を酌量せず、出来ないと言わせない進捗会議。結果、未完成なのに出来たことにしてしまう各チーム。


「昔と一緒なんですよ。徹底した成果主義なので、成果を捏造する人間が出てしまうんです。カムラ教授も他人からの搾取や捏造で出世してきました。だから教授のプロジェクトも搾取と捏造で成り立っています。そのうち致命傷になると思います。」


「じゃあウラケ先生も同じ人種?先生が教授に報告している成果も捏造が入ってるって事?」


「はい、残念ながら。でもウラケ先生はわざと捏造しています。カムラ教授が近い将来、粛清されるのを見込んでますので。」


苛烈な本性が見えてしまったカムラならともかく、長年に渡って一人の人間として尊敬していたウラケもそんな人間だったのだろうか。


「違いますよ。ウラケ先生は本当に実力があるんです。でもカムラ教授に一方的に搾取されている。教授は部下の功績を全部自分のものにしています。でも、だからこそ失敗した時に部下のせいに出来ないし、待つのは粛清です。」


なぜウラケがカムラに酷使されていても飄々としているのか理解できた。数ヶ月後のヘカーテもまた失敗するだろうが、その時にカムラが責任を取らされるのだろうか。


「いえ、ヘカーテ失敗の責はフザカさんが負わされます。タオさんも道連れかな。カムラ教授の粛清はその後の有人プランで失敗した時です。」


そういえばフザカもまた、他人に失敗を押し付け、出来もしないことを出来ると言って出世した人間だった。彼のせいで何人の技術者が心を壊して辞めていったのだろう。そんな彼もとうとう終わりが見えたようだ。


「ところで先輩、ウェアラブルマテリアルは予定通り完成したんですか?」


「ええ、前の形では人が入る空間に保護ゼリーを入れてエーテリオンドライブによる負荷を分散させてたけど、今回は完全にスーツタイプとなったわ。パイロットをこのウェアで包んで保護すれば、無人宇宙船の中でも人間が生存できるデータも取れた。これで今まで以上の速度で有人飛行が可能となったわ。」


ここ数年の実験がいよいよ実を結び、この成果が上に認められれば自分の研究室を持つことも夢ではない。タナーは出世自体にあまり興味はなかったが、自分の研究を自分のやりたいようにやりたい、というのが最終的な夢だった。


熱を込めて自分の研究成果を話すタナーを、アオリは目を少し細めて見つめていた。

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