十八話 ヘラ VS 地球防衛軍(3)
「ササ司令、第一防衛隊から、目標ヘラに関する戦闘データが届きました。それに伴い、司令部からプランBに則って第二防衛隊の攻撃を定刻より開始するように、との事です」
レイコから緊張を伴った報告を受ける。また前面の複合モニタに、ヘラが第一防衛隊所属の戦闘機オルキスを破壊した際に得られた映像や情報が羅列された。
「第一防衛隊からヘラは有人操作であるとの情報を受けており、司令部からその情報信頼度が高いものであると保証を受けております。しかし本当に有人なのでしょうか?」
「もし有人なら、この後ヘラが行うであろう迎撃方法の予測が難しくなるから厄介だね。まぁうちの7人なら問題ないだろうけど。ただ何人乗ってるんだろうね、このヘラ。地球の衛星軌道に到達してから戦闘中の現時点まで不休不眠だとすると、もう40時間はぶっ通しで働いている。観察要員が一人、戦闘要員が一人の二人乗りかなぁ」
「もし人が乗っているのなら、投降するように伝えるのも手では?このまま戦闘を継続しても、一時的に離脱に成功しても、味方の星群が来るまでヘラ単騎で持ちこたえることは不可能です」
「昔は鉄砲玉とか言われてたんだけどね。たぶんヘラは星群が用意した最高の鉄砲玉だと思う。説得も無理だろうし、初めから戦闘プランを組み込んでたとしか思えない武装だ。そしてヘラは戦って負けても良いんだよ。戦った相手の情報を星群にとどけるのが最大の役目だろうから。降伏することはまずあり得ない」
ササはため息をつきながら言う。
「こちらが初手でエーテル通信を潰した時点で、彼…いやヘラは女神の名前だから彼女かな?彼女の頑張りは無意味になってしまったんだけどね」
◇
「さて、そろそろ時間だ。ヘラが有人だろうが無人だろうが関係ない。当初のプランどおり、スパイダー6機にてヘラを無力化する。グレビレアとアイバンホーは指定位置にて待機。では作戦開始」
「はっ、プランB、定刻通りに開始致します」
レイコから第二防衛隊に作戦実行のコールが伝えられる。第二防衛隊司令戦艦ロングリーフはヘラと火星との航路を遮る位置に移動しつつ、迎撃特化型の移動型宇宙基地アイバンホーが8機、その周りに陣取り始めた。そしてロングリーフのカタパルトには波木が乗るグレビレアがスタンバイ状態となった。
同時期、ヘラから見て第一防衛隊と正反対の位置に待機していた6機の攻撃型宇宙船スパイダーが作戦行動を開始した。パルスエンジンが巡航から戦闘に切り替わり、一気にヘラに向かって吶喊した。




