十三話 星群の大義
アルタイル星群の世論は、何度も放映される地球のかつての映像と、その地球を現在暴力で支配する地球反乱軍ERを交互に見せられる事で、ER殲滅へと誘導され続けていった。臨時国会が開催され特別軍事費の増加が承認され、地球侵攻を掲げる与党の支持率も過去無いほどに向上していった。
ただ悪辣とも言えるのが、「罪はERにあり、星群に大義名分と正義あり」という世論形成と政府発表であった。論客や野党からは、600年前の地球国家憲章や不可侵条約などの理由から、地球侵攻の反対意見出されたが、しかし地球への憧憬を刺激された大部分の民衆や政治家には効果が薄かった。
世間とは距離が離れている研究所でも、一部の若手研究者を中心に、地球侵攻は是か非かの議論があちこちで聞こえるようになった。若手に類するタナーも侵攻に賛成か反対か何度も問われたが、丹下に諭されたこともあり、表面的には中立という立場でいた。
ただヘラ消失事件からすでに1ヶ月が経とうとしていたが、丹下の言っていた面接官からの接触は未だになく、流石に訝しむようになり始めた。そして丹下は今まで通り爆轟実験研究所に所属し勤務しているようだが、事件後は万全を期すためタナーから一切の連絡は取るつもりはなかった。それゆえ世間の予想しなかった激しい変化に対して、何も行動していないような地球側にやきもきする気持ちも多々あった。
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もう一つの予想外だったのが、カムラ師の初めて見る仕事ぶりであった。カムラは侵略計画を左右するテラマテリアルの開発責任者に就き、50人を超えるメンバーを総括する立場になった。
個人的な会話しかしてこなかったカムラを温厚で思慮深い性格だと思っていたが、実際に見るカムラの采配は相当冷酷で独裁的で苛烈だった。あまりに想定外のカムラを知り、何度もタナーは何かの間違いではないかと思い悩んだ。
求める結果や成果が出ないチームやメンバーに対して、カムラがあまりに横暴で人間性まで貶める発言をするたびに、自分が10代の頃に優しい言葉を掛けてくれたカムラと同じ人物とは思えなかった。幸いというべきか、タナーの所属するチームは順調とも言える結果を出していたが、それでもチームに対して暖かい言葉はなかった。
初期はなるべく進捗会議に出席していたタナーだが、次第に必要以外の集まりには参加しないようになっていった。直属の上司でありチームリーダでもあるウラケが会議出席後に回してくる議事録すら、読むのがつらい日々になっていった。




