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カルミル村編 第八話 ミシアの気持ち

 赤龍討伐の宴が終わり、片付けを少し手伝った後、疲れてすぐに寝ちゃった私は、いつもより遅めに起きてしまった。

 そうだ、コウシにお礼を言いたかったんだ。結果的には何もされてないけど、大事なのは何を思って行動してくれたか。きっとあの人は名前も知らない私のことを気遣って……いや、初対面の時から私のことを気遣ってくれていた。言葉遣いは荒かったけど……。

 とにかく私は彼にお礼がしたい。……ついでに……いやいや。流石にあいつとは……。


 お客さんだからマレンダさんのところにいるよね。そんな急がなくてもいなくならないし、何より私の寝起きの顔がひどすぎる。

 冷水を浴びに食べ物屋の裏までいき、顔を洗う。よし。これでバッチリ。

 私はマレンダさんの元に向かった。



「マレンダさーん。コウシってどこの部屋?」


 私の問いにマレンダさんは驚きこまったような顔で


「あら、コウシくん?コウシくんならついさっきこの宿を出たわよ。今はまだ水浴びしてるんじゃないかしら。」


「え、もう出たんですか!?まだ間に合いますかね……?」


「うん、本当についさっき出たからねー。門のところで待ってたら?」


「あー、そうですね。そうします」


 マレンダさんから衝撃的なことを聞いたあと、少しだけ急いで門のところまで行く。

 私がそこに着いた時はコウシの姿はなく、門の先の一本道にもいない。まだ、出発はしてないのだろうか。

 じっと待ってることができず周りをぷらぷら歩く。

 

「門から少し離れた方がいいかな……」


 なぜか、そう思って少しだけ離れる。

 

 そんな無駄なことをしていると、水浴びの方からコウシが一人で歩いてくるのが見える。 

 今までも緊張してたけど、もっと緊張してきた。

 時間が経てば経つほど彼がここにいる時間が短くなり緊張が加速していく。

 声が出ない。足が動かない。


「ほら!しっかりしな?私が言ってあげよっか?コウシくーん!!」


「ちょ、ちょっと!お姉ちゃん!!あ、コ、コウシ……その……」


 コウシはお姉ちゃんの声が聞こえたのか私たちの方を向いている。


「ほら!早く言わないとコウシくん行っちゃうよ?」


「え、さっきからなんなんすか?話あるなら聞きますし、そんなに急いでないですから……」


「あ、あの……」「ミシアが一緒に行きたいってさ!!」


「行きたいって、俺に着いてくるんすか?」

「いや、あの……その……ちょうど村出たかったし……タイミングいいかなぁって……。コウシだからとかじゃないからね。うん」


「あぁ、そっすか。まぁいいっすけど……」


「だってさ!」


「う、うん……」


「準備とかいいんすか?多分その気でここにきてないっすよね?」


「あ、そ、そうだね。ちょっと待っててくれる?」


「うす」


 やばい。ちょっと前から村を出たいとは思ってたけどこの人と?なんで?話かけ……れはしなかったけど、それで緊張は無くなると思ってた。でも、話してる最中も話し終わった今も緊張っていうか、心臓がどくどく言ってる。止まって欲しいのに。声を出すとそれら全てが震えて出てしまう。

 まるで好きみたいじゃない。あんな人のこと好きになる訳がない。ちょっと優しくてかっこよくて寛容で適当で……なんかどんどん出てきちゃう。もう考えないから。あんな奴のこと……。


 そんな家から離れてないおかげですぐに着けた。


「えと、とりあえず武器とお金と……何着てっこかな……」


 色々考えた結果、いつも愛用してる長剣と自分の持ってる全財産二十万円を持って服はなんとなく一番お気に入りのにした。

 神器持ってないのはちょっと不安だけどそのために後三年も待つのはめんどくさい。

 私の剣「精霊姫」があれば十分か。


 旅だから着替えとか色々持とうか考えたけどそんな荷物を積む時間もないし、コウシだって持ってないから私もいらないかなぁって理由で持たないことにした。

 買えるしね。


 意外と身軽な格好で家を出た私は急いでコウシのところまで行くと何やら仲良さそうにコウシとお姉ちゃんが話していた。さっきもなんか顔見知りな感じだったし知り合いなの?どこで?


「お、おまたせ……」


「おう。じゃあ行くか。セシアもありがとな。世話なった」


「はーい。行ってらっしゃい。元気でね。ミシアも色々頑張ってね!応援してる」


「うるさいなぁ。いいからもー」


 

 私たちはお姉ちゃんに見送られながら門を出た。

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