甘酸っぱい缶コーヒーと脳筋ツインテール
脳筋ツインテール少女シリーズ第2弾――――!!
ツインテールの少女はぼうっと眺める。
彼女の行く先で繰り広げる男女の応酬。なにやらプルタブの開いた缶コーヒーを押し付け合っている。
ごくごく平凡な高校生・平野普遍。
隣の席の美少女・砂尾仁馴乃。
部活に所属しない二人はひょんなことから一緒に下校するようになり、今日もまた変わらない放課後のはずだった。
「ねえ、平野君。今日は雪が降るんだって。今のうちから缶コーヒーでも飲んで温まったほうがいいんじゃない?」
「そ、それはそうですけど……その缶コーヒーは砂尾仁さんが口をつけたものですし」
「ごめん……そうだよね、私の飲んだやつなんか汚くて嫌だよね」
「そういうわけじゃないです、けど」
「でも、お金もちょうど使いきっちゃったし他のは買えないでしょ? 平野君、マフラーも手袋もしてないし風邪引いちゃうよ」
「僕なら平気です。こう見えて意外と頑丈なんですから」
「だめだよ、万が一風邪でも引いちゃったら……学校、来れなくなるじゃん」
「まあ、テストも近いですし授業に置いていかれるのは困りますね」
「だったら、やっぱりこの缶コーヒーあげる!」
「いやいやいや、だめですってば!」
押し付け合う二人はすでに缶コーヒーが冷えていることに気づいている。
もう一本の缶コーヒーがさえあれば。
二人一緒に温まることができる……のではなく。
平野は彼女と一緒にいる時間が増えると期待し、砂尾仁はあわよくば間接キスができるのではないかと頬を染める。
「「もう一本あれば……」」
二人の願いが重なる。
そこに、すいーっと少女が間を通り抜けた。
ツインテールの毛先が二人の鼻の下をくすぐる。
――――轟音が炸裂した。
ドゴオオオオンンとすぐ近くで衝突事故でもあったかと思ったら、自動販売機が見るも無残にひしゃげていた。
ガタンゴトンと、無数の缶コーヒーが取り出し口から溢れ出す。
唖然とする二人に。
ツインテールの少女が一言。
「え、殴ればよくね?」
◇犯罪者、脳筋ツインテール―――――‼