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2話 『魔法知る』

  部屋に入ると一人の男性がいて論文のようなものを読んでいた。金髪(きんぱつ)で近くに剣を置いていて見るからに危なそうである。

  年齢は18,9くらいだろうか、俺より少し年上なのは間違いない。

  

 「あの、今日魔法学の実技の補修で来た金切ナギトです。よろしくお願いします。」

  

  年上との会話は慣れていないが、この人は怒らせたらやばそうなのでカタコトながらも挨拶(あいさつ)はした。

  するとその男はこちらをじろっと見て、

  

 「お前が魔法が使えないというナギトだな。」


  といい、持ってた論文を置いた。その声は意外とやさしめだった。

  はい、と答えるとその男は

 

 「俺は『小野リューヤ』というものだ。リューヤ、とでも呼んでくれ。呼びにくいんだったらリューヤさんでいい。それで早速なんだが、ナギトはなぜ自分が魔法が使えないか考えたことはあるか?」

 「…え?」


  いきなりの質問にびっくりした。初対面の人に唐突(とうとつ)に質問されたら誰だって困るだろう。ましてや、少し見た目が怖そうな人だとさらに。

  

  それよりなんで魔法が使えないか、そんなの才能の話だろう。単純(たんじゅん)に俺は魔法に向いていないだけだ。

 

 「そうですね…。魔法が使えないのは単に俺の魔法の才能がないから、とかですか?」

 「ま、そう考えると思ってたさ。俺は魔法が使えないのは、力不足が原因ではないと考えてる。魔法なんて1年学校で修行してれば普通出来る。5年生なのにできないとか、そこはもう才能とかの話じゃない。」


  といってきた。つまり俺は普通ではない『特例(とくれい)』なのか?生まれつきの体質とかか?

  でも小さいときは魔法が使えてたのは一体どういうことだ?


 「まず、魔法はどうやって使うか知っているか?」

  

  と聞いてきた。


  魔法は生まれながらに持っている魔力を使って、小さいころ国からもらった(つえ)や道具屋で売ってる剣や銃などに通して使うものだ。普通は杖だが、たまに剣や銃、軍手などもいる。

  多分リューヤさんは剣を通して魔法を使うのだろう。しかし俺は、しっかり魔力を持っているが、なぜか杖を通しても魔法が一切出てこない。

  

 「魔法は魔力を使って杖などを通して使います。しかし、俺は杖を通しても魔法は出てきません。

小さいころに火、氷、風以外のなにかの魔法は使えてた気がするんですけど…、確かちっちゃな魔法だったと思います。」

  

  なるほどな、とリューヤは静かに言い、おいていた論文をとった。何やらとある文をじっくり眺めている。

  ナギトはどうすればいいかわからず少しだけ見える論文をのぞいてみた。ここからじゃよく読めないが、魔法がどうたらこうたらとか書いてあった。

 

 「まず、この文章を読め。魔法の話が書いてあっから。」 

  

  と、持っていた論文を渡してきた。ナギトは『魔法の基礎はわかるのだが…』と思いつつも、とりあえず読んでみた。

  そこにはこの学校で習ったことと同じような魔法の歴史が書かれていた。

  

  約300年ほど前に魔法を最初に使ったのはこの学校を作った『ウォルター・ブレッド』である、学校を作った後、彼は自分の魔力をすべて使い世界中の人に分け与えた。

  魔力とは魔法を使うのに必要な力。魔力は体を休めたり食事をしたりして回復する。なくなってしまうと死んでしまうらしい。

  もともと誰も魔力など持ってなかったが、神から与えられたのか分からんがウォルター・ブレッドには存在しており、彼が分け与えたため俺やクロスなど世界中の人が今魔力を持っている。

  ちなみに魔法が使える人を『魔導士(まどうし)』という。

  

  次の文には魔法の種類が書かれていた。

  魔法は主に火、氷、風に分かれている。生まれた時からこの三つのうちどれかしか使うことができない。ただ、しっかり学べばすべて使うことも可能だ。またこの3つ以外に回復やテレポート、体力増加など攻撃系でない『能力魔法』というのもある。

  さらに最近では研究の成果もあり、火、氷、風以外の魔法も存在するといわれている。

  魔法を使えば、壁を作って攻撃を防いだり、エネルギー弾みたいにして飛ばしたり、地面などを通らせて相手を攻撃できたりする。

  また、戦術士は魔力で魔法を具現化し、動物を作れたりもできる。それでできた動物を『戦霊(せんれい)』というらしい。

  

  そんな学校で習った基礎知識のようなのを見ていると、見慣れない文字が下のほうにあった。

 

   「……ノ、零術魔法(ノーレット)…?」

 

  ナギトは不思議に思った。

  そんな言葉は習っていない。

  その言葉は他と違く太字で書かれていた。明らかに異質(いしつ)だ。

 

 「初めて聞くだろ、その言葉。これは今では表側では習わない極秘の言葉みたいなやつだ。」


  リューヤはそう言い、自分の剣を眺めていた。『なぜリューヤさんは極秘(ごくひ)のことを知っているのか?』と気になったがナギトは論文を読み続けた。

  見た感じ、

  

これは特定の人しか使えない魔法

  生まれた時から使えるか使えないかが決まる

  遺伝(いでん)などは関係ない

  今世界に何十万人も魔導士がいるが、零術魔法(ノーレット)を使えるのが約5人ほど

  零術魔法士は火、氷、風などの魔法がつかえない

  零術魔法(ノーレット)には、『電気、毒、吸収』がある

  その三つのうち、どれか一つしか使えない

  電気は杖などの道具がなくても使うことができる

  毒はすべての魔法を貫通、溶かすことができる

  毒は電気に強く、電気は毒に強い表裏一体の関係である

  吸収はすべての魔法を吸収し、杖が記憶していつでも使えるようになる

  

  など、さまざまなことが書いてあった。初めて聞く言葉たちに頭が混乱(こんらん)しそうだったが、零術魔法(ノーレット)がすごく気になった。どうしてだろうか。初めて聞くからか?

 

 「この世界には無属性(むぞくせい)や水など3つ以外の魔法も存在する。電気や毒が使えてもおかしくない。ただ、零術魔法(ノーレット)という言葉を知っているのはごく一部の人だけだ。」

 「なんで、零術魔法(ノーレット)は極秘になっているんですか?」

 

  俺が最初に思った疑問(ぎもん)だ。極秘ということは何か大きな理由があるのだろう。もしかすると希少性が高いため、なんかの実験に使われたり…。


 「それは…。」

 

  といってリューヤさんは一瞬悲しげな目をし、


 「過去に、零術魔導士が大きな罪を(おか)したからだ。そこから零術魔導士はよくないものと世間に認識され、この言葉自体が廃れていった。学校で教えてもらわないのもそれが理由だし、まるで生まれつき優劣がついてるみたいに見えてしまうからな。」

 

  さみしそうな声で彼は答えた。学校で教わらないのはそういうことか。

  ナギトは何かに察しこれ以上聞くのをやめた。

  ただナギトはもう一つ気になったことがあった。

 

 「もう一つ質問したいのですが、実技の補修なのに勉強していいんですか?」

 

  今見たのは自分には関係ない特別な魔法の話だ。それを読んだからって不思議な力が出てくるわけではない。今すぐに実技の練習をしなければいけないのに。論文を読んでいる(ひま)なんてない。


「実技の補修は必要ない。なぜなら、お前はもう魔法がつかえるからな。」

  

  (え? 何を言っているんだこの人は…。ただ論文を読んだだけなのに…。)


  もしかしてこの論文に秘密があるのか?読んだら魔法が使えるようになるとか。

  するとリューヤはナギトの持っている論文を指さし


 「その文章の最後の段落(だんらく)を見てみろ。」


  といった。


  なになに...

  零術魔法(ノーレット)は特定の方法でないと使うことができない


  と書かれていた。なんか新しく書かれたような文字でひときわ目立ってた。

  これを読んでどうしろと?、と俺は思った。

  すると、すぐにリューヤさんは


 「昔魔法が使えてた頃と今との違いは何かあるか?」

 

  と言ってきた。


  確か昔は・・・

  右手ではなく左手で杖を握っていたな。あれ…?

  

 「そういえば魔法が使えなくなったのは…右手にしてからのはず――。」


  もしかして…、いやそんなまさか。

  察したか、という顔でリューヤは

 

 「俺の予想だと、ナギトは零術魔導士かもな。」

  

  予想した通りの言葉が飛んできた。

  

  零術魔法(ノーレット)は特定の方法でないと使えない

  俺は左手から右手にしてから一切魔法が使えなくなった

  昔に火、氷、風以外の魔法を使っていた

  確かに辻褄(つじつま)は合うが…。

  

 「いろいろ聞きたいことがあるかもしれないが俺も時間がない。今すぐ練習場にいくぞ!」


  リューヤは自分の剣を握って出発の準備をしていた。


 「え!?今からですか??」


  当たり前だ、といいリューヤは部屋を出た。


  さっきまで魔法の話をしてたのに急に練習とかこの人は変わってるなぁ、と思い俺も杖をもって部屋を出た。

  

  

  2人で廊下を歩いていると、急にリューヤはナギトに質問をした。


 「そういえばナギトはこの町、プルテールが好きか?」

 「え、そうですね……、」


  唐突な質問だなー。今度はプルテールが好きか、か。

  俺は――


 ~物心がつく前、俺は母親を亡くした。その後父親と一緒に各国を渡った。ほかの国の人にとっては俺が珍しかったのだろう。金髪小柄で碧眼(へきがん)。俺の見た目だけでもこれだけの情報がある。ただ、俺はとある一点が明らかにほかの人と違かった。

  それは、『左利き』というところ。左利きは右利きと比べると少ない。ただ、それだけではそんなに目立たない。

 

 「左利きはこの国の敵。」

  そんな言葉を何回聞いただろうか。言われるたびに心は傷つく。本当の自分を否定されているみたいだったから。

  とある事情(じじょう)で左利きはどの国でも避けられている。大人だけでなく小さい子、男女などは関係ない。すれ違う人全員が敵に見えていた。


 「そんなこと関係ない。俺はナギトと一緒にいたい!だって俺たちは友達じゃないか!」

  

  そんな(ひね)りもなんもない、思った言葉をそのまま言ったような感じだが、誰も受け入れてくれなかった俺にはどこか(ひび)いた。

  初めて友達になってくれたのはクロスだ。誰かと話して笑って楽しむ。そんな楽しみも与えてくれた。    

  その後多くの人と出会った。友達も多くなってきた。どんな人も俺を受け入れてくれた。こんなに俺の心に優しいのはプルテールの人だけだ。俺に多くの出会いをくれたこの国が傷つくところなんて見たくない。死ぬ気で戦って国を守っていたい。~

  

 「俺はプルテールが好きです。この国を守りたいです。」

 「…だろうな。やっぱり俺と同じだ。一応俺もこの学校卒業生だからな。」

 

  この学校の卒業生ということはプルテール出身か。

  ただ遠いところから来たらしいから、もしかしたらすごい魔導士なのかも。

  それに、


 「その剣の模様って…」

 「これか?もちろん国王からもらったものだ。」


  リューヤさんの剣に書いてある模様(もよう)に見覚えがあった。

  模様については図書館の書物に書いてあり、確か国を救ったり大きな大会で優勝した時に国王から書かれるやつだ。


  いままで見たことなかったし存在するのかもわからなかった。

  そんなものを持ってるこの人は一体…。



  学校から少し遠くにある王宮の一室。

  国王は窓から外を眺めていた。眩しい日差しがカーテン越しに差し込んでいる。

  

  ドアをノックする音が聞こえた。部屋に入ってきたのは屈強(くっきょう)な大男だ。

  国王はすっと外を見ている。大男のほうを見ていない。


 「国王様。ウォールト学院の校長からの手紙です。…国王様?聞こえてますか?」

 「ああ、もちろん聞こえているよ。それより、少し気になったことがあってね。聞いてくれるかな?少しだけ面白い話がしたいんだ…。」

  

  国王は振り返り笑みを浮かべた。19歳ほどの若い国王だが、身長は大男並()みに高い。


 「気になったこと、ですか。それは一体…。」

 「僕ってこの町で一番偉(えら)いよね。それなのに僕は『町長』ではなくて『国王』って呼ばれるんだよ。おかしい話だよね。」

  

  そう言って少し笑った。

  大男は(ひざ)を床につけて考えた。なぜそう呼ばれるのかを。


 「答えは簡単さ。君はこの国のものじゃないから知らないだろうけど、この町の名前はプルテールなのさ。国の名前と同じだろう?それはこの町が最初プルテールという小さい国だったからだ。そこから周辺の小さい町を国の一部にした。いわばこの国の首都、と言ったら分かりやすいね。だからほかの町と比べて圧倒的に広いのさ。ちなみに隣町のレベアルとかはしっかり町長がいたね。」

 「は、はぁ。そうなんですか。初めて知りました。」

 「また面白い話を見つけたら教えてあげるよ。それで、手紙はどこかな?」

  

  大男は持っていた袋から封筒(ふうとう)を取り出した。封筒は茶色く、少し折れている。

 

 「これです。内容は見てないので分かりませんが。」

 「分かった。それにしても校長からか…。内容はなんだろうね…。」

  

  開けると白い紙が入っていた。そこには長い文章が書かれていた。

  今の学校の状況や卒業試験に来てほしいとか。

  そんな世間話(せけんばなし)だけかと思っていたが、下のほうに面白いのが書かれていた。

  零術魔導士。

その単語が目に入った。久しぶりにその言葉を見た。

  何人かの名前が書いてあった。その中に一つ興味を引く名前を国王は見つけた。


 「金切…ナギト…!」

  

  咄嗟(とっさ)に声が出た。

  小さな声だったので少し離れている大男には聞こえなかった。

  

 「??何かおっしゃりましたか?」

 

  いや別に、といい手紙を封筒にしまった。

  国王がもう一度外を見た。天気はいつも通り晴れだった。

  国王の予想通りの。

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