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15話 『霧神戦い』

  ナギトは最初から全力でただの電気を撃った。

  七光雷鳴より弱いが、魔力を節約できる。

  ただ、レイジは簡単に切られてしまい、高速でこっちに飛んで来た。

  視認できないくらい速い。


 (なんてスピードだ…。近距離だと鎌で切られて終わる…。)


  ナギトは足から電気を流し爆発させて高速移動をした。レイジから距離をとるためだ。距離をとって魔法を撃つ作戦だ。これなら安全だ、と思っていたが。

  レイジはそれを超えるほどのスピードでナギトを追いかけた。

  どんどん二人の距離は短くなってきた。

  ナギトは追いつかれると思い、ほぼ真後ろに来た瞬間


 「貫電!」

  

  後ろを向き、レイジの頭をめがけて撃った。レイジは一瞬でよけたが少しだけ当たった。しかし髪の毛に当たったためほぼノーダメージだ。

  今のをよけるのはさすがだ。絶対に当たったと思っていたのに。

  ただ、レイジの動きが止まったため、間に少しの距離ができた。

  よく見るとレイジは杖を持っていた。

  

  (てっきり鎌で切ってくるかと思った。そこは手加減というやつか?)


  その瞬間見えない速さで、レイジは杖で切り付けるように振りかざしてきた。杖は刃がついてないため切ることは不可能だ。ただナギトは抵抗するように自分の杖でそれを受け止めた。

  杖同士がぶつかった。レイジはあまり強い力を入れてない。頭を叩くわけではなさそうだ。なら何がしたいんだ?


 「杖なんですね。鎌で切ってくるかと思いました。」

 「鎌よりもこっちのほうがいいんだ。なぜなら切れ味がいいからな!」

  

  そう言うとレイジの杖の周りに風が発生した。先っぽに多く風が発生してる。

  そして風の刃が杖を覆った。まるで剣のような刃ができた。


 (これは風流刃斬!?)


  前にクロスが使っていたため見覚えがあった。とっさに杖から電気を流そうとしたが、気づいたときにはナギトの杖は風流刃斬によって切られた。運よく切られたとき爆発移動で後ろに引いたため体は無事だ。

  ナギトは杖は切れて半分になってしまった。持ち手の部分と先端がつながってないと杖に魔力を送ることができない。つまり杖の意味がない。

  杖を使うことが使えないため左手をレイジに向けた。吸収されるかもしれないが、そんなこと考える暇もなかった。


 「七光雷鳴!」

  

  左手から巨大な電気が流れてレイジに飛んでいった。

  レイジはすぐに風流刃斬をしまい、風の刃がなくなって一気に普通の杖に戻った。


 「紅炎波動(こうえんはどう)。」


  杖からあまり大きくない炎を勢いよく出した。それは流れるように進んでいき、七光雷鳴と当たった。魔法同士があまり威力の差がなければ打ち消しあうのだが紅炎波動は七光雷鳴を貫通し、ナギトのほうに飛んできた。


 「やはり、威力の差がすごいな。簡単に貫通されるのか…!」


  いそいで左手を右から左に薙ぎ払い、バイアレットを展開したが、紅炎波動はそれすら貫通する強さだった。何とか魔力を送り続け、壊れることはなかったがかなり危なかった。ひびが入ってほぼ壊れる寸前だ。


  (これが吸収か。なんの魔法を使ってくるかまったくわからねぇ…。)


  たった一撃で格の違いを知る。今はナギトのほうが分が悪い。強さも戦術も相手のほうが上だろう。さらにスピードも爆発移動では簡単に追いつかれてしまう。何一つ勝っているところがない。

  

 「杖がなく、魔法を使ってもすべて消される。ならもうこれしかない!」

 

  ナギトは意を決してレイジのほうに突っ込んだ。レイジもさすがそれは予想してなかったらしく少し動揺した。


 「なるほど!杖なしで突っ込むとは何してくるか分からないな!ただ容赦はしないぞ!」


  レイジは杖をナギトに向け、紅炎波動を撃ってきた。その威力に手加減はないだろう。

  バリアレットを使ってもどうせ壊れてしまう。

  なら、とナギトは両足に電気を出し、爆発させ高くジャンプした。

  この高さなら紅炎波動は当たらない。しかし、レイジも浮遊術を使って空中にいるナギトに突撃しようとした。手に持ってるのは杖ではなく鎌だ。いつの間にか変わっていた。鎌ということは切ってくるに違いない。

  

  上から落ちてきてるナギト、下から上がってきてるレイジ。ナギトは左手を向けた。レイジは鎌で切ろうと大きく振りかぶったとき、鎌から杖に変わった。電気魔法を吸収する気だ。


 「貫電!」

 

  ナギトは貫電を使った。もちろんレイジはそれを吸収した。どんな魔法も吸収でき、体力を回復できるため使っておいて損はない。

  ただレイジは杖を構えて吸収することを考えてたため、ほかのところを見てなかった。そう、ナギトのさっきの貫電は相手の注意を引くためであり、ナギトがレイジの前で拳を構えてることに気が付かなかった。

 

 「…え?」


  レイジはナギトの電気をまとった拳で体を殴られ、大きく吹っ飛んだ。かなり大きな音がした。


  吸収されるなら出さなければいい。

  それで思いついたのが左手に電気を流し、直接殴ること。近距離に怖いがこれなら吸収されない。正直即興で思いついたのだが、うまく相手の意表を突くことができた。

  

 「さて、レイジさんはどうなっている?」

  

  ナギトは壁のほうに目を向けた。

  レイジは闘技場の壁に勢いよく当たったがすぐに立ち上がった。見た感じ怪我はなさそうである。レイジは首をポキポキならしながら自分の鎌を見た。

  

 「吸収されるなら魔法を撃たず近距離で殴る、か。なかなかいい発想だ!しかし、こんな威力じゃ傷ついてないのと一緒だぞ!!」

 「マジかよ…、あれくらって全く効かないのか…。少しは効果あると思ったのにな。」


  本気で殴ったはずだった。レイジは何事もなかったようにこっちを見て杖を構えた。なんか少しだけレイジの目の色が違う感じがした。さっきは真っ黒だったのに少し赤みがかっているみたいだ。多分気のせいだと思うが。


 「すまないが、俺はまだまだ戦い足りない。体が温まってきたことだしさっきより本気で行くぞ!!」


  ものすごい速さでレイジはナギトのほうに向かってきた。さっきより速い。もうほとんど見えないくらいだ。

  レイジの姿が消えた。前には誰もいない。

  すぐにナギトは後ろに気配を感じた。『誰かいる』そう思った。きっと霧神さんだ!

  左手に電気を送り構えたが、後ろを振り返っても誰もいない。


 (ならさっきの気配は…。それに霧神さんはどこに?)


  前を見たがやはり誰もいない。上空を見渡してもレイジの姿はない。前も後ろも上も見たから普通ならどこかにはいるはずなのだが。

 

  (どこにいる?もしかして闘技場の外か??)

  

  そう考えたとき、後ろに『コツン』という音がした。

  振り返る間もなく、ナギトは背中に感じたことないくらい強い痛みを感じた。


 「くッッ……!!」

  

  倒れそうになったが死ぬ気で耐えた。

  後ろをよく見てみるとレイジが杖をこっちに向けて立ってた。レイジは少し満足したような顔だった。


 「もしかして、俺が近くにいると思ってたか??それは甘い、甘すぎるぞ!!そんなんじゃいつまでたっても俺の高速移動にはついてこれないな!!」


  あの高速移動は気配を錯乱させるためであり、近距離で戦うわけではないようだ。

 (完全に判断が甘かった。それにしてもさっきの魔法は手加減してたのか?あの威力をもう一回くらったら間違いなく死ぬぞ?)


  レイジは杖から鎌に変え、大きくジャンプした。浮遊術でこっちに向かってきている。鎌の先は氷で覆われており、遠くで振り下ろすのと同時にナギトのほうにちょっと大きい氷の刃が飛んできた。

  いつものように爆発移動をしようとしたが、あのダメージで体が思うように動かない。それに動こうとしても背中が痛い。


 「クソ!これでもくらえ!!」


  左手から電気を出して氷に向かって撃った。あまり氷は頑丈ではなく電気によって簡単に壊された。


 (あれ?意外と脆いな…。まさか…!)


 電気は氷を破壊してレイジのほうにいった。見計らったようにレイジは杖に変え電気を吸収した。さっきの傷を回復するためにわざと弱く氷を撃ったのだろう。ナギトが氷を破壊することを予測して。


 (なんて戦法だ…。そこまで考えてたなんて…。なんなんだこの人は。)

  

  休む暇なんてない。

  レイジはすぐに杖から大量の氷を撃ってきた。それと同時に杖から鎌に変え、こっちに飛んできた。当てる的が多すぎる。すべて狙うと間に合わない。

  ナギトはバイアレットを展開しなんとか氷を防いだ。氷が当たるたびにバリン!、と大きな音が響く。

  ただこのままではレイジには対処できない。ほぼゼロ距離になったときレイジはナギトの右腕にめがけて鎌を振り下ろした。

  ナギトに杖はない。鎌を受け止めることができない。いや、あったとしても簡単に切られるだろうが。

  

  鎌がバリアレットに当たり、一瞬でバリアが粉々に砕け散った。振り下ろす威力なのか、何か魔法を使ったのか、そんなことは考える必要ない。

  

  考えるよりも体が先に動いた。一瞬で左腕が電気を纏い、鎌を受け止めた。

  『切られる』なんて考えは存在しなかった。左腕は鎌の刃に当たったが不思議と痛みは感じなかった。


 「「…え?」」

 

  両方とも、そんな声を出した。 

  左腕は鎌の刃に当たったが、不思議と痛みは感じなかった。 

  電気を纏ったからか?

  レイジは固まった。予測できるはずがなかった。レイジは切るつもりだったしナギトの腕が切られると思ってたから。

  

 「いまだ!!」


  ナギトはすぐに右足から電気を大量に流し、地面を通してレイジに浴びせた。

  レイジに吸収する暇はなく、全身に電気を受けた。

  

 「ぐ…はァ!!」


  大きな音がして煙が発生した。よく見えないがまだ平気だろう。

  ナギトは一歩後ろに引いた。まだ油断しないほうが良いはずだ。

  

  その時、前のほうからものすごい気迫を感じた。

  足が震えている。何かに怯えてるのか?

  煙が消え去り出てきたのは、赤く目の色が変わり右手に漆黒の鎌を持った霧神レイジだ。彼の目は獲物を捕らえるように鋭く血を彷彿させる色だ。

  鎌を静かに上にあげた。ナギトとレイジの距離は約10メートルあるくらい。高速移動されたらすぐに追いつかれて殺されるだろう。


 「…レイジさん、ですよね…?」

 

  ナギトの声にレイジは反応しない。ただ鎌を上げてるだけだ。なにもしてこないと思ったがレイジの目は一瞬こっちを見た。

  この目は人を殺す目をしてる。直観でそう感じた。

  そして鎌を思いっきり薙ぎ払うように振り下ろした。ものすごい風速の風がナギトに吹いてきた。ただの風なのに吹き飛ばされそうだ。


 (なんて風力だ…!風を受け止めないと飛ばされる…。)


  さらにレイジはまた鎌を薙ぎ払った。今度は大きな白い刃が風と共に飛んできた。ナギトはすぐに七光雷鳴を撃ったが、白い刃は七光雷鳴を打ち消しそのまま飛んできた。


 「それならこれでどうだ!!」


  大量の電気によるバリアレットを展開した。七光雷鳴により多少は威力を下げたから、これで防げる…と思ってたが、

  バァン!と音がして、バリアレットも簡単に砕けた。今まで一番多くの電気で作ったから頑丈のはずだった。

  

  最初より小さくなった白い刃はナギトの右腕に命中し、右腕に切り傷のような跡ができた。ちょっとした戦いのはずだったが、あの魔法は容赦がなかった。

  さらにレイジは鎌を持ったままナギトに近づき右腕を切り付けた。後ろに引いたため腕は切られなかったが右手の指を切られた。反撃するように電気の纏った左手で殴ったが、


 「効かない?これは壁…?」


  レイジの体は魔法の透明な壁で覆われてた。壁というよりかは膜のほうが分かりやすいだろう。レイジはナギトの左手を少しだけ見て容赦なく左肩を切り付けた。鎌から杖に変えて、切られて肩を押さえてるナギトにお構いなしに風魔法を撃った。玉のようになっていたためクロスが使ってた風麟弾だろう。

  

 「が…ああ…ッ!」

 

  風麟弾はナギトの体の中心にあたり、ナギトは大きく吹っ飛んだ。壁が近くにあったためあまり飛ばず勢いよく壁に当たった。壁には少しヒビが入った。

  全身が痛い。体の内部にも痛覚が侵入した。

  そのままナギトは力尽きるようにその場に倒れた。もうなにも握る力も、立つ力もない。

 

 (頭がくらくらする…周りの音が聞こえにくい…いや、頭に入らないのか…?)


  まだ物事を考える余裕はあったが、今のナギトに動く力は存在しない。今までこんなダメージくらったことなく体が慣れてない。そろそろやばくなってきた。


 (死ぬ…俺は死ぬのか?こんなところで、こんな戦いで…?)


  レイジは躊躇なくナギトに近づき杖をナギトの頭に向けた。ナギトの体はいうことを聞かず全く動かない。口からも血が出てきた。血は地面の土にしみ込んでいる。

 

  最後に見えたのは紅蓮のような目でにらんでるレイジの目だ。よく見ると杖ではなく鎌だった。それすら今のナギトに判断できなくなってきた。

  

  静かにナギトは目を閉じた。殺される覚悟はできてる。

  結局この人も敵だったのか……。

  体を切る鈍い音が闘技場に響いた。それはとても小さいが大きな音だった。

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