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13話 『指輪』

  大ホールに着いた。今日で2回目だ。

  中に入ろうとドアを少し開けた。中がほんの少しだけ見える。

  中は暗い。ステージのほうは明るくなってる。

  たまに「はいっ。」って返事が聞こえる。多分みんなは校長から勲章をもらっているのだろう。


 「クロス、どうする?こんな中に入るのか?」

 

  ドアを静かに閉めながら、聞こえるかわからないくらい小さな声でクロスにささやいた。

  クロスはだまって少し考え、


 「そうだな…まずみんながもらうのを待とう。今入ったって変な目で見られるだけだ。ていうかキョウ先生が伝えてくれるんじゃないのか?」

 「そうだといいんだが…って何か校長が話出したぞ・・・。」

 「??もしかして終わったのか?」

 

  ナギトたちはドア越しに耳をあて、中の声を聞いた。あまり聞こえないが校長はなんか、これから頑張ってほしいとか、卒業式がどうたら言ってた。そういえば卒業式はそろそろか。すっかり忘れていた。

 

 「ナギト、もしかして校長の話終わったんじゃないか?」

 「そうか?なんかまだ聞こえるような…、ていうか最初ドア開けたとき中に光入ったんじゃないか?多分バレたぞ。」

 「いや、大丈夫だろうそこは。たぶん、誰もこっちのほう見てないから気づいてないと思う。」

 

  普通こういう表彰とかはみんなずっとステージなんて見ないだろ、と思ったがナギトは触れなかった。

  会場全体に響き渡るほどの拍手が聞こえた。ドアに耳を近づけなくても聞こえる。

 

「多分終わったな。よしそろそろ…」

「いや待て!校長出てくるんじゃないか!?見つからないように隠れないと…。」

「別に隠れる理由なんてないと思うが…?」

「いや…、まーそうなんだけど…。」

  

  今自分たちがしてるのは悪いことではないと思うが、見つかるとまずい気もしている。どっちみち隠れていた方がいいだろう。

  ナギトがクロスの袖を引っ張ったとき、

 

 「あなたたち、一体何やってるの!?」

「!?」

  

ナギトたちは心臓が飛び出るほどびっくりした。

  後ろを見るとキノ先生がいた。

  

 「いや、これは、その…。」

 「あなたたちのことはキョウ先生から聞いたわ。」

 

  思いがけない言葉にきょとんとした。キョウ先生は右手に持っている大きな荷物を床に置き、

 

 「校長にもさっき伝えたの、だから普通に入ってもいいんだよ?」

 「いや、普通にって言っても…」

  

  キノ先生はドアを静かに開けた。ナギトたちもドアの隙間から中を見た。

  みんな静かに椅子に座ってステージのほうを見ている。ただ、中は静かで誰かが話をしているとかではない。

  

 「確かにこんな状況で入るってのもね…。それより、敵どうだったの?」

 「いやーすごい死闘だったんですよほんと。死ぬかと思いました…。」

 「大丈夫だったの?それにナギトのその背中の傷とクロスの腕の傷、だいぶひどいよ。」

 「俺のほうは大丈夫です。ただナギトのは結構…。」

 「いやー、これくらいなら大丈夫ですよ。意外と回復しましたし。」

 「それならいいけど、ってそうだ!二人とも、こっちきて。」

 「?」

 

  キノ先生は二人をドアから離して話をした。


 「二人いてちょうどよかった。あなたたち、今回の成績の総合1位、2位なの。それで、この校長からもらうとき1位と2位は最後にもらうようになってるの。」

 「マジですか、俺ら1,2位何ですか?」

 「そうそう、二人いてほんとよかった。それで……。」

 

  話を聞くこと約2分。ようやく理解できた。


 「なるほど、分かりました。つまり俺とクロスは……。」

 「そう、ちゃんとやってよね?」


  いきなりだがいいだろう。別に難しくないし。


 

 「さて、それじゃあそろそろ『とある2人』を発表しようか。」

 

  校長はステージでそんなことを言った。ほとんどの生徒は、校長の話が終わったと勘違いしてたため、驚いた表情をした。

  

 

 「まだ話あるのか…、はっ!もしかしてナギトとクロスは、その『とある2人』なのか?」


  カイはひそひそ声で隣のレンに話しかけた。レンは眠いのか、何回もあくびをしたり、目をつぶったりしていた。

 

 「ん?ああ、そうかもな。だけどカイ、それならなんでナギトはあんな慌ててたんだ?」

 「あれじゃん。いきなりでびっくりしたとか。ナギトならあり得るだろ!」

 「そんなことあるか…?」

  

  話していると、ドアのほうにスポットライトが当たった。

  ドアは少しだけ開いていて、外からの光も差し込んでいる。


 「ではここに『とある2人』を呼ぶ。まず一人目、黄泉白クロス!!」

 「はい!」


  と言ってクロスはドアを開けた。みんなドアのほうを注目している。

  クロスはステージに上がり、校長の前に立った。

 

 「もう一人、金切ナギト!」

 「はい!」


  開いてあるドアを通って中に入ってクロスの横に立った。みんなクロスなのは予想してただろう。あいつは何回も表彰されてるし。

  ただ俺と予想していた奴は戦術士を受けたやつくらいだろう。それ以外のやつは俺が魔法使えないと思ってるし、零術魔法(ノーレット)を知らないからな。

  俺が呼ばれたとき、ところどころでざわつきが起きた。信じられないようだ。ていうか、俺傷だらけじゃん。ここでも黒歴史を作る、さすがだ。

  

 「黄泉白クロス、金切ナギト、君たちは大変優秀な成績を今回の試験で出した。おめでとう。」

 

  クロスは勲章と銀の指輪、ナギトは勲章と金の指輪をもらった。銀は2位、金は1位だけがもらうことができる。

  ナギトたちはそのまま校長に一礼してステージを降りた。


 「さて、これで表彰は終わり、そして私からの話もおしまいだ。みんなほんとにお疲れ様!」


  校長はそう言ってみんなに礼をして大ホールを出た。

 

  ナギトはもらった金の指輪をつけてみた。

  なかなかきれいだ。これはずっとつけてよう。

  ナギトたちはレンたちのところに向かった。

 

 「やっぱりナギトたちか、さすがだな!」

 「ナギトー!!1位おめでとー!金の指輪似合ってるな!あと体大丈夫か?」

 「おーカイとレン!ありがと。体は問題ない…わけではないが大丈夫だ!」

 「それにしてもほんとすごいな、ナギトが1位、クロスが2位…か。」

 「一位はナギトだと思ってたさ、ただ2位が俺だとは。俺はレンだと思ってた。戦術士試験一番目はレンだったし。」

 「いや俺今回調子悪かったんだよなー。それにクロスのほうが多分強いぞ?」

 「ていうか2人とも何してたの?結構傷ついてるけど…。」

  

  周りにいる人もナギトの傷を見ていた。自分からじゃ分からないけど思ってるより目立つようだ。

  カイとレンにさっきのことを話した。

  二人ともあまり信じれていないようだが話を聞いてくれた。

 

 「そんなことが…、それで時間かかったのか。」

 「そう、かなり面倒な相手だったが何とか勝てたな。これで2回ルイノのやつと戦ってるから今度から本格的に狙われるかもな。」

 「大丈夫なのか、てか1回ルイノのやつと戦ったのか。どっちが強かった?」

 「圧倒的に今回のやつだな。強くなったはずなのに、ものすごい苦戦した。しかもあいつの上に何人かいるはずだ。」

 「ルイノは武器製造もすごいが、魔法の教育にもすごい力を入れていたはずだ。それに最近はプルテールと関係が悪いし…。何か起きないといいけど。」


  確かに俺は短時間に2回戦った。もしかしたらほかに侵入してきてるやつがいるかもしれない。

  それに何か嫌な予感もする。

  いや、今はそんなこと忘れよう。前半は終わった。あとはパーティーだ。


  合格した人はここで豪華な料理を食べる。バイキング形式なので偏食家でも安心だ。普段の食堂とは比べ物にならないほどの料理があった。

  さらにデザートも多くあった。甘党にはたまらないだろう。

 

 「合格したらこんなのが食べられるのか!これ合格しなかったら?」

 「先生と進路決め。」

 「よかったー!!俺武器製造に受かって!マジで命中の試験怖かったんだよなー。ギリギリ赤点回避したし。」

 「命中か、あれが一番個人差出そうだよな。まずあれ戦術士以外いらなくね?」

 「そうだよな!こっちは何回も夜中練習してできるようになったのに。今思い返すと無駄な気がするなー!」

 「まぁまぁ、武器作ってるときに敵に襲われたら大変だろ?そこも考えてるんじゃん?ちなみに俺は命中学年2位。」

 「残念だなレン。俺は命中も1位。威力はなんか3位。」

 「戦術士も命中も総合も1位か…。いつから俺とかけ離れたんだ…。俺たち一緒に魔法苦手だから実技逃げてただろ…?」

 「あの頃は忘れてくれ…。黒歴史だ。あの頃はまさかこんなことになるとは思ってもいなかっただろうな。」

 「それにしてもナギト、少しデザート食べすぎじゃないか…?あまり食べすぎると…。」

  

  目の前の皿にはケーキとアイス、右手は食べるためのフォーク、左手はエクレア。飲み物はホットココアと甘いもののオンパレードだ。気づかないうちにデザートをとりすぎてしまったようだ。

 

 「いや、これくらい俺にとっては普通だぞ?部屋で毎日パンケーキとかシュークリームとか食べてるし。」

 「うわぁ。今は良くても数年後後悔するぞ?体に良くないし虫歯にもなりやすくなる…。考えただけで寒気がする…。」

 「後のことなんて考えていたら今したいことができないぞ??それに太っても動けばいいし歯磨きしてるし栄養…、は偏ってるな。」

  

  パーティが始まったとき、多くの人は主食、主菜、副菜などバランスよくとっていた。もちろん野菜をとらない人とかもいた。

  そんな中、異質を放ったのがナギトのチョイスだ。

  彼は主菜副菜はおろか、主食にも目を向けず、真っ先にデザートコーナーに向かった。さすがに初手からデザートをとる猛者がいないため、ナギトは安心して取ることができた。

  後ろに人がいると『やっぱあれ食べたかったな…。』と思ってもまた並び直すしかない。ただ、だれもいないなら順番など気にせずに独占できる。幸い量が多かったため、ナギトだけでなくなってしまうということはなかった。毎年ナギトみたいな輩がいるんだろう。

  

 「でも大丈夫!しっかりパンや米も食べてるから!これで安心だ!」

 「でも一日に取る糖分の目安を軽く超えてるよ。これでも安心なの?」

  

  隣からユメナの声がしてきた。彼女は小食なのか栄養を気にしてるのか、野菜ばかり並んでいる。

 

 「まぁ糖分はちょっと多いが…。そうだな、少し減らすか…。」

 「あれ、ずいぶんと率直に決めるね?好物の量を制限するのは意外と大変だけど。」

 「いや、よく考えるとこんなので死んだらもったいないと思ってな。せっかく自分のことが知れたのに…。」

 

  それにこの国を守るという目標だって達成できてない。戦術士になった意味もなくなってしまう。

 「それより、ユメナにまだ零術魔法(ノーレット)について言ってなかったな。」

 「あ、それ気になってた!まさか前言った電気魔法を使える人がいるなんて、びっくりしちゃった!」

 「だろ?最後別れるとき言おうと思ってたのに、運悪く鐘が鳴っちゃってさー。」

 「最初とか言えばよかったのにー。内緒にしたかったの?」

  

  内緒にしたい、というわけではない。ただリューヤさんが言うなっていっただけだ。

  

 (あれ、でも何かおかしくないか?よく考えると、先生は俺が零術魔導士ということを知ってるはずだ。零術魔導士はあまり良い印象がないはずだ。何で誰もそれについて言ってこないんだろう?気を使ってるのか?)

  

 「ナギトが戦術士か…。思いもしていなかったなー。」

  

  考え事をしながらケーキを食べてると、ユメナがボソッとつぶやいた。ナギトはフォークを皿に置いて、  

 

 「あ、俺もあんまり実感してないな。ただ、今の俺に一番似合ってるだろ?」

 「確かにそうかも!ナギトは遠くに行っちゃうの?」

 「俺はそうだな…。遠くに行って戦う。だからユメナに会うことはあまりないだろう。…ってそんな寂しい顔するなよ。たまにはここに戻ってきて会えるだろ?」

 

  ユメナはすごい寂しい顔をしてる。本当はみんなとずっと一緒にいたいし。俺も別れたくない。ただ行くしかない。


 「いや、会えるのはうれしいけど。遠くで死んじゃったりとかしたらすごい悲しいからさ…。少しそれ考えたらなんか…。」

 

  俺が死んで会えなくなるのが嫌なのか。遠くでたくさん戦うだろう。戦術士はいつ死んでもおかしくない。戦ってるときは常に死と隣り合わせだ。


 「大丈夫だ。絶対死なないで帰ってくる!だからそれまで待っててくれ。」

 「……うん!約束だよ?」


  リューヤさんの話ではすぐに戦争が起きるようだ。戦争では新人の戦術士も参戦させられる。それに俺は2回ルイノの奴と戦ったし零術魔導士とばれてしまった。もしかするとそこからも狙われるだろう。それでもいい。すべて倒せばいいから――。


  

  パーティーが終わり外は日が暮れそうになっている。

  街灯がなく暗くなっている道をユメナは歩いた。

  向かっている先は王宮だ。理由はクレスに会うためだ。


  王族なので特にセキュリティを突破しなくても中に入れる。

  長い階段を上り廊下の中央にある王室に来た。


 「クレス、いる?少し用があるんだけど。」

 

  国王といえど親戚だ。敬語なんて使わなくていい。二人はそういう関係だ。


 「ユメナかい?いいよ、入って。」


  ユメナは中に入った。クレスは椅子に座ってペンをもって何か書いていた。

 

 「何書いてるの?大事なもの?」

 「いや別に大したことないさ。それよりユメナ、戦術士合格おめでとう。ナギト君から聞いたよ。かなりタイムが良かったんだって?」

 「確かに良かったけど…、ナギトのほうが全然上よ。差が大きすぎるの。」

 「彼はすごいよ。いつかリューヤを超えるだろう。さすがに僕を超えるのは無理かもしれないけどね。おっと、これはナギト君を馬鹿にしてるわけじゃないよ。」

 

  その時ユメナは頭に何かがよぎった。聞いたことある名前が。


 「!!ちょっと待って!そのリューヤってあの…。」

 「そうだね…。あのリューヤだよ。…ユメナはまだリューヤのこと嫌い?」

 「嫌いよあんな奴!!あいつのせいでパパやお姉ちゃんが…。」

 

  ユメナは何か思い出したように悲しい顔をした。

 

 (ユメナはまだリューヤのことをよく思ってないのか。『あんなこと』が起きたら当然、か。)


 「変なこと聞いてすまないね。そうだ用があったんじゃないか?」

 

  クレスは急いで話題を変えた。深掘りしないほうが彼女にとってもいいだろう。

  ユメナは一瞬きょとんとしたが、


  「あ、そうだったね。そうそう、今日試験が終わった後ナギトが…。」


  ルイノの奴との戦いを話した。ユメナが気になったのはセキュリティのことだ。


 「この国はテレポートで通過するのも防いだはず。つまり操っている奴はこの国に入れないってことさ。操りは周囲200メートルの範囲でしか使えない。」

 「それだと操っていた人は学校の敷地内にいなければいけないんでしょ?」

 「そうなるね…。学校からプルテールの端までは3km。どんな魔導士でもその距離は無理だ。」


 となると考えられるのはあれしかない


 「スパイ、いや裏切者か?」


  この考えは間違ってはいないだろう。ルイノで今4番目に強い『春崎ノル』。彼は操りを使うことができていたはずだし、弱点は回復した時だ。つまり操っていたのは本人である。

  

  ただそれなら誰がやつを国に入れた?

  入口に検査があるためどんなに隠しても入れない。

  となると、検査の解除か。それができるのはこの国でもごく一部だ。


 「そういえば操られてた人の話によると、一瞬だけ大きな大人の姿が見えたらしいよ。ほんのちょっとだからよく見えてなかったようだけど。」

  

  ノルは身長が低い。それは本人ではない。そうなるといったい誰が…。


 「ありがとうユメナ。この情報はもう少しレイジと一緒に考えてみるよ。」

 「レイジって霧神さん?あの人こっちに来るの?」

 「そう。僕がナギト君のこと教えたらすぐに見たいって。今修行してるらしいけど明日にここに来るらしいよ。」

 「西大陸ってここから数100kmもあるのに?相変わらずあの人は無茶苦茶だね…。」

 「それが彼の最大の長所だろうねぇ。」


  この問題は一人ではできないだろう。ただ、だれが裏切りかわからないうちは本当に信頼できる人に言ったほうがいい。彼なら大丈夫だろう。


 「それじゃ明日卒業式だから早めに帰んないと。ほんとなんでこの学校は試験の次の日に卒業式をやるのか。」

 「そうか、もう卒業だね。ユメナは卒業した後もここに残るんだっけ?」

 「そうそう、やっぱこの国を離れるのが心細くてさー。それならここにいればいいかって。」

 「ナギト君はここに残らないらしいね。彼から聞いたよ。」

 「そうなの、寂しいけどしょうがないね。ナギトはきっと遠くで強くなってこの国を守ってくれる。私はそう思ってる。」

 

  そう言って部屋を出た。

 

(それにしてもユメナはよくナギト君の話をするね。何か思うことがあるのかな?)


  ユメナは廊下に出て記録室に行った。

  記録室は今までの国や王の歴史について書いてある本がたくさんある。


 「小野リューヤ…か。あの人はどうして…。」

 

  最近のプルテールについて書いてある本をとった。表紙には「two years ago.」と書いてある。

  多分ヒントはここにあるはず。それを探し出さないと。

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