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10話 『戦術士試験』

  闘技場の中は初めて入った。  

  真ん中が円形になっていてその中で戦う。

  それを囲うように観客席が連なっている。

  観客席まで魔法が届かないよう透明なバリアがあるため、被害にあわない。

  もともと戦術士の練習として使っていたが最近では試験の会場としても使われてる。

  

 「この試験では戦霊と戦ってもらいます。名前の順ではなくランダムに行うよ。いつ来てもできるように準備をしておいてね。」


  キノ先生はそう言った。

  ランダムか、いつ来るかわからないな。

  ただ、ある程度順番は決まってるらしく、今までの実技のテストの成績が良い人が先のほうになるらしい。つまり、俺はほぼ最後確定かー。

  

 「この試験は総合的な評価をします。魔法の威力、命中、使い方、立ち回り、など様々です。それじゃあ始めます!」

  

  ついに最初の人が始まった。

  待っている人は違う部屋からみてもいいのだが。誰も見ていないで外にいる。みんなかなり緊張していてそれどころではないようだ。

  外からも少し見えたが、中で本当に戦霊と戦っていた。

  きっと中では死闘を繰り広げてるんだろう。

 

  次の人が呼ばれた。つまり一人目が終わった。約3,4分かかった。

  終わった人は控室のようなところに行かなくてはならない。


  次はクロスが呼ばれた。

 

 「行ってこいクロス。全力で戦ってこい!」

 「ありがとナギト。それじゃ行ってくる!」


  勢いよく中に向かって走っていった。一応試験なので敵同士だが応援したくなってくる。

  これが『友達』だ。



  中に入ると戦霊がいた。少し大きめで青ではなく赤っぽかった。戦霊にしては珍しい。

  見た目は馬のような下半身に龍のような上半身をしていた。

  上の観客席のほうを見ると何人も先生がいた。

  この状況でやるのはさすがに緊張する。

 

  (相手の動きはよくわからないがここは一瞬で決めるぞ!)


「ヨミシロクロス、ハジメテクダサイ。」


  戦霊の言葉で試験が始まった。

  早めに終わらせる。だから俺の中での最高火力の風魔法をやる。

  杖の先が黒い風を出している。これはよけられると面倒だが、当たればかなりのダメージだ。

 

 「くらえ、黒霊十文字(こくれいじゅうもんじ)!!」


  

  外からでも聞こえるほど大きな音が聞こえる。一体中でなにが起きてるんだ?

  時々黒い風が闘技場の真上まで上がってるのがみえる。

  確かあれは、風魔法の1種でクロスのお気に入りの魔法だ。

  威力も命中も申し分なくこれを習得して魔法実技の成績がよくなったとか。


  少したって中は静かになった。それと同時に3人目が呼ばれた。3人目はユメナだ。

  また中でうるさい音がして、ちょっと経って静かになった。  

  多分ずっとこの繰り返しだろう。

  ユメナは今までの人より少しだけ早く次の人が呼ばれた。2分くらいでおわったのか。


  

  そして2時間経ちほとんどの人は終わった。もちろんナギトはまだ呼ばれてない。

  今が48人目のため、次呼ばれなければ最後だ。

  案の定、次も呼ばれなかった。まさか最後になるとは。ただ、最後のほうがなんかやりやすい。

  控室でも闘技場の様子がみれる。必然的にみんなナギトの試験の光景がみられるということになる。


  49人目も終わり、ナギトが呼ばれた。

  大丈夫、絶対成功する。

  左手で杖を持ち、闘技場に入った。


 

 「ナギトは戦霊に勝つと思う?」

 

  控室でユメナはクロスに聞いた。

  二人は一応王族のつながりがあるため意外と仲がいい。


 「さて、どうだろうな。ただ、あいつの魔法には何か秘密があるはずだ。」

 「秘密って?」

 「多分昨日まで使えなかったっていうのは嘘だろう。俺の予想だとだいぶ前から使えてたんじゃないか?」

 「え、そうなの?それはどういった根拠から…。」

 「親友の勘ってやつだ。根拠なんて存在しない。」

 「勘…かー。それならどうして私たちに嘘をついたんだろうね。」

 「そこが気になるところだ。ナギトなら『驚かしたかった』とかではないはずだ。もしかして――。」



  中は思ってたより広かった。

  地面は砂と土でできていて古代の闘技場みたいだ。

  観客席のほうを見ると先生たちがいたが、一番上の特等席のようなところに見たことある人がいた。

  この国の王、クレスがいた。彼は、ナギトの戦いに興味がありわざわざ王宮から駆けつけてきた。少し薄気味悪く笑ってナギトを眺めていた。


  (なんで国王がここにいるんだ?これ俺の戦い見られるのか。余計緊張するなー。)

 (さて、彼の零術魔法(ノーレット)、見せてもらおうじゃないか。)


  少し待った時、20メートルほど先のところにクロスの時と同じ戦霊が現れた。

  戦霊は傷ついても一回戻してもう一度出せば回復するため、こういう試験で使われる。戦霊は常に戦いたいと思ってるので愛護的にも問題はない。


 「こいつを倒せば勝ち、か。」

  

  もうみんなの前で零術魔法(ノーレット)を使っていい、と考えると気が楽になった。

 

  「カナキリナギト、シケンヲハジメテクダサイ。」

  

  敵の戦霊は大きな雄叫びをあげながら一目散にナギトのほうに向かって突っ込んできた。何も考えていない、脳筋プレイだ。

  一番重要なのはどのくらいの時間で倒したか。

  つまり早ければ早いほどいい。手加減すると命取りになる。

  ナギトは戦霊の目元のほうに杖を向けた。


 「貫電」


  高速で細く小さい電気が流れた。それはきれいに右目に当たり、ナギトから顔をそむけるように首を少し下げた。片目はつぶしただろう。目を背けているため前がみえてない。胴体がものすごくがら空きだ。その間を見逃さず、

 

 「七光雷鳴」


  やつの胴体に向かって撃った。命中し、大きく2メートルくらい飛んで闘技場の壁に激突し、地面に倒れた。『勝ったか?』と思ったが少しの間動けなかっただけですぐに立ち、上を向いて大きく叫んだ。やつの体力はもう少しくらいだろう。

  これは試験なので情けはない、あの魔法を使うのはこのタイミングだ。これで戦いを終わりにしよう。


 「すべてのものよ、戦慄(せんりつ)しろ。流星電光(パレスマグレット)!」


  空に向かって一つの電気が出された、分裂しすべてが戦霊にめがけてまるでホーミングしているように当たった。意外と操作できるようになっていてびっくりした。



  戦霊は少し待っても倒れたまま動かなかった。

  つまりこの勝負は、


 「カナキリナギトノカチデス。」


  先生たちはかなり驚いてた。控室のみんなも驚いた。いきなり目の前で魔法使えなかった奴が電気を使うんだから無理はない。

  

  10秒ほどの沈黙が続いたが、


 「金切ナギト…記録…19秒。」


  キノ先生がしゃべった。

  その瞬間先生たちが一気にざわついた。

  全員今起きていることが理解できななかった。

  俺はそんな騒いでる先生たちを見て、

 

 「俺が終わったからもう試験は終了ですよね?」


  そう言ったが多分聞こえてない。

  それどころではないようだ。

  左利き電気はさすがにインパクトが強い。


  

とりあえず控室に向かった。結果がわかるまでそこで待機するらしい。

  控室に入ると中にいた多くの人が俺に質問してきた。


 「魔法使えないんじゃなかったの?」

 「てか、電気ってどういうことだ?」

 「しかも最速だし君は何者なんだ?」


  あちこちで多くの疑問文が飛んできたが、ナギトはお構いなしにみんなの前に出た。

  卒業試験が終わったからもう話をしていい。


 「聞きたいことはあると思う。まずは話をさせてくれ。俺が電気を使ったのは、不正とか奇跡とかではなく零術魔法(ノーレット)という魔法を使った。これは生まれつき持っている魔法で火、氷、風が使えないが電気、毒、吸収のうち一つを使うことができる。自分が零術魔導士と気づくにはかなりの時間がかかるが使いやすさと威力は一般魔法と比べてもかなり大きい。」


  そう言い終わったとき、アナウンスがなった。試験の結果発表だ。闘技場の真ん中に来てほしいらしい。

  みんなは俺の言葉を聞いて驚きつつも、闘技場の真ん中に向かった。


 「まさか、ナギトが零術魔導士だったとはな。本で見たとき伝説だと思ってたから、正直びっくりしてる。」

 「すまないなクロス。別に秘密にしたいわけではなかったんだが、いろいろ事情があったのさ。」

 「そういうことか。昨日まで魔法が使えなかったのに、ずいぶん余裕があったのが少し気になっていたんだ。それに魔法を多く使う戦術士になりたいとかいうから結構怪しかったな。」

 「だろうなー。自分でももしそんな奴がいたら絶対疑っていたと思う。」

 「だよな?さっきの戦いのときも戦霊が前に出てきても全く動じてなかったし、何か秘密があるな…って思ってたら零術魔導士だった。面白い話だな。」


  そんな感じで話してると闘技場の真ん中についた。先生は全員集まっていた。ほかのところの試験はもう終わったのだろうか。国王の姿は見当たらなかった。


 「えーそれでは試験の結果を皆さんに返したいと思います。試験をした順に先生のところに来てください。」


  先生たちは少し落ち着いたようだが内心ではまだびっくりしている感じだった。

  周りの生徒を見てみると40人ほどしかいなかった。10人くらいは戦霊を倒すことができずリタイアしたのかな?49番目にやった人はこの場にいなかった。

  ナギトやユメナは結果をもらって嬉しそうだった。きっと戦術士に合格したのだろう。

  さて次が最後の俺の番だ。もらったとき周りの視線がすごい気になった。

 

  そんなのどうだっていいや。

  さてさて俺の結果は


  ……保留。


  それしか書いてなかった。つまりそれ以上でもそれ以下でもない保留だ。

  いやちょっとまてまてまて!保留ってなんだ?俺は落ちたのか?合格したのか?


 「ナギト!俺とユメナは無事合格だ。ナギトはどうだ?」

 「保留…」

 「…え?ほ、保留?」

 「そうなんだよ!俺の紙には保留という単語しか書いてないんだ!これはいったいなんだ!?」


  ナギトたちは困惑してるとキノ先生が近づいてきた。

 

 「保留っていうのは少し一緒にお話をして戦術士になるか決めるの。さっきのあの試験のが原因なんだけど…。今すぐ学校の会議室に行ってもらえる?そこでお話があるから。」


  零術魔法(ノーレット)が原因でお話かー。そこまでは想定してなかったがやっぱそうなるか。  

  今合格者は29人いて保留は俺だけ、あと補欠合格っていう、俺が落ちたとき繰り上げで正規合格になるという人が1人いる。お話で不合格になるなんてことはないだろうが覚悟はしといたほうがいいだろう。


  すぐにナギトは会議室に向かった。会議室は一階のロビーの左に行くとすぐある。近いからよかった。

  中に入ろうとすると後ろから声がした。


 「君がナギト君だよね?」


  ナギトが後ろを振り返るとそこにはクレスがいた。

 

 「はい、そうですが…。あなたは確か国王様?」

 「そうだよ。君を保留という結果にしたのは僕さ。少しこの中でお話をしないかい?」


  流れるように会議室に連れていかれた。

  中は左は大きなテーブルとそれを囲うように椅子が何個も設置してある。対して右は小さなテーブルとそれを挟むように椅子が2つおいてあった。こっちは対面用だろう。

  ナギトは右のテーブルのほうに連れてかれ、ナギトは手前のドア側、クレスは奥の窓側に座った。国王と一対一なんてめったなことがないと起きないためかなり緊張している。


 「そこまで緊張しなくてもいいさ。お話といってもいくつかの質問に答えてもらうだけ。それで、君を保留にしてここに呼んだのには心当たりがあるだろう。零術魔法(ノーレット)についてだ。」

 「零術魔法(ノーレット)についてですか…。」

 

  まぁ普通に考えてそのことだろうな。逆にそれ以外は分からん。


 「そう。早速だが君は小野リューヤから零術魔法(ノーレット)について教えてもらい、初めてそこで知ったのかい?」

 「そうですね。教えてもらったっていうかリューヤさんが持っていた論文を読んで知りました。」

 「それ以前、魔法は使えなかった?」 

 「小さいころ左手で何かの魔法が使えましたが、右手にしてから使えなくなりました。」

 「それで左手にしたら使えるようになったと…。」

 「はい。それは俺の零術魔法(ノーレット)の条件だと思います。」 

 「ちなみに小さいころ電気魔法を使ったのかい?」

 「それが…なぜかそれについて全く覚えていないんですほかのことは記憶にあるんですが…。」


  顔を見る限りそれは本当だろう。それにしても魔法を使えてから成長スピードがものすごく速い。一体君は何者なんだ?


 「そうか。ちなみに君は自分の両親についてわかるかい?」

 

両親か。本当はこのことはあまり話したくない。

  ただ生徒の情報についてはすべて知っているだろう。それに目をつけられていたなら確実に耳にしてるはずだ。


 「母親は生まれてすぐ他界、父親は俺が6歳くらいの時この国の養護施設に預けられました。ただ父親とはすごく仲が良く、捨てられたわけじゃありません。」

 「なるほど。その情報は学校の先生から伝えられた。確か父親は戦術士だったんだっけ?」

 「そうです。戦争で遠くに行ってしまうから一人にさせる前にその施設に行ったんです。」


  この世界では戦争が多いため、いつ死ぬかわからず子供を安全なところに住ませるために養護施設がある。


 「話を聞く限り君の父親はかなり優しく息子思いのようだね。」

 「はい。優しくて魔法……も…?」


  まて、あの時父さんが見せた魔法は…。

  火、風、氷、零術魔法(ノーレット)にも当てはまらないあの『電気ではない光』は一体…?


 「…どうした?」

 「いや何でもないです。少し昔を思い出してしまっただけです。」

 「なるほどね。あと言ってなかったけど僕は、君が入学してきてからすぐ気になってたんだ。」

 「俺がですか?それはどうして…。」

 

  不思議だった。別に入りたての時は普通に過ごして一般の生徒と同じくらいだった。ただ勉強は苦手だったが。

  

 「それはね、君がね…おや?」

  

  通信機から電話がかかってきた。


 「少しごめんよ。電話がきたようだ。」


  クレスは通信機をとり電話に出た。


 「どうした。…なんだ君か。そう、だから彼は…っていまから?わかったよ。」


  誰かと話してる。電話はすぐに終わった。


 「いやすまないね、そうだ、君の結果を教えよう!」

 「え、さっきまでの話は…?」


  ま、別にいっか。それにしても本命を忘れていた。俺は結局どうなんだ?

  また試験前みたいに緊張がしてきた。

  多分ここで結果がわかるだろう。


 「もう少し気になるところはあったけど、君はしっかり『合格』だ。おめでとう。」

 「えっ、ほんとですか!?ありがとうございます!」


  すぐにクレスは『合格』と書かれた紙を渡した。

  結果を見るとすべての試験がTOP3に入っており、最後の試験は1位だった。

  こうなれたのもすべてリューヤさんのおかげだ。


 「すごいね君は、こんないい成績は見たことないよ。それに最後の戦術士の試験は歴代最速だ。」

 「ありがとうございます。これもリューヤさんのおかげです。」

 「リューヤから聞いたが君はものすごく成長スピードがはやいようだね。君はやはり戦術士になるべき人間だ。」

 

  やはり戦術士は俺に向いてる。絶対に強くなってこの国を守って見せるぞ!

 

 「それじゃもう大丈夫だ。すまないね今から集まりがあるのに。」

 「まだ時間あるんで大丈夫です。それでは失礼しました。」


  よっしゃー合格だ!!!

  早くみんなに伝えよーっと。


  今回合格した人は校舎の最上階にある大ホールで校長から勲章をもらう。

  ナギトはまだ時間があったが、早く伝えたいため急いで向かった。

  

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