1-07.ナンパ力が問われる校内ヒエラルキー
登場人物:
ユダ :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。
ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。
キール :ユダの同級生、『殺し屋一族のバラモン』の少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。
あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。
一方で学園ではキールが同級生を破壊しようとしたところでユダが割って入り事なきを得るも、キールから興味を持たれる。
教室で危うく未来ある学生の性癖が大変なことになりそうになっていたのだが、そんな騒ぎがあったにもかかわらず教師が飛んでくるというようなことは無かった。貴族クラスであるゴールドへの対応で手一杯で平民クラスになど注意を向けている暇など無いのかもしれないが、こういった争いごとになるべく関わりたくないユダとしては面倒事は学校側に収めてもらいたい、とそう思っていた。
そんな期待が届いたわけでは無いだろうが、教室の扉が開きのっそりと一人の男性教師が入ってくる。
ようやく自分たちの担任が現れたと期待と興味で正面に向いた生徒たちの視線は、しかしすぐに失望に変わる。
その中年の担任は無精髭に伸ばし放題の髪を後ろでひっつめにした如何にも自分の身なりに無頓着な人間が好んでする髪型をしていた。髪が黒く艶めいているのはワックスではなく自前の脂だろう。服装は教師が一般的に着る白い綿の法衣だがろくに手入れもされずくたびれたそれは白い色のせいで汚れが嫌に目立つ。
そして極めつけのやる気のない表情。生徒の恋愛力の向上に熱意を燃やす教師であればああもくすんだ顔色はしていないだろう。いや単純に顔を洗っていないせいなのかもしれないが。
「お前ら。校庭に出ろ。これからお前らの恋愛力をテストする」
中年の担任はやる気なさげに一言言うと、一部の生徒たちが上げる不満の声など一顧だにせず、さっさと校庭へ向かう。
多くの生徒はこの教師に失望と侮蔑の第一印象を抱いた。しかし彼らは気付いていない。誰しもが恋愛力のために身だしなみを整えるこの世界でこういった容姿に頓着しないタイプは、恋愛力を鼻から諦めているか、他のパラメータに相当の自信があるかのどちらかだけだ。そして恋四葉学園の教師をやるぐらいの実力者であれば、目ざとい人間ならは当然後者の可能性を疑う。
そのことにいち早く気付いている何人かの生徒は大人しく校庭に出ていった。
校庭ではカッパーの生徒たちが集まる前から他のクラスの生徒達が準備運動を始めていた。その校章のメッキから彼らがシルバーのクラスに振り分けられた生徒たちであることが分かる。
「おいおい、カッパーの連中だぜ」
「先生、彼ら劣等生が我々シルバーと比べられるのはいささか可哀想なのでは?」
同じ新入生でありながらカッパーの生徒たちよりも自分たちが当然優れているという物言い。シルバーはカッパーと同じく平民出身者のクラスのはずだが既に序列意識が出来上がっている。これはむしろ出身が同じだからこそ校章の輝きで優劣がついていることに優越感を覚えているのだ。もしかしたら自信過剰が行き過ぎて、ゴールドは所詮血筋だけで上にいる無能、総合恋愛力なら自分たちが勝っている、実質この学園のトップはシルバーだとでも思っているのかもしれない。
そんなシルバーたちの自信に満ち他を蔑んだ視線に、カッパーの生徒たちはある者は己を卑下し、ある者は悔し涙を浮かべ、ある者は獰猛な笑みを浮かべた。
「そんなに自信満々ならよ、俺達と勝負しようぜ」
キールがカッパーを代表して挑発する。
「なんだ、カッパーの癖に」
「いいだろう、乗ってやろうじゃないか」
キールの安い挑発にプライドを肥大化させていたシルバーの生徒たちは簡単に乗ってしまう。
そして、それを止めるべき教師たちはむしろこれを狙っていたかのように両教室の争いに最適な道具を用意していた。
「お前たち、それだけやる気があるなら十分だろう。試合で恋愛力の優劣を決めてもらうじゃないか」
より高い恋愛力を持つ者が正義のこの世界では教師の言葉は全く違和感のないものだった。
教師は校庭の一角を指差し大人しく話を聞く生徒たちの視線をそちらに向ける。そこには正方形を縦に三等分した試合コートが用意されていた。
そして、その真ん中には岩を削って作られた一体の人形、ゴーレムが鎮座している。
「試合形式は一般的なハンティング、つまりナンパだ。ターゲットはあのゴーレム、あれを先に2度落としたクラスを勝者とする」
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