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1-02.堕天使業界の闇

 ハゲンティは理不尽にも他のキューピッドから迫害され、仕事を正当に評価されないままクビになった。最近流行りの実力を正当に評価されずに追放される、というやつだ。まさか自分がそんな目に合うとはハゲンティは思いもしなかった。


 いや、これはワイから見切りをつけて出ていったんや。


 そういうわけでハゲンティはこれから堕天使として生きていくことになった。


 そんな彼は堕天使として早速、初めての仕事に取り掛かる。

 さて、堕天使になったからと言って翼が片方ちぎれたり、黒くなったり、口が避けたり、そういった分かりやすいビジュアルの変化があるわけではない。ハゲンティは元のキューピッドのまま純粋無垢な赤ん坊のような見た目を保っている。

 では堕天使というのは何を指すのかと言うと、一般に事務所(天界)を通さず無許可営業を行う天使のことを指すのだ。最近では闇営業、反社とカラオケ大会、涙のコンビ解散でお茶の間を騒がせていたので、おそらく一般にはそちらのダーティーなイメージの方が強いだろう。そのせいで堕天使といえば業界人崩れ、胡散臭い動画配信者、マルチ商法の広告塔みたいに思われがちなのだが、ハゲンティは勿論そんな薄汚い銭ゲバみたいなことはしない。

 何故なら彼には恋のキューピッドとしてのプライドがあるからだ。まっとうに担当する人間を決め、その人間の恋路を応援しつつ最終的に寝取られるように動くという誰にも譲れない崇高な志があるからだ。


「しかし、あんまりモテモテの奴はもう飽きたな。今度はモブをクラスのアイドルとくっつけてからまったり寝取らせるのがええな」


 何せ今のトレンドはスローライフやからな。


 そう、今や猫も杓子もスローライフ。馬のようにぶら下げられた人参を追って走り回る人生は流行りではないのだ。プライベートと仕事の両立。趣味を楽しむ感覚で緩く仕事をこなす。それらの概念は色々な意味で寝取られと共通している。

 ただガムシャラに彼女をクズ男に寝取らせても、それは味気ない、強いて言うなら火の通っていないシチューのようなものだ。じっくりと丹念に余裕を持って、時には揺り籠で読書にふけり忘れてしまってもいい。そうしたスローな時間がグツグツとシチューの具材たちを混然と溶かし複雑なまろやかさを作り出す。そして、それこそが寝取られの醍醐味でもある。彼女との愛情たっぷりの時間が寝取られに際して愛憎の複雑な、言いようのない感情へと昇華するのだ。


 ハゲンティは思わず垂れてきた唾を飲み込むと、緩んだ表情をキッと引き締める。

 これからのスローライフのためにも寝取られる人間は厳しく選んでいかなければいけない。年齢、性別、職業、趣味、性格、年収。ハゲンティのプロとしての経験が今求めている人物像を詳細に描き出す。


 そうやってハゲンティが真剣な目で人間の町を空から物色していると都合よく年若い、ちょうど色恋沙汰がお盛んな年頃の学生たちの集団を見つけた。

 よく見ればその集団はまっすぐ大きな学園へと進んでいく。


「そうか、今日は恋四葉学園の入学式やった」


 ハゲンティは思い出した。

 貴族のクソガキ、もといハゲンティの元担当相手もこの学園への入学を控えていた。その前に恋人を作って同級生にマウントを取ろうとしていたのだった。

 まあその意中の相手は今頃、おっさんと真実の愛をむつみ合っているのだが。


「やっぱ、寝取られに目覚めるならあの年頃が一番やな」


 ハゲンティもそうだった。思春期のお盛んな時期に寝取られに目覚めると人生の楽しみ方が180度違ってくる。

 人は寝取られに目覚めることでより人生の高みに到達できるのだ。

 そうと決まれば話は早い。ハゲンティはあの恋四葉学園で新しく担当する人間を決めるべく翼をはばたかせる。


 ハゲンティの祝福を受けられる幸運な若人はたった一人。注意深く厳選に厳選を重ねなければならない。

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