1-21.ナンパに大切なたった一つのこと
世界観 :直接的な暴力は効果が無く、代わりに恋愛を通して相手を惚れさせ屈服させる。恋愛を左右するのは容姿や血筋といったパラメーターを総合した恋愛力と呼ばれる力。また、恋愛力を消費することで恋愛イベントの誘発や恋愛にかかわる物理現象を起こすこともできる。
登場人物:
ユダ :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。
ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。
キール :ユダの同級生、『殺し屋一族のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。
ナオミ :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。
ボゥ :ユダの同級生、キールに入学早々、目をつけられ性癖を破壊されかけるが寸前でユダに助けられる。自信を喪失しているがそれでもナンパ試合に挑む。
あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。
一方、クラス対抗のナンパ試合は2回戦になりボゥは勇気を振り絞ってナンパしたが、赤髪ギャルに追い詰められてしまう。ユダが呼び寄せた夜烏が赤髪ギャルを襲ったことでボゥにチャンスが舞い込むが一歩遅く、ゴーレムがギャルを助けてしまう。
最早、勝利の目がないと皆が思っていたボゥ。だが教師の言葉は彼らには見えていない勝利への道を匂わせるものだった。
皆が固唾を呑んで見守る中、ボゥはギャルへと向かっていく。いやそうではない。ボゥが向かっているのはゴーレムの元へであった。
「カ”ーク”ワ”ー」
「GIGAGAGA」
ゴーレムはカラスを背にしてギャルを庇っている。その姿は人類の庇護者、まるで母親のような頼もしさを示していた。そんな争いの渦中にボゥは裸のまま飛び込む。
「無茶だ!」
誰もがそう思った。
あれではただの変質者。恐らくゴーレムによって撃退されてしまう。しかし、ボゥの放った一言が状況を逆転させた。
「ママ!」
ゴーレムの腕が止まる。変質者を払いのけようとした拳はあと僅かのところでボゥの目の前で止まったのだ。
固まったゴーレムに裸のボゥは静かに歩み寄り、そしてその胸に飛び込んだ。
「ママ、ありがとう。守ってくれて」
ゴーレムは全くもってボゥのことなど守っていないのだが、しかしボゥの纏う空気がその矛盾を押しやる。
そこにあるのは冷たい岩で出来たゴーレムにまっ裸で抱きつき温もりを伝える美しい光景だけだった。
「そうか! そういうことか!」
意外にもこの試合の本質に先にたどり着いたのはカッパーの生徒だった。
「どうした急に、ナンパ博士」
「ナンパ博士、何か気付いたのか」
周りにいた生徒たちが答えを求めてナンパ博士を質問攻めにする。
しかし、ナンパ博士はそれらの質問には答えず興奮したように独り言を呟くばかりだ。
「そうか、盲点だった。ナンパに必要なのはテクニックと容姿だけじゃなかったんだ」
ナンパ博士の独り言を拾い、周囲にいる生徒はそれぞれ自分の予想を言い合う。
「いや、確かにそれはそうだが、でもフィーリングとかそういうのってどうにか出来るものじゃないだろ?」
「そもそもそういうのはイケメンが言った時に格好がつくものじゃないか」
しかし、彼らの否定の言葉を無視してナンパ博士は続ける。
「そうだ、あのナンパ100人斬り世界最速ホルダーのカーレ・ライスが第21回世界ナンパ選手権夏季大会で優勝したときにも言っていた」
カーレ・ライス、ハンティングの選手として燦然と輝く数々の記録を持つ彼は周囲の惜しむ声に見送られキャリアの全盛期でナンパの世界から去っていった。5人同時のナンパ世界記録を始め、最高齢及び最年少の同時ナンパを成し遂げた時には世界中の新聞が彼を一面で報道した。勿論、それら全てが好意的だったわけではない。ただのクズ、おはDにしてロリコンの変態、早漏すぎて長続きしない、等々。彼は称賛と同時に罵倒する言葉にも事欠かなかった。
それ故か、寡黙な彼がインタビューに答えたことは数えるほどしかない。しかし、そんな貴重な彼の発言の中でナンパの極意とも呼ばれている言葉がある。
『ナンパに重要なのは心・技・体です。誰もが聞かれれば、そう答えます。だが何故、心が最初に来るのかを答えられる人間は驚くほど少ない。ナンパで最も重要なのは、心、です。心のこもっていないナンパはただのチャラいだけの下種が盛ったサルのものまねをしているのと変わらないのです』
今、一人の少年でしかなかった生徒が生ける伝説と同じ輝きを放とうとしている。
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