1-18.恋の銃弾
世界観 :直接的な暴力は効果が無く、代わりに恋愛を通して相手を惚れさせ屈服させる。恋愛を左右するのは容姿や血筋といったパラメーターを総合した恋愛力と呼ばれる力。また、恋愛力を消費することで恋愛イベントの誘発や恋愛にかかわる物理現象を起こすこともできる。
登場人物:
ユダ :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。
ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。
キール :ユダの同級生、『殺し屋一族のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。
ナオミ :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。
ボゥ :ユダの同級生、キールに入学早々、目をつけられ性癖を破壊されかけるが寸前でユダに助けられる。自信を喪失しているがそれでもナンパ試合に挑む。
あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。
一方、クラス対抗のナンパ試合は2回戦になりボゥは勇気を振り絞ってナンパをしようとする。しかし途中で赤髪ギャルにズボンをずり降ろされなぶりものにされてしまう。ユダはナオミとのルート進行を恐れて躊躇していたがナオミの注意が逸れたところで恋愛力を使い妨害のきっかけを作る。そして、それを見たキールも面白がり妨害に加わる。
キールの放った恋愛力の弾丸は渦を巻く風とともに突き進む。だがその光はギャルには当たらずその横を通り過ぎていった。
「外した!」
その弾丸を見ることができた一握りの生徒たちはそう思った。だがキールの確信に満ちた顔はその予想を否定する。
「キャッ」
悲鳴は恋銃の余波で生まれた風がギャルのスカートを巻き上げ顕になった部分へのものだ。勿論、ギャルはパンツごときでは動じない。悲鳴を上げたのは免疫のないカッパーの男子生徒たちだった。
パンツごときではギャルは動揺しない。予期せぬ突風が生み出したチャンスは、しかしチャンスにはならなかったと観客の生徒たちは思い込む。しかしキールの狙いは違ったのだ。
キールが狙ったのはあくまでもボゥのサポート。ボゥは自分の恋愛力で勝利をもぎ取らなければ意味がない。だからここからはボゥの選択に全てがかかっている。
カラスは風で露わになった蛍光色のギャルのパンツ、光り物に誘われ降下を始める。
◇
「カ”ク”ワ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
カラスはモンスターの名に相応しい漆黒の巨大な翼を広げギャルを威嚇した。
光り物を寄越せ、と。
だが勿論、人間であるギャルにモンスターの意思表示を汲み取ることは出来ない。ただの恐怖だけが彼女に伝わる。
「ひぅ」
流石のギャルもモンスターが相手ではその恋愛力を十分に発揮することが出来ない。モンスターを相手にすることを生業としている冒険者であれば話は違っていたのだが、滅多にモンスターと遭遇する機会のない都会育ちのギャルには経験が圧倒的に足りなかったのだ。
赤髪のギャルのさっきまで体育会系男子に向けていた圧倒的な余裕は消え去りへたり込む。腰が抜けて立てなくなったのだ。当然、そのM字開脚は蛍光色をカラスに見せつける結果となり相手を余計に興奮させる。
「カ”ク”ワ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
観客のカッパーの生徒たちは一斉に立ち上がった。勿論、逃げるためではない。
「これは、もしかしたら逆転があるんじゃないか?」
「ああ、これはどう見ても恋愛イベント。うまく立ち回る事が出来れば勝ち確だ」
恋愛イベントというのはこの世界で日々起こっている恋愛に深く関与する出来事のことだ。多くはハプニングとして発生するがそれらが偶然によるものか必然によるものかは現在でも議論が尽きない。関係者の恋愛力を起因として起こる事例が報告されやすい反面、それらはあくまでも恋愛イベントを成功の形で終わらせることが出来たからこそ世に知られているのであって恋愛力が低い人間が失敗したイベントは世に知られること無くなかったものとされているのではないかと言われている。
真実が解き明かされるまで今しばらくの時間を必要とされる事象ではあるが、間違いなく言えるのは今目の前で起こっているのは間違いなく恋愛イベントでありそれを成功させられるか否かはボゥにかかっているということだ。
観客の生徒たち、特に男子生徒たちが瞬きすらせず試合を見つめる。
田舎育ちのボゥにとってはモンスターとの遭遇は日常とはいかないが決して珍しいものでは無かった。かつて人魔が入り乱れた大戦があった名残が近所の森には深く刻まれていた。そんな森の中にでも行く時はモンスターに対する備えは十分にしなければならないことは子供の頃より大人たちからよく言い聞かされて育ってきた。勿論、対抗策もよく知っている。
ボゥは赤髪のギャルから解放され、唐突に来た反撃のチャンスに一瞬戸惑う。裸の無防備な自分の姿は如何にも心もとない。だが恥ずかしがっていそいそと服を着ているような暇は無い。
そう悩んでいるボゥに対してカッパーの生徒たちが声援を送る。
「ボゥ、今だ。わからせてやれ」
「「「わからせろ! わからせろ!」」」
クラスメイトたちの期待が大音声となり響き渡る。今や試合会場はギャルわからせを望む熱意で一つになろうとしている。
ボゥはそんな周囲の言葉に押され裸のまま足を一歩前に踏み出した。
だが、本当にそれでいいのだろうか? それが果たして正解なのだろうか?
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