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1-16.ナンパに命を賭ける

登場人物:

 ユダ   :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。

 ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。

 キール  :ユダの同級生、『殺し屋一族(ファミリー)のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。

 ナオミ  :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。

 ボゥ   :ユダの同級生、キールに入学早々、目をつけられ性癖を破壊されかけるが寸前でユダに助けられる。自信を喪失しているがそれでもナンパ試合に挑む。


あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。

 一方、クラス対抗のナンパ試合は2回戦になりボゥは勇気を振り絞ってナンパをしようとする。しかし途中で赤髪ギャルにズボンをずり降ろされなぶりものにされてしまう。それを見てユダは何とかしたいがナオミとのルート進行を恐れて躊躇してしまう。

 ボゥはこの恋四葉学園の門をくぐったとき、まだ自分に待ち受ける運命も知らず、まさに人生の絶頂にいた。何故なら彼の過ごした田舎では王都のしかもその恋愛偏差値の頂点に位置する恋四葉学園に入学できた者はボゥが初めてだったからだ。

 そんなボゥの絶頂期は文字通り絶頂を終えると急速に坂道を転がり落ちていった。希望と自信を胸に明るい未来を掴むはずの学舎は、しかし優しさなど微塵も無かったのだ。そこでは獣を閉じ込めた檻のごとく強者と弱者が明確に分けられていた。その中でボゥは弱者にすらなれず、ただの餌に成り下がる。


「ちょっとー、早く脱ぎなさいよぉ」


 ボゥが入学したばかりのまだ根拠の無い自信を持っていた頃であればここまで悲惨なことにはならなかったであろう。

 だがボゥはキールに完全に心を折られ自信を失くしていた。そんなフチャチン野郎にギャルの要求を拒めるはずがない。ギャルの前で子羊のように震え一枚、また一枚と身に着けていた衣服を脱ぎ始めた。


 カッパーの生徒たちから悲鳴が上がる。それはボゥへの同情が半分、そして彼が毛糸のパンツを脱いだことで顕になった物に対する反応が半分だった。


「先生! これはやり過ぎだ! ドクターストップを!」


 見ていられなくなったカッパーの同級生が教師に試合終了を懇願する。もうボゥの負けでいい、これ以上は彼の人生に関わる傷を残す、と。

 だが、それに応じる教師の言葉は冷淡だった。


「まだそんなことを言ってるのか、お前たちは。この程度のギャルとの絡みを楽しめないようでは一流の恋愛エリートにはなれないぞ」


 教師の言葉は冷たく、そして真理を突いていた。恋愛エリートへの壁の厚さは生徒たちの想像を遥かに越えていたのだ。

 自分たちが目指すものの巨大さに少なくない生徒たちの心が折れかけていた。

 そんな彼ら生徒たちが絶望の闇から逃れるために用いた手段はひどく簡単なものだった。彼らは心に暗い逃げ道作り出したのだ。クラスメイトを助けられない自分たちは悪くない、そうだ、そもそも勝ち目がないのだからボゥはさっさとギブアップすればいいのだ。せめて無気力な態度を取ればそれで失格になりこの地獄は終わるのだ、と。


「ボゥ、もうやめてくれ。勝てっこなかったんだ初めから」「いいからもう誰も望んでないから」「見苦しいって、こんなの何の得にもならない」



 だがボゥは立ち続けている。惨めでも戦い続けている。

 そんな彼を負け犬にするわけにはいかない。



 皆の視線がボゥへと集まっている。勿論、その中にはナオミもいる。ナオミの視線がユダから離れた。それは試合開始から初めて出来たチャンスだった。今ならばユダが恋愛力を使ってもナオミとのルートの進行を最低限に抑えられるだろう。

 このチャンスを、勝利への僅かな道筋を生み出したのは間違いなくボゥだった。彼のかっこ悪くとも諦めない心が、本来ならば閉じていた勝利への扉を指の爪の先の分だけ、こじ開けたのだ。

 

 だからこれは、


「ボゥ、君の勝利だ」 


 ユダはメガネを外し、しかし目を眇め恋愛力は抑えながらあるものを見る。ユダが見ているのは試合のコートではない。勿論、ナオミでもなく、この試合会場のどこでもない。

 空だ。

 青く晴れた空を見て、そこにあるべきものを探す。それ(・・)はすぐに見つかった。

 当然だ。それ(・・)はいつも恋愛イベントを起こそうとユダの周りから離れることがないのだから。いつもなら毛嫌いするところだが、今は違う。今はお前を利用してやる。


「来いよ、お前のお望みの物を用意してやる」





 キールは自分の試合が終わると次の試合には興味がなく校庭の芝生に寝転んで空を眺めていた。だからこそ、彼だけはそれ(・・)に気付いた。

 飛び起きたキールの目は興奮で爛々と輝いている。


「なんだよ、おもしれえことしてんじゃねえか」

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