1-15.赤鬼と少年
登場人物:
ユダ :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。
ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。
キール :ユダの同級生、『殺し屋一族のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。
ナオミ :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。
ボゥ :ユダの同級生、キールに入学早々、目をつけられ性癖を破壊されかけるが寸前でユダに助けられる。自信を喪失しているがそれでもナンパ試合に挑む。
あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。
一方、クラス対抗のナンパ試合は2回戦になりボゥは勇気を振り絞ってナンパをしようとする。しかし途中で赤髪ギャルにズボンをずり降ろされてしまう。
試合コートには今、ゴーレムとギャル、そしてズボンをずり降ろされた男の子だけがいた。
真っ赤に髪色を染めたギャルは舌なめずりして自分の獲物を視線でいたぶる。彼女にとって男のプライドをバッキバキに折ることは恋愛のステップで言えばまだ入り口でしかない。ここから荒々しく絞り上げ乙女のように悲鳴を上げさせるのだ。
地元では相当な悪として知られていた彼女は同級生の男子のズボンをずり下げ、恐怖で縮み上がったポークビッツをあざ笑い、二度と逆らえない奴隷にする手管を得意としていた。その暴れようから近隣の初等部では『ズボン下げのレッド・オーガ』として知られ、年頃の男子たちは皆揃ってベルトでズボンを守るようになっていたのだ。それでも体育の時間になればゴム紐の運動着という無防備極まりない装備しか与えられず、オーガにとっては格好の収奪対象でしかなかった。
今や、レッド・オーガの目の前には供物となる羊が震えながら食われるときを待っている。これから丹念に羊の毛を刈り取り裸にしていく。その過程を想像し、オーガの目は恍惚に歪む。
「いいかげん、見せなさいよ、ちょっとー」
あまりにも凄惨な光景に試合会場はどよめいた。
「おい、あれ、反則だろ。先生、なんでファール取らないんですか!」
シルバー側のギャルがディフェンスにも関わらずオフェンスのボゥに肉体的接触を行っている。野次とブロックしか許されないディフェンス側の蛮行はその生徒が言う通り明らかなファールだ。カッパーの生徒たちが猛抗議する。
しかし、そんな抗議の声は無視され教師がホイッスルを鳴らすことはない。その様子に一人の生徒がある事実に気がつく。
「いや、違う。そうか! そういうことか!」
「分かるのか? ナンパ博士」
「ああ、これはカバディ・ルールだ!」
カバディ・ルールとは、近年スポーツ化が進むナンパに対して異議を唱える人々により考案された非常に危険性の高いルールだ。競技者が傷つかないよう禁止事項で雁字搦めにされた近年のナンパは安全である反面、緊張感に乏しく競技者の本当の恋愛力を測れないと批判されて来た。その一方でカバディ・ルールでは精神的負傷は当たり前、時には選手が再起不能に陥ることすらある。その代りに、より攻撃的な恋愛力が試されるルールなのだ。
「しかし先生! カバディ・ルールは非常に危険なため未成年のナンパでは禁止されているのではないでしょうか?」
だが生徒が思いつくような稚拙な論理は教師の前では通じない。教師は冷たく切り捨てる。
「お前たちは何だ? この国を背負って立つ恋愛エリートになろうというのにまだそんな甘いことを言っているのか? 国がお前たちにいくら掛けていると思う、それらはお前たちを仲良く卒業させるためではない、他者を蹴落とし一握りにまで厳選された恋愛エリートを育成するために投じられている資産だ。それに報いられない者はさっさと去ることだな」
教師の目が異様な光を放つ。その迫力に意見しようとした生徒はすぐに心が折れた。
生徒たちはこの段になってようやく理解したのだ。この恋四葉学園は彼らが考えているような生易しい学園ではないと言うことを。
どうやらレフリーストップは期待できないようだ。
ユダは歯噛みする。しかし、それは次のナオミ戦を一勝一敗で迎えるせいで無気力試合が許されなくなるからではない。あれだけの勇気を見せたボゥへの報いが悪趣味な悲劇だったことに怒りを覚えているからだ。
「やるのか、今ここで」
ユダは自問しながら右手をメガネにそえる。ここでメガネを外し恋愛力を全力解放すればそこかしこでカップルが誕生し混乱が巻き起こる。そうなれば試合どころではなくなる。だが、勿論ユダも無事では済まないだろう。
その懸念の先に視線を一瞬送る。
「よ、よお。これは、あれだ、試合だから仕方なくだからな。か、勘違いするなよ!」
ナオミが照れ隠しが隠せていない台詞を口にしながらユダを監視している。
これはもうギャルルートに片足だけでなく両足が入っている。これで肉体的接触など起ころうものなら、そのまま足を捕まれルートに引きずり込まれてしまう。
ユダの内心の怒りは恐怖の前に冷えていった。
そして、その間にも試合は進む。転がるように最悪へと。
その光景に試合会場に生徒たちの悲鳴が木霊した。
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