1-14.ナンパでやってはいけない三つのこと
登場人物:
ユダ :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。
ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。
キール :ユダの同級生、『殺し屋一族のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。
ナオミ :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。
ボゥ :ユダの同級生、キールに入学早々、目をつけられ性癖を破壊されかけるが寸前でユダに助けられる。自信を喪失しているがそれでもナンパ試合に挑む。
あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。
一方、クラス対抗のナンパ試合は2回戦になりシルバーの赤髪ギャルが優勢に進める。ボゥは何とか勇気を振り絞りギャルの前に立ちはだかった。
ボゥはギャルがゴーレムを回るベッドがあるアミューズメント施設に連れて行こうとしている前に震える足で立ちはだかった。
今、対戦相手であるボゥがギャルのナンパを妨害することはルール上では確かに許されている。しかし、空気を読めば誰もそんなことは期待していないことが分かるだろう。ゴーレムくんもそうだそうだと言っている。
それでもボゥは立ちはだかった。それが対戦相手としての自分の使命だからだ。どんなに無様なプレイよりも試合を投げ出すことこそが最も恥ずかしいことだと、彼はそう信じているからだ。
むしろ、本心を言えばボゥはこのままギャルがタッチダウンを決めることを心の奥底では望んでいた。そうだ、あんなに試合を前にして緊張していたのだ、このままギャルのオフェンスで1ターンキルされれば自分は何もする必要はない恥をかくこともない、むしろ仕方なかったと誰もが慰めてくれる。だからこのままゴーレムがベッドに連れ込まれるのを見ているだけでボゥは救われるはずだった。それでもボゥはそこに立った。
唇は青ざめ、手は震えている。それでも意外にもはっきりとした声量でボゥは言う。
「や、やめなよ。嫌がってるだろ」
ゴーレムくんの形だけの拒絶を利用したある意味ではファインプレイだったかもしれない。しかし、当然そんなものをギャルが言葉通りに受け取ってやる必要はない。このままギャルが聞こえないふりで通り過ぎれば終わりだ。誰もがそう思った。
だが赤ギャルは、はっきりとボゥに視線を合わせると一言つぶやいた。
「へぇ」
低く喉を鳴らすような一言。女豹が獲物に興味を抱いた時に浮かべる嗜虐的な口元。目は細められ静かにロックオンする。だが、それは一瞬のこと。瞬きの後にはいつものギャルに戻ると間延びしたダウナーな声で言う。
「え~、なんか~ノリ悪いし~、今回はパスね」
ギャルからノリが悪いと言われれば引くしかない。ゴーレムくんはこの時の自分のノリの悪さを一生後悔することになるのだろう。
だが、それは置いておくとして、試合は意外にもふりだしに戻った。赤ギャルがナンパを中断したことでボゥに攻撃権が移ったのだ。
試合会場がどよめく。赤ギャルが何を考えているのか分かる者はここにはいない。当の赤ギャルは腕組してボゥが動くのを待つだけ。それだけ自信があるのだろう。しかし、あのまま勝利する道を捨てた理由が本当にそれだけなのか、彼女が浮かべる獰猛な笑みを前にすれば、そんな風には思えない。
強い罠の匂いがした。それでもボゥは前に出る。その一歩を踏み出さねばナンパは成功しないのだから。
「あ、あの、天気がいいですね。それで、その……」
「GAGAGA」
ゴーレムの反応は硬い。いや、これが岩でできたゴーレムとして当然の硬さでありキールへの柔らかい反応が異常だったのだ。
だが、ゴーレムのつれない反応に焦ったボゥはつい早口になってしまう。
「あ、あの、俺、怪しいものじゃ、ぜんぜん無くって。ちょっと話を聞きたくて、あ、アンケートを取ってて、お茶をしながらでも、その、ナンパとかじゃぜんぜん無くって」
「GIGAGAGAGAGAGA」
ゴーレムの感情の無い顔に警戒心が宿る。ボゥは完全に失敗した。
ナンパにおいて絶対にやってはいけないことが三つある。
一つは強引に腕や肩を掴む行為。これは一発退場のレッドカードだ。
二つ目はナンパ相手を威圧すること。大勢で囲んだり、狭い道で通せんぼしたり。イエローカードの行為であり、三回行うと退場になる。
そして三つ目、これは素人にありがちな失敗でありそれ故に実力不足が露呈する行為、嘘をついてしまうというものだ。意外に思われるかもしれないがナンパの成功率を上げたいのであれば嘘をついてはいけない。素人は自分をよく見せるため、相手の警戒心を解くため、とりあえず嘘をついてしまう。しかし、素人の嘘というのは往々にして簡単に見破られてしまうもので、その心証は最悪になってしまう。ナンパに対する警戒ではなく詐欺に対する警戒心をナンパ相手に持たせてしまうのだ。
ボゥの明らかな嘘は審判から警告されるような類のものではなかったがナンパ相手であるゴーレムからすれば失格級の失態だ。
それに気付いたボゥは顔を更に青くする。そして更にそれを囃し立てるシルバー。
「おいおい、なんだよあの素人の動き。あれならその辺の初等部のガキの方が上手くやるぜ」
「試合で緊張したんだろうね、可哀そうに。まあ、分不相応に恋四葉学園に入ったのが間違いなんだろうけど」
ボゥは棒立ちになり顔を下に向ける。敗北は決定的であり、その原因は自分のエラー。最早、自分のクラスにもチームメイトにも顔向けできない。だから地面に視線を落としたのだ。
しかし、ボゥの本当の地獄はここからだった。ボゥに更に敵側から追い打ちがかかる。
「へぇ、あんたさぁ、結構いいカラダしてんじゃん。ちょっとお尻見せてよ」
ギャルがボゥのズボンをずり下げたのだ。
もし、続きが気になる、面白かった、と思っていただけたら、是非ブックマーク、評価で応援していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!




