1-13.恋愛力つよつよギャル
登場人物:
ユダ :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。
ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。
キール :ユダの同級生、『殺し屋一族のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。
ナオミ :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。
ボゥ :ユダの同級生、キールに入学早々、目をつけられ性癖を破壊されかけるが寸前でユダに助けられる。自信を喪失しているがそれでもナンパ試合に挑む。
あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。
一方、クラス対抗のナンパ試合は2回戦になりシルバーの赤髪ギャルが優勢に進める。それに対してボゥは何もできない。
ボゥの悲壮な覚悟とは裏腹にシルバーの観客の生徒たちからは手酷い野次が飛んでいた。ボゥにとってはそこに立っているだけで精神が削られ、それに耐えるだけで精一杯だった。しかし、残念なことにそんなボゥの戦いはバトルフィールドで進むナンパに何の影響も与えることはなく、ギャルのオフェンスは障害なく侵攻していく。
ゴーレムへと足を踏み出した赤髪ギャルは恋愛力における猛者の風格を漂わせ、軽く肩を回しながらボゥとは真逆の自信に満ちた足取りで歩いていた。ミニスカートが風でたなびき、そこから覗く小麦色の太ももの躍動感を強調する。そして、敢えて緩めた胸元。相手の視線を如何に自分の思い通りに誘導するか、考え抜かれたその服装はギャルがパリピと呼ばれる常に戦場に身を置いている部類の人間であることを周囲に知らしめる。
「あの娘はすぐ遊ぶから。悪い癖は直せって言ったんだけど。まぁ、あーしが勝てば済む話だしぃ」
初戦での敗北など気にした様子は無い。首をコキリと鳴らすとそれを合図にナンパモードに切り替える。ギャルのナンパモードは例えるなら獣が狩りに赴く精神状態に似ている。暗示により自身を飢餓状態にすることで闘争本能を最大限に呼び覚まし、同時に日常生活ではブレーキをかけている冷酷な残虐性を開放する。だが彼女が纏う雰囲気はむしろ柔軟さを増していた。恋愛力をひけらかしナンパ相手を警戒させるのは二流のすることだからだ。
ギャルがゴーレムの元まで来ると流れる動作で抜き手をゴーレムの胸の部分にタッチする。豹が岩場に降り立つ姿を思わせる、優美な動き。だがギャルの本当の攻撃力は次に続くセリフに凝縮されていた。
「えー、すごいじゃん。カチカチー。ねぇねぇ、念写撮っていい? いくよ~、チェキ~」
「GUGO」
ギャル特有の裏ピースを構え、ゴーレムと魔晶石で自撮りする。
ごく自然なボディタッチからのツーショットへの誘導、それはギャルとしての圧倒的なまでの勝負慣れした動きだった。そんな姿を見てカッパーの生徒たちはナンパが始まったばかりであるにもかかわらず、敗北の二文字をまざまざと見せつけられていた。
「くそっ、何だよあれ。あんなのされたら絶対俺に惚れてるって思うじゃん」
「卑怯すぎる。勝てっこない」
「あれがシルバーの実力かよ」
彼らの言葉を証明するようにゴーレムも両手でもじもじしてギャルの言われるがままに念写されている。このまま、ちょっち遊びに行かない、と誘われれば拒みようがないことは誰の目からも明白だった。
カッパーは初戦の勝利でこの試合を制したつもりになっていた自分たちを恥じるとともにシルバーの壁の厚さを思い知ったのだった。
ギャルによる苛烈なオフェンスが進む一方でディフェンスのボゥは何もできない、今まさに連れて行かれそうになっているゴーレムを目の前にしているのにも関わらず、だ。そんなボゥを尻目に余裕のギャルは勝負を終わらせる一撃を入れに行く。
「あーしさー、ちょーたのしーとこ知ってんだよね。ねー、ちょっち遊びにいかない?」
「GUGOGUGO」
誰もが期待していた一言を奇をてらわずに言ってのける。これが出来るからこそギャルは強いのだ。ここからの打ち手がどれだけ読まれていようとも、全て薙ぎ払ってみせる。そんな棋聖の風格すら漂わせギャルは王手をかける。ゴーレムはナンパされるとそのナンパ力に応じて最適な反応を返すよう設定されている。そんなゴーレムにとって、このギャルからの王手は決して逃れることのできない一手、いやむしろ自分から飛び込み玉を差し出しに行くほどの見事な一手だった。完全に童貞ボーイと化したゴーレムにこれから盤上で繰り広げられる詰みまでの手管を期待していた。
だがそれはそれとして、まだ初な角の取れていない若いゴーレムは恥ずかしがり若干の抵抗を見せる。ギャルの手が引く先に期待はあれどまだ恐怖が先に立つ。そんな年頃のゴーレムは未だ大人の階段を登ることに抵抗があるのだ。
だがそれはそれとして、ギャルに手を引かれて拒める者がいるだろうか、いやいない。ゴーレムは形だけの抵抗を続けたままギャルに引きずられていく。
観客となった生徒たちからはため息が漏れる。もう、こうなったら誰にも止められない。きっとゴーレムくんも心の底では望んでいることだから。ゴーレムくんの形ばかりの逃げに対して、ギャルは『ここか? ここがええのんか?』とばかりに嫌らしく駒を進めて攻め立てる。
しかし、そんな試合会場の中で一人だけ動く者がいた。ボゥだ。完全に盤上の外の存在となっていたボゥがギャルの行く手を遮るように立ったのだ。彼はまだ折れた自信を取り戻したわけではない。震え何も言えず、しかしそれでもそこにいた。
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