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1-12.ナンパにかける覚悟

登場人物:

 ユダ   :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。

 ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。

 キール  :ユダの同級生、『殺し屋一族(ファミリー)のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。

 ナオミ  :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。

 ボゥ   :ユダの同級生、キールに入学早々、目をつけられ性癖を破壊されかけるが寸前でユダに助けられる。


あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。

 一方、クラス対抗のナンパ試合が始まり初戦はキールが勝利を収める。

 カッパーとシルバーのナンパ対決。恋愛力の優劣を競い合うこの真剣勝負で最初に勝利を飾ったのは意外にもカッパーだった。クラス編成で恋愛力が劣る生徒がより多く振り分けられるとされるカッパーは、下馬評では引き分けに持ち込めれば御の字、とそれぐらいの実力差があったのだ。勿論それはキールの出自を知らない生徒たちが勝手に見誤ったことだが、そういった雰囲気を跳ね返しての勝利にカッパー側では熱狂の渦が湧いていた。


「すげー、すげーよ。さすが、キール・バラモン。圧勝だ」

「これ行けるよ。このまま2勝すればこっちの勝ちだ」


 喜びは楽観となりまだ見ぬ輝かしい未来を確定事項のように語らせる。しかし、それは次の試合に立つ選手へのプレッシャーになることをカッパーの生徒たちは気づいていなかった。


 まるで華やかな太陽に照らされたかのように沸き立つ観客席とは裏腹に、次の試合を待つカッパー側の陣地では暗く淀んだ空気が流れている。


「おえっ、どうしよう、次、俺だ」


 ボゥは今朝よりも顔を青くして試合相手を盗み見る。既にバトルフィールドで試合開始を待っているのは赤髪を燃えるようにかきあげるギャル。恋愛力の格の違いを見せつけるように堂々とした姿だ。


「大丈夫、ボゥ? なんだったら僕が代わりに……」

「いや……、俺、行くよ」


 明らかに無理をしている表情でボゥは言う。しかし、そんな彼の重い足取りはゆっくりとだが前へと進んでいく。ユダからは頼りない丸まった背中しか見えない。それでもボゥが歯を食いしばり自身の恐怖に抗っている様子が伝わり、不意にユダは尊敬の念を抱いた。

 ユダが3番手の大将戦を選んだのはひとえにナオミとの接触を避ける逃げの思考からだった。間違いなくユダが出ればナオミが相手として出てくる。これはルート進行の度合いから言って避けることはできなかった。ならば、なるべく早く試合を終えられるように大将戦が最も都合が良かったのだ。ユダの大将戦の前に2勝、もしくは2敗していれば消化試合でしかなくなる。敢えてそこで早々にやる気なしと見られて失格になればナオミとの肉体的接触のリスクを冒さずに済む。

 そんな打算がユダにはあった。だからこそボゥの自分の役割を逃げずに全うしようとする姿に後ろめたさと、ある種の憧憬を覚えたのだ。

 あんな風に必死に自分も恋愛の勝負にひたむきに向かい合えたのなら、そんなユダには実現できない憧れがその視線にはあった。




「中堅戦、開始」


 ナンパのルールでは前の試合で負けた側が先攻になることが決められている。そのため、コイントスは行われずシルバーのギャルが先にナンパを始める。

 赤く髪を染めたギャルが余裕の表情でバトルフィールドに立つ。既に一敗して追い詰められている状況で緊張した様子は微塵もない。

 対照的にボゥの方はディフェンスでありながらも緊張で震えていた。自分がオフェンスになった時、どの様に声をかければいいか、そんなことで頭が一杯なのだ。

 本来ならその大きな体でブロックに行くべきボゥがフィールドの端で固まっているのを見てシルバー側からは嘲笑が湧く。


「何だよアイツ、完全にビビってやがる」

「まあ、ギャルが相手だと体育会系は属性的に不利ですからね。それにしても、もう少しマシな動きをするものですが」

「おいおい、カッパーにそんな高等な技術を求めるのは酷ってもんだよ」


 ナンパにおいてディフェンス側への野次というのは珍しいが特段ルールで禁じられているわけではない。そのため、教師がシルバーの生徒たちに注意をしないのは当然ではあるが、どちらかといえば無関心というのが理由なのではないかと疑いたくなる。それほどまでにシルバーの生徒たちの言葉は辛辣にも関わらず教師は静止しようとしない。生真面目そうなシルバーの担任もそれは同じだった。そこにどのような意図があるのか生徒たちはまだ気付かない。

 本来なら応援すべきカッパーの生徒たちも諦めたように何も言わない。


 ボゥはその尊い覚悟とは裏腹に、周りからは蔑みで見られていた。彼らの視線をひっくり返すことができるか否か、それはここからの試合にかかっている。

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