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1-10.ナンパには常に魔物が潜んでいる

登場人物:

 ユダ   :主人公1、地味でモブ顔の少年だが恋愛力は53万。この恋愛力のせいで勝手に恋愛イベントが起こり逃げて来た。

 ハゲンティ:主人公2、NTRが好きな元恋のキューピッド。今は堕天してユダの担当に名乗り出ている。勝手に起こった恋愛イベントを丸く収めるため寝取られるよう動く。

 キール  :ユダの同級生、『殺し屋一族(ファミリー)のバラモン』の生意気少年であり他のクラスメイトとは隔絶した恋愛テクを持つ。恋愛テクで相手を破壊することに躊躇が無い。

 ナオミ  :ギャル、入学式でユダをバカにしていたが実は意識している。仲間のギャルにからかわれユダたちのナンパ試合に出てきてしまう。


あらすじ:ユダはギャルとの恋愛フラグを折るためにハゲンティに協力してもらい寝取られることを望む。それまで何とかしてルート進行しないようギャルから逃げなくてはいけない。

 一方、クラス対抗のナンパ試合が始まり初戦はキールとオレンジ髪のギャルが火花を散らす。

 試合開始前から火花を散らす、キールとオレンジ髪のギャル。そんな2人を無視して教師はコインを弾く。


「裏っしょ」「表だ」


 互いの答えが出揃ったところで教師が隠していた左手の甲を明かす。そこに見えたのはコインの数字面。


「やったぁ」「ちっ」


 ギャルが喜び跳ねる姿にキールの背中しか見えないユダにも結果は分かった。


「それじゃ、あーしは……、後攻でいいっしょ」


 しかし、意外なことに選択権を得たギャルはナンパでは不利とされる後攻を選択した。オレンジ髪を揺らしながら肩幅に足を広げて立ち腕組みする姿は自信に満ちたギャルのそれ。一見すると相手にアドバンテージを与える余裕とも油断とも取れる姿だが。


「いや、そうとは限らないぞ。確かに先攻はうまくはまれば1ターンで勝負を決められるが、それは成功率の低いナンパでは稀にしか起こらない。むしろ相手の攻撃中に情報を得られる後攻のほうが有利だと最近の研究で主張する人間もいる」

「ほんとか?」

「お前、やけに詳しいな、ナンパに」


 カッパーではメガネを押し上げながら解説をする同級生に皆の視線が集まっている。今この瞬間にナンパ博士というあだ名を頂戴した彼はカッパーの生徒ではあるが知識量だけならシルバー並みなのだ。


 ナンパ博士の解説を聞き、試合が少しも有利になっていないことを知ったカッパーのクラスメイトたちは息を呑んで試合の成り行きを見守った。


 観客席での白熱した議論の一方で試合は静かに始まっていた。バトルフィールドに立った先攻のキールが先に仕掛ける。キールの同級生の平均よりも頭一つ低い身長はゴーレムを実際よりも巨大に見せる。身の丈2メートルは確かに目線を上げざるを得ない高さだが、キールが横に立つとそれはまさに巨人の如き威容だった。


「おいおい、あんなの無理だろう」

「身長も体重も違いすぎる、かないっこない」

「あの体格差で押し倒すなんて、不可能だ」


 口々に生徒たちが悲観的なことを言う。そんな外野の評価は無視してキールはリラックスした足運びでゴーレムに近づいた。


「ねぇねぇ、お姉さん。もしかしてこの財布、お姉さんの?」


 キールの第一声に雑音はさらに大きくなる。


「おいおい、無茶だろ。相手はゴーレムだぞ。いくらなんでも年下属性での攻撃が通るわけない」

「いや、あいつにはあれしかないんだよ」


 生徒たちはすぐさまゴーレムに振られるキールの姿が思い浮かんだ。しかし、意外なことにゴーレムはひざを付きキールの差し出す財布を見た後、首を振る。


「えー、お姉さんのじゃないの? じゃあ誰のだろう、きっと落とした人、困ってるよぉ」

「GUGOGOGO」


 キールの涙が溢れそうな悲しげな目元をゴーレムは感情の見えない岩でできた手がそっと撫でる。その姿は完全にキールにほだされていると確信させる動きだった。


「ふむ、なるほど、そういうことか!」

「分かるのか? ナンパ博士」

「ああ、あれはナンパの高等テクの一つ。困っている人を助けるために協力するムーヴだ」


 ナンパにおいて最も難易度が高いのは最初の段階、相手と会話を続けるきっかけを得られるかどうかの段階だ。通常は相手を褒め続けることで相手のガードを下げ一緒にお茶しようよ、に続ける。しかし、これは意外なことにかなり成功率の低い戦法だ。なぜなら急に話しかけてくる知らない人間に対して人は警戒心を高くするからだ。ゴーレムもこの人間の初期反応を真似るように設定されている。

 そのためハンティングの競技ではこの最初の段階で攻守を数回入れ替えターゲットが興味を示す話題を探る攻防が繰り広げられる。

 しかし、キールが使った高等テクはこれらの段階を一瞬にして飛び越してしまえる代物なのだ。ゴーレムは人間を助けるよう作られているため人間には、特に困っている人間には親切にするよう設計されている。そのため、先ほどのキールの困ったアピールはことゴーレムを落とす上では必勝の策と言ってよい。


「それじゃあさ、一緒にお財布落とした人、探してくれる?」

「GUGOGUGO」


 さらに庇護欲をそそる外見を駆使した罠を仕掛ける。ゴーレムはその親切回路のせいで財布を落とした人間などいないと分かっていてもキールの甘い誘いを断ることができない。


「すげぇ、開始10秒で勝っちまった」

「さすがは殺し屋バラモン家」


 カッパーの生徒たちは同じクラスの生徒でありながらもかけ離れた実力を持つキールに戦慄していた。

 しかし、一方のシルバーの生徒たちは余裕の表情。このままキールがゴーレムをお持ち帰りすれば押し倒すまで止まることはない、敗北は決定的になると言うのに、だ。

 その余裕の正体をすぐにカッパーの生徒たちも悟った。


「ちょっとー、そんな奴よりお姉ちゃんといーことしよーよー」


 ショタ属性に絶対的な特攻を持つ、肉食系お姉さん属性をオレンジ髪のギャルは持っていたのだ。

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