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5 魔法と雑談と

「あー、そこからか」

「……あの、本気で言っているので?」


 二人からものすごく微妙な反応が帰ってきた。

 やっぱり常識的なレベルの話だったみたい。

 知ってたけど。


「もう一度お聞きしますが、本当に、魔力の操作の仕方がわからないので?」

「はい」


 なんか、流石に嘘でしょって感じの雰囲気で言わないでほしい。

 私は何も悪くないのに、恥ずかしくなってくる。


「……はぁ、では解説します。目を瞑ってください」


 言われたとおりに目を瞑る。

 でも、何かがあるとかはわからない。


「では、心臓辺りに意識を向けてください」


 意識を心臓辺りに向けてみる。

 何も感じない。

 何かが違う、なんてことはわからないし、何なら全身同じ。


「そこにある、何かふわふわとしたものは見つかりましたか?」

「……いえ、見つからないです」


 見つからない。

 魔力がどこにあるかなんてわからない。

 もしかしたら私には魔力は無いのかもしれないと思ったけれど、確か神様に魔法適性を教えてもらったわけだし無いわけじゃないと思う。


 だとしたら、見つからないのは私自身のセンスのせい?


「……失礼します」

「え?」


 そんなことを考えていると、メイドさんは私の手を握ってきた。

 直後、私の体の中で何かが動く感覚がした。

 それは私が割と慣れ親しんだ感覚。

 蝶になっている時はずっとこの「何か」が動く感覚があったし、日本に居ても時折動く感覚はあった。


「これが魔力……?」

「見つかりましたか?」

「はい」


 そしてこれが魔力だというのなら、扱うことは可能だ。

 なにせ、10年近く感じ続けてきた感覚なんだから。

 さっきまでは魔力と「何か」がイコールで結びつかなかっただけ。

 結びついた今ならば、操ることは容易だった。


「それでは、それを動かすことはできますか?」

「できます」


 そして、魔力を別の物体に流す方法もこうなれば分かる。

 流したい物体と近い位置に魔力を集め、そこから流すのだ。


 試しに、身分証明証に魔力を流してみるが、問題なく流すことができた。


「流せました。教えてくれてありがとうございます」


 メイドさんにはお礼を言う。

 魔力を動かして貰わなければ、私はずっと魔力がなんなのか分からなかっただろうから。


「いえ、当たり前のことをお教えしただけですので」


 まぁ、常識的な事みたいだしね。

 

 メイドさんはそれだけ言って、


「では、最後に更新条件について説明します」


 すぐに身分証明証の更新条件の説明を始めた。


「身分証明証の更新条件は、経歴や身分などを証明する『バッジ』を持っている時です。バッジは偉業を成したときに国王様や貴族様から貰えたり、学院を卒業した際に証明として貰えます」


 なるほど。

 バッジはそれ用の魔道具ってことなのかな?


「また、加護を持つ道具を所持していた場合にも更新可能です」


 加護?

 それって……。


「これのことですか?」

「はい? ……そうですね、それも含まれます」


 やっぱりそうだった。

 今見せたのは神様からもらった金のバングルだ。

 神様も加護を与えたとか言ってたし、そういう事なんだろう。


「ではそれでやってみましょうか。そのバングルを身分証明証に近づけてください」

「わかりました」


 言われた通りにバングルに身分証明証を近づける。

 多分魔力を流すんだろうけど、一応次の指示を待つ。


「そして、バングルと身分証明証の両方に魔力を流してください」

「はい」


 なるほど。

 両方に流すのか。

 魔力を流してみれば、身分証明証が一瞬青く光る。


「それで終了です。身分証明証を確認して貰えば、裏面に加護の内容が書かれているでしょう」


 身分証明証を裏返して見れば、確かに『始まりの女神・イルファの加護』と書かれている。

 こうやってやるのか。

 割と簡単にできるんだなと思った。


「やり方としては、バッジの場合も変わりはありませんので、覚えておいてください」

「わかりました」


 その後、注意事項を聞いた。


・紛失した場合罰金と再発行金として20ゴールドを支払う

・他人の取得したバッジなどを使用しても更新は不可

・犯罪履歴も残る


 などなど。

 紛失した場合20ゴールドを支払うというのは、聞いた時は意外と安いと思った。

 でも実際聞いてみて、日本円と同じ単位で考えれば2億円相当だとわかって、とても驚いた。

 いやそんな言葉じゃ表わせないくらい驚いたけどさ。


 ちなみにここでお金の単位を説明しておくと、


メタル=約1〜1000円

ブロンズ=約1000〜10万円

シルバー=約10万〜1000万

ゴールド=約1000万〜10億円

プラチナ=約10億〜


 らしい。

 まぁ単位を同じで考えればそうなるっていうだけで、同じ価値があるわけじゃないけどね。


 そういうわけで、その辺りの解説が一通り終わった。

 なのでメイドさんは「自分の仕事があるので」と、奥に戻っていった。


「じゃ、今日の予定は終わったけど……なにかしたいことはあるかい?」


 そう言われても、悩む。

 この世界のことなんて知らないし、勿論ここのことも知らない。

 欲を言うならこの世界特有のものを食べたいとも思うけれど、それはリューツさんのお金を使うと言うこと。

 流石にそれは申し訳ないと思うし……。


「無いのかい? なら、食べ歩きでもするかい?」


 だから、リューツさんがそう言ってくれたのは意外だった。


「いいんですか? その……お金とか」

「問題ないよ。食べ歩きくらいそう痛い出費でもないし」


 そう言われて、それなら……という感じで私はリューツさんと一緒に食べ歩きをすることになった。


***


 食べ歩き、と言ってもこの世界には串焼きみたいな手軽に食べられるものはない。

 だからこその工夫もされているみたいで、水筒のようなものを使われていた。

 なので、食べ歩きというよりは飲み歩きのほうが近いのか。

 

「にしても、よく食べるねぇ」

「全部美味しいんです」


 味付けは、それぞれの出店ごとに違う。

 具材や隠し味も全部違う。

 店によっては魚とかの、別の地方や国から輸送してきたものを使っているところもある。


 この世界特有の食文化は、私にとってはとても新鮮なもので、良いものだった。


「にしてもステータス無しかぁ……。こりゃアイリは苦労しそうだ」

「やっぱりそうなんですか?」


 5件目で買った、魚メインの汁を飲んでいる最中、リューツさんが口から零した言葉に私は反応した。

 ステータスがないというのは、この世界で生きていくことに対してかなり不利だということは知っている。

 けど、具体的にどれくらい不利なのか、ということは知らないのだ。


「そうだね。ステータスはこの世界の中核を担っていると言っても過言じゃない。それを持ってないんだ。戦闘力を抜きにしても、下に見られることは多いだろうね」


 ああ、そっか。

 ステータスはこの世界の大きな基準。

 それを持っていないと前提条件が崩れてくるんだ。


「それに、スキルがないってのも痛いな。スキルによって誰が何をできるかってのを判断してる奴らも多い。実際スキルさえあれば大体のことはできるからね」


 逆に言えば、スキルがないとそれができないって思う人もいるってことか。

 確かに不便そうだ。

 でも……。


「スキルってなんか効果があるんですか?」

「スキルは基本的にその動作に対する補助や基礎の増強だね。剣術なら剣の扱いに補助がかかるし、魔法系スキルなら適正がなくても使えるようになる」


 そんな効果があるんだ……。

 たしかにそれは、スキルで判断する人が居てもおかしくはない。


 リューツさんは話していて乾いた喉を潤すために、汁を飲み干す。

 私も確かに喉は乾いていたので、少し遅れて汁を飲んだ。


 4件ほど食べ歩きした後、この街の中央広場で少し休憩した。

 体力は問題ないけど、食事後だからね。

 休憩途中、私は気になったことをリューツさんに聞いてみた。


「そう言えばこの都市とか、この国の名前ってなんていうんですか?」


 私はこの都市の名前も、この国の名前も知らない。

 いずれ知ることになるだろうけど、さっきの魔力操作のことみたいになるかもしれないし。


「この都市と国の名前? この都市はジンシアで、国はヅイダだよ」


 ……なんか名前がすごい変だなぁって思うけど、この世界では普通なんだろうなぁ。

 ついでにほかの国とかそういう名前も聞いてみることにした。


「他の国とかはどんな名前なんですか?」


 その問いに、リューツさんは


「うーん、じゃあこの大陸の地理と歴史でも軽く話そうか」


 と、にこやかに笑って話してくれた。

名前には全部、しっかりと由来があります。

でもそのまま調べても出てこないです。

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