表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

4 神様と領主館と

 これから行く場所は教会。

 領主館じゃなくて、教会。

 教会は身分証明証がなくても使用はできるから、らしい。

 リューツさん、昨日と言ってること違うけど……。

 ついでに言えば、身分証明証があったとしてもスキルやステータスが不明なのはかなり怪しまれるからだそうだ。


「流石にステータスははっきりしておかないと色々と支障が出そうだからね」


 とは、リューツさんの話。

 要は、ステータスを身分証明証をもらう前にはっきりさせておけば、ステータスを身分証明証に載せることができるからだそうだ。

 リューツさん、そういうことは忘れちゃいけないことだと思う。


「あっはは、すまないね」

「まぁ私はリューツさんに助けられてばっかりなので何も言えませんけど……」


 まぁ、そういうわけで私達は領主館より先に教会に向かうことになった。


***


「ようこそ、アイリさんですね。イルファ様からお話は伺っております。どうぞこちらへ」


 教会に到着すると同時に、なぜか神官とシスターの人たちに迎えられた。

 訳もわからずされるがままに連れて行かれる。

 多分異世界に来て一番よくわからない状況だと思う。


 教会の奥の部屋で、なんか高級そうな白い服を着た神官さんが居た。

 年齢は20前半くらい、かな?

 でも、なにか違う。

 確かに体はそうなんだけど、空気感というかそういうのが違う気がした。


「ようこそ我らの世界へ。異世界の少女よ」

「……え!?」


 そして、神官さんから発せられた言葉に驚いた。

 まず一つは声。

 完全に女性のものだ。

 そしてもう一つは内容。

 この人、私が異世界の人間だってことを知ってる?

 私はリューツさんにしかそのことは話してないのに。


「私の名はイルファ。この世界に存在する二十四柱の神のうちの一柱です」

「神様? なんで神様が……」


 私はこの世界の神様のことは、ステータスをくれるなんか凄い存在だってことしか知らない。

 そんな神様が、目の前にいる。

 実感はないけど、心の片隅では目の前の人が醸し出す雰囲気から、神様だということを認めていた。


「まずは謝罪を。我々は貴女にステータスを授けることはできません」

「そんな」


 そして神様はそんなことを言った。

 正直ステータスというものがよくわかっていないので取り乱すことはなかったけれど、それでも結構重要なもののはずだから少しだけ焦る。


「この世界のステータスは、世界を根幹に作られています。だからステータスを貴女に授けてしまえば、この世界との繋がりが極端に強くなり、もとの世界に返せなくなるのです」

「もとの世界に? それは……」


 確かにもとの世界に戻れないのは困る。

 少なくとも、母親にはもう一度会いたいと思う。


「じゃ、じゃあ今もとの世界に帰らさせてもらうのは」

「無理ですね。貴女が居た世界から強烈な干渉がされている様で、我々の力では貴女をもとの世界に帰すことはできませんでした」

「そんな……」


 じゃあ、帰る手段はないというの?

 そんな思いが顔に出たのかわからないけれど、神様はそのことについて解説をしてくれた。


「あくまで我々の力では帰せないというだけです。見たところ貴女と貴女の世界はかなり強い繋がりでつながっているようです。ですので、この世界に縛られない何かの力があれば、貴女はもとの世界へ帰ることができるでしょう」


 もとの世界に帰るためには、この世界に縛られない何かの力が必要……。

 それって多分、ステータスを持ってたらだめってことだよね。


 なんかすごい難しそうだけど、もとの世界へ帰るためだと割りきろう。


「ですが、ステータス無しでこの世界を生き抜くことも難しいでしょう。ですので、このバングルを渡します。私、始まりの女神の加護を与えたものです」


 そう言って手渡されたバングル。

 おそらく手首の裏にあたる位置は『X』みたいに交差していて、それ以外はとてもシンプルな構造をしている金のバングルだった。

 気のせいかもしれないが、豪華なんだけど、どこかそうじゃない雰囲気を感じる。


「そのバングルを持っていれば、ステータスがないからと言って人に危害を加えられる事は無いでしょう」

「は、はい。ありがとうございます」


 身分証明証に近いもの、なのかな?

 何にせよ、お礼は言っておく。


「そして、貴女の魔法適性は『接続』。人と会話をしたりするなどのことができますね」


 それは……なんか変な魔法適正だなぁ。


「では、もとの世界に帰ることができることを祈っております」

「はい」


 直後、神様からあの不思議な雰囲気が消えて、神官さんは倒れてしまった。


「大丈夫ですか!?」


 今まで話していた人が倒れ、焦る。

 けれど神官さんは荒い呼吸を繰り返すだけ。


「『神降し』を行った反動です。お気になさらず」


 後ろから声が聞こえてきた。

 振り向いてみれば、先程私をここにつれてきたシスターさんの一人だった。


「神降しは、格の高い存在を格の低い人間に降ろす技術。ただでさえ最高レベルの格を持つ原初の神々を降ろしたのです。反動は図りしれません」


 反動……。

 先程まで神様を降ろしていた神官さんは、今も辛そうな表情をしている。


「大丈夫なんですか?」

「ええ。神降しは負担こそ大きいものの、死に至ることはありませんので」


 なら、大丈夫……なのかな?

 でも私にできることはないし……。


「私が彼の手当をしますので、ご安心を」


 それなら大丈夫かな。

 私は神官さんをシスターさんに任せて、部屋を出た。


***


 部屋を出た後、リューツさんと領主館に行く。

 領主館はやっぱりとてつもなく大きくて、二回目だけど圧倒される。

 移動中は前回とは違う道を通ってるので見慣れないものもあったりして、回りを見ていたらすぐについてしまった。


「随分と色々見てたね」

「はい。いろんなものを見れて結構楽しかったです」

「そりゃ良かった」


 リューツさんは私がいろんなものを見ていたことに気づいて、話しかけてこなかったみたい。


「そう言えばステータスのこと、なにかわかったかい?」

「あ、はい」


 リューツさんがどこまで信じているかはわからないけど、ステータスが無いのは異世界から来たから。

 だから、異世界から来た関係でステータスがないこと、もとの世界に帰るためにはステータスをもらうわけには行かないことを話した。

 それ以上のことは話してないけど。


「……それ、本当のことだったのかい?」

「あ、やっぱり信じてなかったんですね」


 やっぱり、案の定というべきか、異世界の話は信じてもらえていなかったみたい。

 そんな感じで話しているうちに、庭を抜けて領主感の内側へ入っていく。


 領主館の内部は、前回はしっかりと見ていなかったけれど、入り口から見ていくとやっぱりかなりの装飾がされている。

 思い返せば庭もかなり凝られていたっけ。


 天井には当然のようにシャンデリアが吊り下げられている。

 明かりは炎なんだけど、どうやら蝋燭(ろうそく)は使われていないみたい。

 ガスバーナーみたいに、炎が金色のパイプから直接出ているような形だ。


 階段も豪華に金色で彩られている。

 この部屋だけでも相当な金の量を使っているんだろう。

 この宮殿全部で考えると金を一体どれくらい使っているんだろうか。

 全く想像がつかなかった。


「毎回思うけど、ほんとどんだけ金かけて作ったんだかここ」


 リューツさんもそう思っているらしい。

 苦笑いしながら言った。


「申し訳ありません、遅れました」


 と、宮殿の奥側から一人のメイドが小走りで来た。

 小走り、と言ってもまぁまぁの速度はでている。

 あくまで服装が乱れない程度の走りというだけ。


「アタシらも着いたばかりだからね、気にしなくていいよ」

「……申し訳ありません。では、アイリ様。こちらが身分証明証でございます」


 身分証明証を渡される。

 昨日渡された仮身分証明証は、ただの木でできたものだった。

 けど今日のは、日本で使われているカードと同じようなもの。

 プラスチックみたいな質感を持つカードだった。

 現代では写真がありそうな場所にはステータス欄があるみたい。

 まぁ、私のはステータスがないから何も書かれていない。


「アイリ様のものは特注ですので、魔力を流すことで更新が自動でされる魔道具となっております。経歴も一定条件を満たせば更新することが可能です」

「特注品なんですか?」


 特注、という言葉を聞いて驚く。

 私は何も知らないから、多分リューツさんがなにかしたんだと思うけど……。


「アタシが頼んでおいた。その方がアイリにとって良いだろうしね」


 やっぱりリューツさんだった。

 リューツさん凄いな。

 というか一体どれだけの影響力を持っているんだろうか。


 そして明らかに不審者みたいな私にここまで良くしてくれるとか……。

 聖人かな?


 と、とりあえず。

 それより前に、一つ聞いておかなければならないことがある。

 それがこの世界で常識的なことだとしても、勇気を出して聞くことにした。


 軽く深呼吸をして、私は言った。


「魔力を流すって、どうやってやるんですか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ