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25. 闇との戦い ~私の決意~

ブックマークや評価、ありがとうございます。

ブックマークや評価をしていない方々も、読んでいただけるだけで感謝感激です!

さらに誤字報告もありがとうございます!

 

 マリージェイも、ヘンリックと同じでこのゲームをプレイしたことがある人なのだ。


 ヘンリックとマリージェイはこのゲームをプレイしたことがあるから、当然のようにゲームの登場人物として展開通りに生きた。なのに、私と言う存在がゲームの展開をめちゃくちゃにしてしまったのだ。


 やっぱり、私は余計なことをしてしまっただけなのだろうか。


 もし、私がこのゲームの物語を知っていたら、どうしただろうか。



 レティシアは悪役だ。


 マリージェイをいじめて、ミハイルと一緒に闇の者を手引する。


 はたしてその通りにしただろうか。


 いや、しないだろうな。

 例え物語を知っていても、結末が国外追放や処刑しかないのに、わざわざ悪事に手を染めたりしない。


 そうだ。例えこの物語を知っていようが知らなかろうが、私の行動は変わらなかったと思う。


 二人が思っていた通りの展開にならなかったことは申し訳ないと思うが、どのみち私は物語の展開を崩していたはずだ。だったら、やることはいままでと同じで、この世界を後悔しないように精一杯生きよう。



 私は大きく深呼吸をして、マリージェイを見た。貴族の令嬢は人前でこんなに大きな深呼吸をしたりしない。マリージェイは私の行動にびくっと反応して身構えている。


 マリージェイは私の存在にご立腹のようだが、こんな状況なってしまったのだから、既プレイ者の知恵も借りつつ、一緒に切り抜けたい。


「マリージェイ様・・・ううん、マリージェイ。あなたも日本人なのね。」


 マリージェイは目を見開いて、口を開けたまま固まっている。


「私もなの。それとヘンリックも。ヘンリックはこのゲームをプレイしたことがあるけど、私はやったことがないの。今の状況って闇の者・・・ゲラン伯爵のせいなのよね?」


 私は言葉遣いを元に戻して話した。その方がすぐに信じてもらえるし、信用してもらえそうだと思ったからだ。


 しかし、マリージェイはキリッと目の色を変えて私を睨みつけた。


「やっぱり、あなたのせいだったのね。第1王子もそうだとは思わなかったけど、それを聞いて納得。第1王子はゲームをプレイしたことがあると言っていたけど、ゲラン伯爵のことは何も言っていなかったの?その人、本当に全ルートプレイしてるの?」


 マリージェイは腰に手を当てて、話している。

 マリージェイの顔でこの話し方と話す態度にイメージは総崩れだけど、素で話してくれていることがわかるので、逆に話しやすい。


「ヘンリックは全ルートプレイしていると言っていたけど、ゲラン伯爵のことはあまり・・・」


 マリージェイはあきれてものが言えないというように息を吐いて、物語の真相を説明してくれた。言葉遣いは少し悪いが、意外と優しい。


 話をまとめると、もともと闇の者という道具を持っていたのがゲラン伯爵。その道具の使い方を知っていたのがミハイル。そして、レティシアだけがゲラン伯爵が道具を持っていること、ミハイルが道具の使い方を知っているということを知っていた。


 ゲラン伯爵はミハイルが道具の使い方を知っていることは知らなかったし、ミハイルはゲラン伯爵がまさかその道具を持っているなんて知る由もなかった。


 つまり、二人をつなぎ合わせたのはレティシア。


 そして、ゲラン伯爵はシャンデール公爵家を憎んでいたから、レティシアが罪を犯せばシャンデール公爵家にとって大きな痛手になると考え、レティシアの要望通り、すんなりレティシアに道具を渡した。養女のマリージェイの身の安全なんてこれっぽっちも考えていない。

 ミハイルはマリージェイが闇に包まれれば独占できると思い、こちらもすんなりとレティシアに道具の使い方を教えた。


 そして、レティシアが闇の者を解放!

 マリージェイは闇に飲み込まれそうになるという展開らしい。


「まぁ、アップデートで補足された話だから、第1王子はそれを知らなかったんじゃない?最初に1回プレイしただけだと、ミハイルとレティシアだけの悪事のように見えるから。」


 マリージェイは説明を終えると、大きくため息をついた。


 アップデートで補足? そんなこと初耳だ。私には予想すらできない。

 ヘンリックはアップデートされる前にこちらの世界に来てしまったのかもしれない。



「とにかく!あなたが闇の者を手に入れようとしないから、ゲラン伯爵もミハイルもなかなか行動できなかったの。このままでは最後のイベントが起こらないかもしれない。だから、私が動くしかなかったの!あのテラスで私は闇に飲み込まれるはずだったのに!あなたがテラスに来たから、ゲラン伯爵はターゲットをあなたに変えちゃったのよ!」


 言われてみるとその通りだ。悪役のレティシアがいないということはそもそも闇の者が現れることはなかったはず。ヘンリックはミハイルだけで闇の者を手引するかもと言っていたが、そもそも私がいなければ、ミハイルは闇の者という道具がどこにあるのかわからなかったはずなのだから。それはゲラン伯爵も同じで、私がいなければ、道具の使い方を知ることはなかったんだ。


 ん? でもそれはつまり・・・


「マリージェイ・・・あなた、自分で自分が闇に飲み込まれる状況を作ったということ?」


「当たり前でしょ?そうしないとゲームの展開通りにならないじゃない! 本当にどうして・・・このゲームをプレイしたことがないあなたがこの世界に転生したのか、理解できない!」


 マリージェイはまた地団駄を踏んで、叫んでいる。


 マリージェイが闇の者を手引した?

 マリージェイがそんなことをする時点で物語は崩れているはずなのに、それでも何とか物語通りの展開になるようにと努力している。


 だけど、それって間違っていると思う。努力の方向性が間違っているよね。


 主人公がピンチにならないゲームや映画はないかもしれない。ピンチになる場面もなくて淡々と平和に終わると周りからの評価は低いかもしれない。


 だけど、それはゲームや映画のお話で合って、現実とは違う。

 この世界が現実かと言われると少し困るけど、今の私にとっては・・・この世界に生きる人たちにとっては現実だ。


 ご都合主義と言われるかもしれないけど、私はみんながハッピーエンドになる映画の方が好きだ。

 みんなでハッピーエンドを目指して何が悪い?


 マリージェイは、ゲームをプレイしていない私がこの世界にいることが理解できないと言った。


 それは私にも理解できない。



 だけど、もしも、私が・・・ゲームをプレイしたことがない私が、このゲームの世界に転生したことに意味があるのだとすれば、それはむしろ、ゲーム通りに展開することを良しとしない何らかの力が働いたのではないだろうか。



 ゲームの展開通りになることを良しとしない人物・・・。


 私はふとひらめいた。



 私にはゲームの展開通りになると必ず不幸になる人物に心当たりがある。


 ゲームの展開だけを聞くと、不幸になるのは自業自得なのだけど、私には彼女が最初から悪役だったとはとても思えないのだ。


 だって、彼女は両親や召使たちみんなから愛されていた。


 だけど、嫉妬や周りからのプレッシャーによって彼女は悪役の道をたどることになってしまった。

 

 彼女も悪役になりたくなかったのだとしたら?


 そう思った途端、私の中に彼女の気持ちがあふれてくるような気がして、私の考えを後押ししてくれる。



 私がこの世界に転生した理由は、レティシアをハッピーエンドにするためだ。



 ただのこじつけだし、正解はないけど・・・。

 レティシアをハッピーエンドにするのなら、やっぱり私はゲーム通りの展開にならないように全力を尽くすべきなのだ。


 

 そう思った途端、気が楽になった。


 自分のことを余計なことをする存在だとネガティブに思っていたのが嘘のように、晴れ晴れとした気持ちだ。


 今の私は全力でこの闇を晴らしたい。そして、ハッピーエンドを目指すのだ。





 まずは、この闇を晴らす方法だ。多分、これはマリージェイに聞けばわかる。


「マリージェイ。ゲームの通りの展開でないことは今はさておき、この状況を解決しましょう。闇を晴らす方法はわかってる?」


 私はマリージェイに聞きながら、ほつれて躓きそうなドレスの裾を破いた。


 この世界では社交界デビューしている女性が足首以上を家族以外に見せるのはマナー違反だが、破いたといっても、ミモレ丈くらいだし、今は緊急時ということで許してもらいたい。


 マリージェイは私がドレスを破くのを見ている・・・のか、ぼうっとしているのかわからないが、反応がない。


 私はもう一度、「マリージェイ?」と声をかけた。

 マリージェイは、ハッと我に戻り、私を睨んでいる。


「魂胆はわかってるんだから。もし、闇を晴らす方法を教えたら、あなたはそれをするでしょ?まだだめよ!それに、あなたが闇をやらしちゃったら、あなたを聖女にするべき。という声が多くなっちゃう。そんなの許さない!私が闇を晴らすの!」


 マリージェイはそう言うと、身を翻して王宮の方に向かって走り出した。ものすごい速さで、私が走っても追いつきそうにない。


 闇を晴らしてくれる気はあるようなので、追いかける必要はないかもしれないが、王宮にはゲラン伯爵がいるかもしれない。一人で敵地に向かわせるわけにはいかないので、走って追いかけた。


 追いかけるといっても、すでに姿は見えないので、王宮に向かって全力疾走だ。ドレスを短くしたので、先ほどより走りやすい。



 すると、すぐ近くでマリージェイの悲鳴が聞こえた。


 悲鳴が聞こえたということは、近くに危険があるということのはずなのに、私は勢いを止めずに走った。



 木の隙間からマリージェイが倒れているのが見えた。

 がたがたに崩れているが、王宮のテラスのすぐ近くだ。


「マリージェイ!」


 私はそのままの勢いでマリージェイに駆け寄った。今思うと、少しは周りの確認をしてから飛び込めばよかったと思ったが、すでに飛び出したあとで、そこにはゲラン伯爵が不敵な笑みを浮かべていた。


「ご無事で何よりです、レティシア様。先ほどは力をコントロールできずに吹き飛ばしてしまい、申し訳ございません。しばしお待ちください。今一度、レティシア様に闇の者をお見せいたします。」


 ゲラン伯爵が目を瞑って集中し始める。

 その隙に殴り込みに行けたらいいのだが、距離がありすぎる。


 マリージェイは「痛~い。」と言って、おしりをさすっているので、大したことはなさそうだ。

 今はマリージェイしか闇を晴らす方法を知らないから、しっかりしてもらわなくては。


「マリージェイ、お願い。闇を晴らし・・・」


 途中まで言いかけたところで、私はゲラン伯爵の黒いもやもやに飲み込まれた。


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