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21. この世界の真実(3)

「えっと、ヘンリック様。そうなると、結局今は何ルートを進んでいるところなのでしょうか?」


 なんとなく予想はできるけど、ちゃんと確認しておいた方がいい。


「今はおそらく第2王子ルートだ。王道ルートともいえる。」


 やっぱり、今は第2王子ルートなのね。


 すでにマリージェイと第2王子は相思相愛のように見えるし、婚約もする予定だ。第2王子が聖女と結婚したいと言ったではないか。


 しかも、私はマリージェイをいじめてもいないからマリージェイが聖女の力を失うこともないし、そもそも私が闇の者を手引することもない。


 このままいけば、何もしなくてもハッピーエンドになるんじゃないかな?


 ヘンリックにその考えを伝えると、ヘンリックは大きく首を振った。

 若干、これだから素人は…という目で見てくるのが腹立たしい。


「レティシアが闇の者を手引きしなくても、ミハイルが手引する可能性がある。それと、マリージェイのことをいじめていないと言うが、レティシアはマリージェイをいじめていた令嬢たちの筆頭だっただけで、ほかの令嬢がマリージェイをいじめている可能性もあるし、マリージェイが聖女の力を失う原因はいじめというよりも、聖女であることに対するプレッシャーによるものだ。いじめがなくても聖女の力を失う・・・すでに失っている可能性もある。」


 そうか、すでに聖女の力を失っている可能性もあるのか。


 私は聖女試験以来、マリージェイと会っていない。今、マリージェイが何を思って、どのように過ごしているかわからない。だけど、養父であるゲラン伯爵とシャンデール公爵家との間に立たされて、肩身が狭い思いをしたことは間違いないだろう。

 私がいじめなどしなくても、それがストレスになっている可能性はあり得る。


「それともう一つ肝心なことだが、第2王子の好感度は最後の最後までMAXにならないんだ。」


「え?ですが第2王子殿下がマリージェイ様と結婚したいとおっしゃったのですよね?」


 結婚したいって言ったということはプロポーズしたのと同意よね?つまり、プロポーズしたのに、好感度MAXではないということ?私にはよくわからない。


「実は第2王子とマリージェイは幼い頃に出会っている。第2王子はその少女のことが忘れられないのだが、第2王子はマリージェイが幼い頃に出会った少女だとは気づいていない。そして、マリージェイに再会して、その少女とは気づかないままマリージェイに惹かれている。」


 なるほど。初恋の相手と今の相手を比べてしまっているのか。

 初恋の相手を忘れるために、その面影のあるマリージェイと結婚する決意をしただけ。


「マリージェイが闇に飲み込まれそうになった瞬間にようやくマリージェイは自分の初恋の相手だと知る。そこで初めて好感度MAXになるんだ。」


 あんなに二人は相思相愛のようなのに、信じられない。初恋の相手以外は好感度MAXにはならないって、どんだけ初恋を引きずっているの?面倒くさい王子だ。


 おそらくこの考えをヘンリックに伝えると、またあの腹立たしい気分にさせる目で見てくるに違いないので、何も言わないことにした。

 代わりに、「好感度って大事ですよね。」と相槌を打っておく。


 ヘンリックはそんな私をみて大げさにため息をついた。


「俺が言っている意味が分かっているか?第2王子ルートは闇の者がいないと好感度MAXのハッピーエンドにはならないんだ。」


 なるほど。確かにそうかもしれないけど・・・


「先ほどから思っていたのですが、ハッピーエンドにしなくてはいけないのですか?絶対に?第2王子殿下とマリージェイ様が好感度MAXにならなくても、お二人は結婚できそうですし、それなりに幸せなら闇の者がいなくても・・・というか闇の者なんていないほうがいいのではないでしょうか?」


 ヘンリックは「それはそうだが・・・。」と動揺している。


「ということは、ミハイル様が闇の者を手引することさえ阻止できれば、ハッピーエンドになるのではないでしょうか?」


「しかし、それではゲームの物語が崩れてしまう。」


 ヘンリックは少々焦った様子で言った。


 ヘンリックはこの世界のゲームをプレイしていた。このゲームのことを知り尽くしているのだ。だから、その通りにならないことに違和感を持っている。ゲームの通りにしなくてはと焦ってしまっている。


 だけど、私から言わせてもらえば、何もゲームの通りにすることはないと思う。現に、私と言うキャラクターがここまで物語を崩しまくっているのだ。


 もちろん、私は物語を崩したくて崩しているわけではなくて、この世界の物語なんて知らなかっただけだが。


 だけど、私は聖女になりたくなくて努力をした。


 それと同じことだ。


 みんなのハッピーエンドのためにミハイルが闇の者を手引するのを阻止する努力をしたい。


 そして、マリージェイを守ってあげたい。



「ヘンリック様、私はこの世界で。第2の人生で後悔しないように生きたいと思っています。前の人生はあまりにあっけなく終わってしまいましたから。」


 私の言葉にヘンリックは大きく頷いた。

 前の人生があっけなく終わったのはヘンリックも同じだ。私とヘンリックはそこだけは間違いなく共感しあえる。


「私はこの世界の物語をよくわかっていません。ヘンリック様から見れば、私の存在はとてもイレギュラーな存在なのでしょう。ですが、私から見れば、この世界に生きている全員がイレギュラーな存在なのです。」


 私の言い終えると、しばらく黙り込んでいたヘンリックが急に立ち上がった。

 好き放題言いすぎて気を悪くしちゃったかなと少し心配になる。


 ヘンリックはそのまま何も言わずに、私の前あたりをうろうろし始めた。ヘンリックはうろうろと歩きながら考えをまとめている様子だったので、私は不安に思いながらも何も言わずにヘンリックの答えをじっと待った。



「まず・・・。」


 ヘンリックがうろうろしながら話し始めた。


「まず、俺はゲームの通りに進めるべきだと思っている。そして、ミハイルが手引した闇の者により、マリージェイが闇に飲み込まれて、第2王子がそれを助ける。そこで好感度MAXになって終了。そうしたいと思っている。」


 私は黙ってヘンリックの考えを聞いた。


「レティシアはゲームの通りに進めるべきではないと思っている。ミハイルが闇の者を手引しなければ、マリージェイが闇に飲み込まれることはない。好感度MAXではないが第2王子と結婚もできて終了。」


 ヘンリックはどちらかに有利な言い方をするわけでもなく、話をまとめてくれた。私は「その通りです。」と答えた。ヘンリックはまだうろうろと歩いている。


「俺は・・・。」


 ヘンリックが言葉を濁らせる。私はせかさずに待った。

 ヘンリックはゆっくりと、元居た場所、私の隣に腰をかけた。


「俺は、ゲームの通りに進めることが一番だと思っている。その気持ちは変わらない。だけど、この世界で生きて、ゲームでは描かれていないこともたくさん経験した。」


 それはその通りかもしれない。どんなゲームや映画だろうと、世界に生きている一人一人の時間すべてを表現することは不可能だ。


 ゲームには、私の侍女のアメリや弟のアンソニー、メリアや私のお友達の令嬢達も登場しないらしい。だけど、彼らは今の私という存在を作る上で、重要な登場人物のはずなのだ。


「第1王子ルートではない場合、第1王子とマリージェイのイベントはほとんどないはずなんだが、実際は聖女となったマリージェイと会う機会が意外と多くてな。ゲームではそんな場面はないのに。それに、実は俺がずっとマリージェイを避けていたからなのか、マリージェイも俺に苦手意識があるみたいなんだ。だけど、第1王子とマリージェイの仲が不仲ってことはないはずなんだ。第1王子がマリージェイから逃げたり隠れたりする必要なんてないんだから。」


「そうですね。些細なことでも変化は変化ですものね。今こうしてヘンリック様とお話ししていることも、ゲームでは考えられないことのはずです。」


 ヘンリックも「そうだな。」と頷いた。



しばらくして、ヘンリックは空を見上げながら何か決意をしたような顔を見せた。


「やってみるか。どうせここまで物語が崩れているんだから、後悔しないようにやってみよう。ミハイルが闇の者を手引することを阻止すれば、マリージェイも闇に飲み込まれそうになることはない。好感度MAXじゃないことは不服ではあるが、マリージェイが第2王子と結婚できなくなるわけでもない。よくよく考えるとどうせ第2王子とマリージェイの人生だ。二人で勝手に仲良くなればいいことだ。」


「そうですね。それに、第2王子にマリージェイが初恋の相手だと気づかせれば好感度MAXになるかもしれませんし。」


 私がさらっと言うと、ヘンリックは「その手があったか」と目を見開いていた。

 ゲーム通りにしようと考えすぎていたため、全く思いつかなかったようだ。


 第2王子の初恋相手がマリージェイだということを私たちが知っている理由を隠す必要はあるかもしれないが、それはイベントを見ているヘンリックに任せようと思う。



「ところで、ミハイル様が闇の者を手引するのはいつなのですか?」


 そうと決まれば善は急げだ。行動は早い方がいい。

 そう思ってヘンリックに聞いたが、ヘンリックは一瞬考え込む、「しまった!」と言って、目をそらしている。


「すまない。俺はゲーム通りに進めることが一番だと考えていたんだ。最初からミハイルを止めようと思っていたらもっと早く行動していたんだが・・・。」


 ん?


 もしかして、あまり時間がないのかもしれない。だったら、なおのこと早く行動に移さないと!


「ヘンリック様?ミハイル様が闇の者を手引するのはいつなのですか?」


 私はもう一度ヘンリックに同じ質問をした。


 ヘンリックは黙っていれば怒られないと思っているのかしばらく黙っていたが、私がもう一度ヘンリック様?と声をかけると、ようやく観念して重たい口を開いた。


「マリージェイが闇に飲み込まれる事件が起こるのは、俺とレティシアの婚約お披露目パーティーだ。おそらく1か月後だ。そして、闇の者を手引するのは…1週間後の俺とレティシアの婚約発表の頃だ。いや、もしかしたらもうすでに闇の者を手引している可能性がある。」


 ゲームでは、第1王子とレティシアの婚約発表の頃に、マリージェイは聖女の力を失い始める。さらに、ゲームでは、私とミハイルが「ふふふっ、はははっ」と悪者らしい笑い方をしている描写があるだけなので、実際のところいつだれがどうやって、闇の者を手引したのかはわからないそうだ。


 私は唖然としてしまった。


 それってもうほとんど時間がない。



 ならばと思い、私がミハイルに近づいて闇の者を手引しているか確認する。と提案したが、危険すぎるし、このタイミングで急に接近したら逆に怪しまれるだろうと却下された。


 もし、いまミハイルを捕えても、証拠がなければ罪を問えない。


 警戒されて、私たちの予想できない場所でマリージェイに接触されて、第2王子が助けに行けない場所でマリージェイが闇に飲み込まれることだけは防ぎたいという話にまとまった。


 とりあえずは、ミハイルに監視をつけることになった。


 そして、私とヘンリックは一度はこのまま婚約することにした。


 ゲーム通りにいくとは限らないが、私たちが婚約すれば、ミハイルが闇の者を婚約お披露目パーティーの時にマリージェイに接触させようとするはずだ。そこを防げばいい。


 後手に回っていることは百も承知だが、今できることはこれぐらいだろう。





 1週間後、私とヘンリックの婚約が発表された。


 マリージェイの様子に変化はなく、ミハイルの行動も怪しい点は見られないそうだ。



 そして、1か月後。


 私とヘンリックの婚約お披露目パーティーが開かれることとなった。



やっと、レティシアとヘンリックの話し合いが終わりました。


* * *


この勢いでクライマックスに向かっていきたいのですが、

ここにきて、執筆が間に合わず・・・。

数日お待ちください!!

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